幽霊医者の依頼(3)
文字数 1,800文字
飛行機は予定通り到着し、僕たちはリムジンバスで稚内港に移動、そこで耀子先輩と合流し、稚内港から14時半発のフェリーに乗船した。
予定では、世分島への到着が16時過ぎになる。そうなると、今晩は一旦宿に泊まって、明朝、お借りしたクルーザーで蓬莱島を目指すことになるだろう。
僕たちは先ず、花深港フェリーターミナルの直ぐ近くにあるホテルにチェックインし、明日の段取りの確認を行うことにした。
クルーザー船は、染ノ助君の知り合いの方が快く貸してくれ、島の北端にある幌泊マリーナに停泊し、出港の準備まで整えてくれているのだそうだ。お蔭で僕たちは、今いる花深港から幌泊マリーナへ車を飛ばして行くだけで良いことになる。
尚、耀子先輩の愛車タイカン4Sは、電気自動車の為に遠距離の移動や離島での行動に制限があり、今回は残念ながらレンタカーでの移動となるのだそうだ。
「では、明朝7時。ロビーに集合と云うことで良いかしら?」
耀子先輩の声に僕も染ノ助君も頷く。
「あれ? 藤沢さんと橿原先生は、別々の部屋なんですか?」
「当たり前じゃないですか……。先生と私はそう言う関係じゃありませんから……」
いや、別に、別々の部屋で構いませんけどね。あれ程、愛人だとか内縁の妻だとか、適当な事を言い触らしていたのに、「そう言う関係じゃない」って……。じゃ僕たち、どう言う関係なんですか?
「知らないわよ! そんなこと……」
だから、勝手に人の心を読むな!!
そう言う訳で、僕たちは各々の部屋で待機し、明日の為に英気を養うこととした。
尚、一つ目鴉はマスコットの様な顔をして耀子先輩の部屋に潜り込んでいる。だが、あいつ、動かないだけなので、剥製には見えても縫いぐるみには見えなかったが……。
僕は早速、浴衣に着替えると温泉大浴場を目指した。不思議探偵の仕事と言うか、フィールド調査と言うか、こうした旅行の楽しみのひとつは、何と言っても温泉だ!
その意見には、染ノ助君も賛同してくれるに違いない。廊下で浴衣に身を包んだ彼と出会い、僕たちは一緒に大浴場へと向かった。
そして、もうひとり……。温泉に目のない人がいる。この人の場合、温泉と聞けば、公衆の面前で裸を曝すことも全く厭わないと言う強者で、これまで、僕がどれ程慌てて彼女をタオルで隠したことやら……。
だから、僕たちが男湯に浸かっている向こう側には、100%間違いなく耀子先輩が女湯の湯船に浸かっている!
ま、声を掛けて、知らない人が入っていたら恥ずかしいから、湯船に浸かって気持ち良くても黙っていようか……。
「先生、それにしても蓬莱島って誰が治めているんでしょうか?」
「何か……、仙人でもいそうな名前ですよね。出来れば、リーダーが、話の分かる相手だと嬉しいんですけどねぇ」
「それは分からないわ。ただ、剣呑な相手であることは間違いなそうだけどね……」
耀子先輩だ。これだけ大声で話してくるのだ、女湯には誰もいないのだろう。これなら話をしても大丈夫だ。
「だからって、こっちに来ちゃ駄目よ!」
って、誰がそっちに行くか! それに耀子先輩の裸なら、態々見なくても目を閉じれば直ぐに浮かんでくるわ!
「あら、先生ったら……」
染ノ助君は、もう少し真面目な話をしたいらしく、大きな咳払いをいれた。
「藤沢さん、少し聞きたいのですが……」
「何かしら?」
「なんか、話では某国のミサイルが原因だとか言われてましたけど、だとすると、島の位置が北過ぎませんか? 私が以前、この近辺でアザラシを見に船に乗せて貰った時、そんな島の話、誰もしてませんでしたよ」
それについて、耀子先輩は意外なことを僕たちに告げた。
「ミサイルを受けた時は、渡島大島の西500キロ付近にあったらしいわよ。随分と北に流されたものね……」
「流された?!」
「そう。蓬莱島は、海流で流される浮遊島なのよ。元々、放浪島と言われていたのを、中国の伝説に因んで蓬莱島と呼ぶようになっただけらしいの……。なんて偉そうに言っても、私もこれ位しか知らないんだけどね」
浮遊島だって?! そんな馬鹿な……。
「もし、目的地が移動するのなら、私はどこに船を進めたら良いんですか? それに、抑々海図にも、そんな島、乗っていないんじやないのですか?」
「海図には乗っていないでしょうね。でも、安心して。島のある方向は、私にはハッキリと分かるわ。吐き気を催す程に……」
予定では、世分島への到着が16時過ぎになる。そうなると、今晩は一旦宿に泊まって、明朝、お借りしたクルーザーで蓬莱島を目指すことになるだろう。
僕たちは先ず、花深港フェリーターミナルの直ぐ近くにあるホテルにチェックインし、明日の段取りの確認を行うことにした。
クルーザー船は、染ノ助君の知り合いの方が快く貸してくれ、島の北端にある幌泊マリーナに停泊し、出港の準備まで整えてくれているのだそうだ。お蔭で僕たちは、今いる花深港から幌泊マリーナへ車を飛ばして行くだけで良いことになる。
尚、耀子先輩の愛車タイカン4Sは、電気自動車の為に遠距離の移動や離島での行動に制限があり、今回は残念ながらレンタカーでの移動となるのだそうだ。
「では、明朝7時。ロビーに集合と云うことで良いかしら?」
耀子先輩の声に僕も染ノ助君も頷く。
「あれ? 藤沢さんと橿原先生は、別々の部屋なんですか?」
「当たり前じゃないですか……。先生と私はそう言う関係じゃありませんから……」
いや、別に、別々の部屋で構いませんけどね。あれ程、愛人だとか内縁の妻だとか、適当な事を言い触らしていたのに、「そう言う関係じゃない」って……。じゃ僕たち、どう言う関係なんですか?
「知らないわよ! そんなこと……」
だから、勝手に人の心を読むな!!
そう言う訳で、僕たちは各々の部屋で待機し、明日の為に英気を養うこととした。
尚、一つ目鴉はマスコットの様な顔をして耀子先輩の部屋に潜り込んでいる。だが、あいつ、動かないだけなので、剥製には見えても縫いぐるみには見えなかったが……。
僕は早速、浴衣に着替えると温泉大浴場を目指した。不思議探偵の仕事と言うか、フィールド調査と言うか、こうした旅行の楽しみのひとつは、何と言っても温泉だ!
その意見には、染ノ助君も賛同してくれるに違いない。廊下で浴衣に身を包んだ彼と出会い、僕たちは一緒に大浴場へと向かった。
そして、もうひとり……。温泉に目のない人がいる。この人の場合、温泉と聞けば、公衆の面前で裸を曝すことも全く厭わないと言う強者で、これまで、僕がどれ程慌てて彼女をタオルで隠したことやら……。
だから、僕たちが男湯に浸かっている向こう側には、100%間違いなく耀子先輩が女湯の湯船に浸かっている!
ま、声を掛けて、知らない人が入っていたら恥ずかしいから、湯船に浸かって気持ち良くても黙っていようか……。
「先生、それにしても蓬莱島って誰が治めているんでしょうか?」
「何か……、仙人でもいそうな名前ですよね。出来れば、リーダーが、話の分かる相手だと嬉しいんですけどねぇ」
「それは分からないわ。ただ、剣呑な相手であることは間違いなそうだけどね……」
耀子先輩だ。これだけ大声で話してくるのだ、女湯には誰もいないのだろう。これなら話をしても大丈夫だ。
「だからって、こっちに来ちゃ駄目よ!」
って、誰がそっちに行くか! それに耀子先輩の裸なら、態々見なくても目を閉じれば直ぐに浮かんでくるわ!
「あら、先生ったら……」
染ノ助君は、もう少し真面目な話をしたいらしく、大きな咳払いをいれた。
「藤沢さん、少し聞きたいのですが……」
「何かしら?」
「なんか、話では某国のミサイルが原因だとか言われてましたけど、だとすると、島の位置が北過ぎませんか? 私が以前、この近辺でアザラシを見に船に乗せて貰った時、そんな島の話、誰もしてませんでしたよ」
それについて、耀子先輩は意外なことを僕たちに告げた。
「ミサイルを受けた時は、渡島大島の西500キロ付近にあったらしいわよ。随分と北に流されたものね……」
「流された?!」
「そう。蓬莱島は、海流で流される浮遊島なのよ。元々、放浪島と言われていたのを、中国の伝説に因んで蓬莱島と呼ぶようになっただけらしいの……。なんて偉そうに言っても、私もこれ位しか知らないんだけどね」
浮遊島だって?! そんな馬鹿な……。
「もし、目的地が移動するのなら、私はどこに船を進めたら良いんですか? それに、抑々海図にも、そんな島、乗っていないんじやないのですか?」
「海図には乗っていないでしょうね。でも、安心して。島のある方向は、私にはハッキリと分かるわ。吐き気を催す程に……」