海域封鎖指令(4)
文字数 1,639文字
マングローブの森を一周するのは、耀子先輩が要求したことだ。しかし、彼女の言葉に従ったにも関わらず、耀子先輩は不満そうな表情を続けたままだった。
「どうしたんです? なにか、気に入らないことでもあったのですか?」
「何もかもが気に入らないわ……。相手のいる位置が分からないのよ。島から離れていた時は、島に敵がいることだけは分かってたんだけど、ここまで来て、島のどこかって段になると、皆目見当がつかないの……。島全体が同じ様な脅威で、どこを取っても大した違いがないのよ」
「もしかしたら、仙人は1人だけじゃ無くて、同じ程度の力を持った奴が何人もいるんじゃないですか? そいつらが、島中に分散して暮してるから、脅威が1ヵ所に集中してないとか……」
「それなら、大空に見える星の様に、個々の位置が私には分かる筈だわ。そんな感じじゃないの。もっと……島全体、脅威が均一に分散している感じなのよ」
「なら、巨人の様な仙人で、島を帽子の様に被っているんじゃないですか?」
「それなら脅威の中心は海底……。下の方向にある筈だわ」
この会話に染ノ助君も加わってくる。
「藤沢さんは敵の位置が分かるんですか?」
「ええ。危険な物があると、私には第六感的に分かるのよ」
「成程……。それでしたら、敵は島そのものなんじゃないですか? 蓬莱島自身が1個の生命で、島全てがその体じゃないかと……」
「それは考えたわ。でもね……、例えば、誰かが私をナイフで刺し殺そうとしているとするでしょう。そうした時、脅威は、そう考える脳と、実行する手、そしてナイフなどの凶器。これらに集中して感じるものなのよ。で、これに因って、私はこの人が、ナイフを手で持って、私を刺そうとしているってことが分かるの……」
「でも、この島は一様に脅威を持っているってことですね」
「ええ。これは、海栗なんかの感じに似ているわね。一様に危険な棘が存在している。中心は危険でなくても、表面全てが危険であれば、全体が危険と感じる……」
そこに、一つ目鴉が意見を述べる。
「公主様、公主様の能力を疑う訳ではありませんけどね。そんなの上陸してみれば分かるんじゃないですか? 分からないことを詮索しても、今は仕方ないでしょう?」
耀子先輩はそれを聞いて微笑んだ。
「鴉ちゃんの言う通りね。分かった。まず入り江に入って、砂浜から上陸しましょう」
僕たちは入り江に入り、砂浜に上がるとボードが潮に流されない様、砂浜と森の境目辺りまでボートを引き摺り上げた。
それにしても、綺麗な白砂の砂浜だ。まるで、人工的に白い砂をいれて、理想的な海岸を誰かが造り出したかの様な……。
耀子先輩は森に入っていく前に、どこにいるか分からない島の仙人に、浜辺から大声で話掛けてみる。
「貴方と話がしたい!」
だが、直ぐには返事が来ない。耀子先輩は何度か繰り返し、呼びかけた。すると……。
島の主が反応したのは、耀子先輩が5度目に声を掛けた後だった。島の内側、森の方から全裸の女性が現れたのだ。
その女性は、生きているのが信じられない程に青ざめた肌の色をした東洋系の女性だった。そう。僕には、彼女が日本人であるかの様に見えたのである。
「話すこと……ない。我……殺す」
「話を聞いて。あのミサイルは貴女を攻撃したのでは無くて、人間同士の威嚇行為だったのよ。でも、貴女が被害を被ったのは事実ね。だから、貴女の賠償要求を話して欲しいの。それを私たちは持ち帰り、日本政府に伝えるわ。それを政府が飲むか保証は出来ないけど、それまでは貴女からの攻撃は待って欲しいのよ……」
「話すことない……。殺す」
「少しは話を聞いて欲しいわね……」
「話すことない……」
少女は次にそう言うと、右手を上げ、僕たちを指さした。すると、それを合図に、森の中と入り江の水の中から、敵が十数名ずつ湧いて出てくる。
「が、骸骨!!」
そう。現れたのは、白骨化した人間の骸骨。彼らはガシャガシャ音を立てながら、僕たちの方へとゆっくりと近づいて来た。
「どうしたんです? なにか、気に入らないことでもあったのですか?」
「何もかもが気に入らないわ……。相手のいる位置が分からないのよ。島から離れていた時は、島に敵がいることだけは分かってたんだけど、ここまで来て、島のどこかって段になると、皆目見当がつかないの……。島全体が同じ様な脅威で、どこを取っても大した違いがないのよ」
「もしかしたら、仙人は1人だけじゃ無くて、同じ程度の力を持った奴が何人もいるんじゃないですか? そいつらが、島中に分散して暮してるから、脅威が1ヵ所に集中してないとか……」
「それなら、大空に見える星の様に、個々の位置が私には分かる筈だわ。そんな感じじゃないの。もっと……島全体、脅威が均一に分散している感じなのよ」
「なら、巨人の様な仙人で、島を帽子の様に被っているんじゃないですか?」
「それなら脅威の中心は海底……。下の方向にある筈だわ」
この会話に染ノ助君も加わってくる。
「藤沢さんは敵の位置が分かるんですか?」
「ええ。危険な物があると、私には第六感的に分かるのよ」
「成程……。それでしたら、敵は島そのものなんじゃないですか? 蓬莱島自身が1個の生命で、島全てがその体じゃないかと……」
「それは考えたわ。でもね……、例えば、誰かが私をナイフで刺し殺そうとしているとするでしょう。そうした時、脅威は、そう考える脳と、実行する手、そしてナイフなどの凶器。これらに集中して感じるものなのよ。で、これに因って、私はこの人が、ナイフを手で持って、私を刺そうとしているってことが分かるの……」
「でも、この島は一様に脅威を持っているってことですね」
「ええ。これは、海栗なんかの感じに似ているわね。一様に危険な棘が存在している。中心は危険でなくても、表面全てが危険であれば、全体が危険と感じる……」
そこに、一つ目鴉が意見を述べる。
「公主様、公主様の能力を疑う訳ではありませんけどね。そんなの上陸してみれば分かるんじゃないですか? 分からないことを詮索しても、今は仕方ないでしょう?」
耀子先輩はそれを聞いて微笑んだ。
「鴉ちゃんの言う通りね。分かった。まず入り江に入って、砂浜から上陸しましょう」
僕たちは入り江に入り、砂浜に上がるとボードが潮に流されない様、砂浜と森の境目辺りまでボートを引き摺り上げた。
それにしても、綺麗な白砂の砂浜だ。まるで、人工的に白い砂をいれて、理想的な海岸を誰かが造り出したかの様な……。
耀子先輩は森に入っていく前に、どこにいるか分からない島の仙人に、浜辺から大声で話掛けてみる。
「貴方と話がしたい!」
だが、直ぐには返事が来ない。耀子先輩は何度か繰り返し、呼びかけた。すると……。
島の主が反応したのは、耀子先輩が5度目に声を掛けた後だった。島の内側、森の方から全裸の女性が現れたのだ。
その女性は、生きているのが信じられない程に青ざめた肌の色をした東洋系の女性だった。そう。僕には、彼女が日本人であるかの様に見えたのである。
「話すこと……ない。我……殺す」
「話を聞いて。あのミサイルは貴女を攻撃したのでは無くて、人間同士の威嚇行為だったのよ。でも、貴女が被害を被ったのは事実ね。だから、貴女の賠償要求を話して欲しいの。それを私たちは持ち帰り、日本政府に伝えるわ。それを政府が飲むか保証は出来ないけど、それまでは貴女からの攻撃は待って欲しいのよ……」
「話すことない……。殺す」
「少しは話を聞いて欲しいわね……」
「話すことない……」
少女は次にそう言うと、右手を上げ、僕たちを指さした。すると、それを合図に、森の中と入り江の水の中から、敵が十数名ずつ湧いて出てくる。
「が、骸骨!!」
そう。現れたのは、白骨化した人間の骸骨。彼らはガシャガシャ音を立てながら、僕たちの方へとゆっくりと近づいて来た。