1節(14)
文字数 1,900文字
「そうだね。ウチもライザおばさんから聴かせてもらった以外では、今日まで聴いたこと無いよ。何でも、ものすっっっっっっっっっっっごく昔の歌なんだって」
応えるリコリスに、ディーンが「ふ~ん」と相槌を打つのと同時に、飲み比べをしていたエレンとイルゼ達の方が大きく盛り上がった。
「ぶぼばっ」
イルゼの盛大な吹出 によって……。
「ミ゛ャ!? ばっちぃニャ」
そばで応援(?)していたシュンギクが、思わず身を引いて叫ぶ。
「あぁ、言わんこっちゃニャい」
シラタキも今度はある程度予想ができていたらしく、再び酒浸しになるのを免れながらも、あきれた様子で言うのであった。
テーブルの上に目をやってみれば、並べられたグラスの数を比べて……もとい、比べるまでもないのだが、結果はエレンの圧勝である。
ディーンとリコリスが話していたあの数分間に一体何杯飲んだのか、エレン側には空のグラスがダース単位で山積みされているのに対して、イルゼの方は5、6個と言ったところであった。
エレン本人は、可愛らしく少し大きめのロックグラスになみなみと注がれたラム酒を、するすると飲み干し終えたところであった。
コトンと静かに卓に置かれたグラスの中には、氷のひとかけらも無い。
「嘘……ストレートであれだけの量を空けたっての!?」
リコリスが驚愕の声を出すが、審判役のレオニードの表情からして、どうやら本当の出来事らしい。
ちなみに、エレンの暴飲暴食っぷりをよく知るディーン達一行の反応は一貫して下記の通りである。
『あちゃ~』
「愚かな……」
と、フィオールが言えばミハエルが「しょうがないよ、誰もエレンちゃんみたいな娘 があそこまでやるなんて想像できないし」と一応のフォローを入れている。
当のエレンはと言うと、至ってマイペースである。
「ラム酒って、初めて飲んだんですけれど、甘くて美味しいですね……って、はぅぁっ!? い、イルゼさん、大丈夫ですか」
などと、思いっきりすっとぼけた反応を見せてはいたが、酔いの“よ”の字の断片すら、彼女の表情からは伺えなかった。
一体どんな肝臓であろうか。きっと、稀少鉱石 アミノタイトよりも頑丈であるに違いなかった。
「ぐ……ぐぬう……馬鹿な……」
「馬鹿はアンタニャ。小食のクセして、勝負を挑む相手を間違えまくってるのニャ、致命的に」
信じられぬといった顔で呻くイルゼに、聞こえぬように先と同じような辛辣な言葉を投げつけるシラタキであった。
「ぐ……オレの負けだ。やるじゃないかエレン嬢。だが、俺の仇はきっとリコりんが討ってくれるさ」
当然シラタキの声は聞こえていないイルゼが、唐突にリコリスへとキラーパスの如き無茶振りをかましてきたので、リコリスは「リコりんって……ウチかいっ!?」と素 っ頓狂 な声を上げて驚いた。
「うむ。おっぱいCから1ランクアップできるかもだぞ」
「ウチはもともとDだよっ!」
相変わらずの大嘘ぶっこいているイルゼに……もしかしたら、本気で信じているのかも知れないが……思わず叫び返すリコリスであったが、男性陣の視線が自分の胸部へと集中しているのを感じて、真っ赤になって胸元を覆い隠してしまう。
どちらにしてもハンター用の防具を身につけているので、大きさや形などは伺いようがないのだが……
「うぅ~」
エレンだけは、何故だか悔しそうな目でリコリスを見ながら、次のラム酒をするすると飲み干す。
そんな彼らの様子に、静かに飲んでいたムラマサも、思わず頬を緩ませるのであった。
いつしかその笑みが皆に広まり、酒宴の席は笑い声が満ちてゆく。
だが、馬鹿騒ぎに身を投じていても、彼らはハンターである。
明日の狩りは、恐らく今までにない大変なものとなるであろう事を、誰もがうすうすと感じていた。
だからであろう。
明日の厳しい戦いに挑むためにも、今この楽しい時間を、存分に感じようとするのは、ハンターとして当然のことなのかも知れない。
しかし、この場の誰もが予想すらできなかった。
明日、彼らが赴くセクメーア砂漠が、何をその広大な砂の海原に抱いて彼らを待ち受けているかを……。
それは4本の角……
それは健啖 の悪魔……
それは灼熱 の絶望……
彼らを待ち受ける砂漠の闇は、想像以上に深く、そして暗い……
…To be Continued.
応えるリコリスに、ディーンが「ふ~ん」と相槌を打つのと同時に、飲み比べをしていたエレンとイルゼ達の方が大きく盛り上がった。
「ぶぼばっ」
イルゼの盛大な
「ミ゛ャ!? ばっちぃニャ」
そばで応援(?)していたシュンギクが、思わず身を引いて叫ぶ。
「あぁ、言わんこっちゃニャい」
シラタキも今度はある程度予想ができていたらしく、再び酒浸しになるのを免れながらも、あきれた様子で言うのであった。
テーブルの上に目をやってみれば、並べられたグラスの数を比べて……もとい、比べるまでもないのだが、結果はエレンの圧勝である。
ディーンとリコリスが話していたあの数分間に一体何杯飲んだのか、エレン側には空のグラスがダース単位で山積みされているのに対して、イルゼの方は5、6個と言ったところであった。
エレン本人は、可愛らしく少し大きめのロックグラスになみなみと注がれたラム酒を、するすると飲み干し終えたところであった。
コトンと静かに卓に置かれたグラスの中には、氷のひとかけらも無い。
「嘘……ストレートであれだけの量を空けたっての!?」
リコリスが驚愕の声を出すが、審判役のレオニードの表情からして、どうやら本当の出来事らしい。
ちなみに、エレンの暴飲暴食っぷりをよく知るディーン達一行の反応は一貫して下記の通りである。
『あちゃ~』
「愚かな……」
と、フィオールが言えばミハエルが「しょうがないよ、誰もエレンちゃんみたいな
当のエレンはと言うと、至ってマイペースである。
「ラム酒って、初めて飲んだんですけれど、甘くて美味しいですね……って、はぅぁっ!? い、イルゼさん、大丈夫ですか」
などと、思いっきりすっとぼけた反応を見せてはいたが、酔いの“よ”の字の断片すら、彼女の表情からは伺えなかった。
一体どんな肝臓であろうか。きっと、
「ぐ……ぐぬう……馬鹿な……」
「馬鹿はアンタニャ。小食のクセして、勝負を挑む相手を間違えまくってるのニャ、致命的に」
信じられぬといった顔で呻くイルゼに、聞こえぬように先と同じような辛辣な言葉を投げつけるシラタキであった。
「ぐ……オレの負けだ。やるじゃないかエレン嬢。だが、俺の仇はきっとリコりんが討ってくれるさ」
当然シラタキの声は聞こえていないイルゼが、唐突にリコリスへとキラーパスの如き無茶振りをかましてきたので、リコリスは「リコりんって……ウチかいっ!?」と
「うむ。おっぱいCから1ランクアップできるかもだぞ」
「ウチはもともとDだよっ!」
相変わらずの大嘘ぶっこいているイルゼに……もしかしたら、本気で信じているのかも知れないが……思わず叫び返すリコリスであったが、男性陣の視線が自分の胸部へと集中しているのを感じて、真っ赤になって胸元を覆い隠してしまう。
どちらにしてもハンター用の防具を身につけているので、大きさや形などは伺いようがないのだが……
「うぅ~」
エレンだけは、何故だか悔しそうな目でリコリスを見ながら、次のラム酒をするすると飲み干す。
そんな彼らの様子に、静かに飲んでいたムラマサも、思わず頬を緩ませるのであった。
いつしかその笑みが皆に広まり、酒宴の席は笑い声が満ちてゆく。
だが、馬鹿騒ぎに身を投じていても、彼らはハンターである。
明日の狩りは、恐らく今までにない大変なものとなるであろう事を、誰もがうすうすと感じていた。
だからであろう。
明日の厳しい戦いに挑むためにも、今この楽しい時間を、存分に感じようとするのは、ハンターとして当然のことなのかも知れない。
しかし、この場の誰もが予想すらできなかった。
明日、彼らが赴くセクメーア砂漠が、何をその広大な砂の海原に抱いて彼らを待ち受けているかを……。
それは4本の角……
それは
それは
彼らを待ち受ける砂漠の闇は、想像以上に深く、そして暗い……
…To be Continued.