海域封鎖指令(1)
文字数 1,523文字
僕たちを載せたヤリスは、湖を越え、海岸線に出ようかと云う辺りで道路を封鎖している自衛隊の検問によって止められた……。
耀子先輩が顔を覗かせ、運転席に近づいて来た自衛隊員らしき人物に確認する。
「どうかしたんですか?」
「君たちは、どう云う目的で?」
「観光ですわ」
「だったら済まないが、ここから先、住民以外は立ち入り禁止になっている」
「あら、私たち、ここにお住みの方にお船をお借りして、クルージングに出ようと思っていましたのに……。それでは駄目ですの?」
「港は今、住民も使用禁止なんだ」
「困りましたわ……」
どうやら、例の蓬莱島に島民を近づけさせない為の防衛処置らしい。だが、これでは蓬莱島の仙人を説得するどころか、近づくことも出来ないではないか……。
耀子先輩は困った様な表情で、検問官の顔を見つめている。
「お借りする約束をしていた方に、何も言わず、このまま引き返したら、お貸し下さるって仰有っていた方が、気を悪くされてしまいますわ……。せめて、港まで行かせて貰えませんかしら?」
流石にそれは無理だろう。そんなのが通るのであれば、検問なんて最初から全く意味が無いじゃないか……。
「あ、ああ。いいですよ……。自分もご一緒しましょうか?」
「あら嬉しい。じゃあ、ここから歩いて港まで行きますわ。マリーナまでの案内、宜しくお願いしますわね」
「はい! 喜んで!!」
検問をしていた自衛官は、突然愛想が良くなって笑みすら浮かべている。
よ、耀子先輩……、また何か、良からぬ術を使ったな!!
「さ、皆さん降りてください」
耀子先輩はそう言って、皆を降ろし、先を行く検問官の後に続いた。そして僕に、こう一言付け加えたのだった……。
「幸四郎、後でお仕置きだからね!!」
さて、この道路封鎖について、僕は寧ろ適切な判断だと思っている。
あの様な危険な種子を撒く仙人の島に、一般人を近づける訳には行かないし、万が一、攻撃命令が発せられる様な場合にも、付近に漁船などが居ては邪魔で仕方がない。それなら、今の時点であの海域の封鎖は、今後どう云う作戦を取るにせよ、最善の対応なのではないだろうか?
だが、僕たち不思議探偵に取っては、この封鎖は行動の障害以外の何物でも無い。耀子先輩はどうする心算だろうか……?
検問官に連れられて、僕たちが幌泊マリーナへと着くと、検問官の上官らしき人物が、何事かと近づいてくる。
「おい、何で持ち場を離れた?!」
「この方が、『こちらに来たい』と仰有られるので……」
「何を馬鹿なことを……」
耀子先輩はこの2人に近づいて、上官に言葉を掛ける。
「申し訳ありません。緊急の用件なのです」
「済みませんが、ここは一般人の立ち入りが禁止された区域なんですよ」
「一般人ではありませんわ。私たち特殊任務を承っておりまして、あの蓬莱島に渡らなければなりませんの……。お疑いでしたら、幕僚長でも、首相にでも確認を取って頂けますでしょうか? こちら、橿原幸四郎。私は藤沢耀子と申します……」
耀子先輩、何と云うハッタリをかますのだ! 上官も、余りの事に動揺したのか、慌てて無線トランシーバーで確認連絡を取っている。
そして、暫く後、上官らしき人物が背筋を伸ばし、耀子先輩に敬礼をした。
「失礼しました!! 幕僚長から橿原幸四郎以下三名を蓬莱島にお連れするよう、緊急指示が出ているとのことです!!」
何なんだ? 何が起こった?!
耀子先輩が、その理由を僕に耳打ちする。
「文彦君と晶ちゃんが、上手くやってくれたみたいだわ。でも……、文彦君は兎も角、晶ちゃんは粗暴だから、幕僚長に怪我でもさせてなければ良いのだけど……」
おいおい、あんたたちは、裏で一体何をやっているのだ?!
耀子先輩が顔を覗かせ、運転席に近づいて来た自衛隊員らしき人物に確認する。
「どうかしたんですか?」
「君たちは、どう云う目的で?」
「観光ですわ」
「だったら済まないが、ここから先、住民以外は立ち入り禁止になっている」
「あら、私たち、ここにお住みの方にお船をお借りして、クルージングに出ようと思っていましたのに……。それでは駄目ですの?」
「港は今、住民も使用禁止なんだ」
「困りましたわ……」
どうやら、例の蓬莱島に島民を近づけさせない為の防衛処置らしい。だが、これでは蓬莱島の仙人を説得するどころか、近づくことも出来ないではないか……。
耀子先輩は困った様な表情で、検問官の顔を見つめている。
「お借りする約束をしていた方に、何も言わず、このまま引き返したら、お貸し下さるって仰有っていた方が、気を悪くされてしまいますわ……。せめて、港まで行かせて貰えませんかしら?」
流石にそれは無理だろう。そんなのが通るのであれば、検問なんて最初から全く意味が無いじゃないか……。
「あ、ああ。いいですよ……。自分もご一緒しましょうか?」
「あら嬉しい。じゃあ、ここから歩いて港まで行きますわ。マリーナまでの案内、宜しくお願いしますわね」
「はい! 喜んで!!」
検問をしていた自衛官は、突然愛想が良くなって笑みすら浮かべている。
よ、耀子先輩……、また何か、良からぬ術を使ったな!!
「さ、皆さん降りてください」
耀子先輩はそう言って、皆を降ろし、先を行く検問官の後に続いた。そして僕に、こう一言付け加えたのだった……。
「幸四郎、後でお仕置きだからね!!」
さて、この道路封鎖について、僕は寧ろ適切な判断だと思っている。
あの様な危険な種子を撒く仙人の島に、一般人を近づける訳には行かないし、万が一、攻撃命令が発せられる様な場合にも、付近に漁船などが居ては邪魔で仕方がない。それなら、今の時点であの海域の封鎖は、今後どう云う作戦を取るにせよ、最善の対応なのではないだろうか?
だが、僕たち不思議探偵に取っては、この封鎖は行動の障害以外の何物でも無い。耀子先輩はどうする心算だろうか……?
検問官に連れられて、僕たちが幌泊マリーナへと着くと、検問官の上官らしき人物が、何事かと近づいてくる。
「おい、何で持ち場を離れた?!」
「この方が、『こちらに来たい』と仰有られるので……」
「何を馬鹿なことを……」
耀子先輩はこの2人に近づいて、上官に言葉を掛ける。
「申し訳ありません。緊急の用件なのです」
「済みませんが、ここは一般人の立ち入りが禁止された区域なんですよ」
「一般人ではありませんわ。私たち特殊任務を承っておりまして、あの蓬莱島に渡らなければなりませんの……。お疑いでしたら、幕僚長でも、首相にでも確認を取って頂けますでしょうか? こちら、橿原幸四郎。私は藤沢耀子と申します……」
耀子先輩、何と云うハッタリをかますのだ! 上官も、余りの事に動揺したのか、慌てて無線トランシーバーで確認連絡を取っている。
そして、暫く後、上官らしき人物が背筋を伸ばし、耀子先輩に敬礼をした。
「失礼しました!! 幕僚長から橿原幸四郎以下三名を蓬莱島にお連れするよう、緊急指示が出ているとのことです!!」
何なんだ? 何が起こった?!
耀子先輩が、その理由を僕に耳打ちする。
「文彦君と晶ちゃんが、上手くやってくれたみたいだわ。でも……、文彦君は兎も角、晶ちゃんは粗暴だから、幕僚長に怪我でもさせてなければ良いのだけど……」
おいおい、あんたたちは、裏で一体何をやっているのだ?!