プリンセスバトル再び(3)
文字数 1,890文字
シラヌイちゃんと耀子先輩の闘いは、結構な長丁場となっていた。
話をするのは、僕とテレビ電話で観戦する大刀自と云う和装の品の良い老女だけ。シラヌイちゃんの2人の兄は、自分たちの願いが掛かっているので必死に応援しているし、白瀬夫妻は自分たちの愛娘が闘っているのを親として無言で見守っている。
それは風花ちゃんも同じで、尊敬する姉 様の勝利を信じきって画面を見つめており、正信老人はと云うと、どっちを応援しているのか良く分からないが、この闘いを興味深げに立ったまま眺めていた。
耀子先輩は、剣での闘いの劣勢を跳ね返そうと、再び突進して肉弾戦に持ち込もうと画策する。それに対し、今回、シラヌイちゃんは妖刀を呼び出そうとはしなかった。気温が相当に上昇しているからだろう。
あと少しで耀子先輩がシラヌイちゃんと殴り合うと思われた瞬間、シラヌイちゃんのそっと前に出した腕の先が、突然、投網の様に変化して、耀子先輩を球体の様に包み込む。
「やった! これで、姉 様の勝ちね!!」
これまで黙っていた風花ちゃんが、姉の勝利を確信して、声を上げ、立ち上がった。
それにしても、何がどうなったのだ?!
何が起こったのか分からない僕に、再びテレビ電話の老女が説明してくれる。
「沼藺は、手の先をどんな電気製品にでも変化 させることが出来るんですよ。それでね、手を高出力のマイクロ波 発生装置に変えて、マイクロ波 を反射させるフリンジ毛で耀子さんを包み込んだんでござんすよ」
そ、それって、まるで、電子レンジじゃないか!!
「はい、幾度も往復するマイクロ波 に因って、フリンジ内の水分は一斉に振動し、高熱を発するんです。もし、それを受けちゃぁ、流石の大悪魔でも、生きちゃいられなかったでしょうね……」
な、なんて恐ろしい技なんだ……。
「他にも、先生もお使いなさるレーザーってんですか、そんなのも出すことが出来るらしいですよ」
無茶苦茶チートだな……。
で、でも、「それを受けちゃぁ、生きちゃいられなかった」って事は、耀子先輩はこの攻撃を避けたってことなのか?
画面の中では、シラヌイちゃんがフリンジを納め、赤い大地に静かに立っている。そして、少し笑みを浮かべて、フッとため息を吐いた。
「やっぱり、一度見せたことのある技じゃ、耀子ちゃんには通用しないわね……」
「ええ。フリンジに捕らえられた時、『瞬間移動』で網が閉じる寸前に脱出したのよ」
良く見ると、シラヌイちゃんの背後に耀子先輩も無傷で立っている。
「さ、耀子ちゃん。身体も暖まったでしょう? そろそろ本気で闘わない?」
「ええ?! 沼藺は本気じゃなかったの? そんな……、私、困るわ……」
耀子先輩は、シラヌイちゃんの言葉に驚いて狼狽える。だが、シラヌイちゃんはそれを全く信じてはいない様子だ。
「ほんと、白々しいわね……。ずっと手を抜いていた癖に……」
そう言うと、シラヌイちゃんは烏帽子を取って足元に置き、緋の袴の紐を解き袴も脱ぎ捨てた。
「あら、公衆の面前でストリップでも始める心算? この闘い、みんな観てるのよ……」
耀子先輩がそう言った瞬間、シラヌイちゃんの姿は消え、パサッと残された束帯だけが地面に落ちた。
そして、よく見ると、耀子先輩の姿も黒い狼に変わっている。
「違いますよ、あれは沼藺の真の姿、黒髪金袖七尾の狐ってんです。獣化して耀子さんを襲ったんですけど、残念ながら、耀子さんに躱 されたんでござんすよ」
え、あれがシラヌイちゃん?
格ゲーの世界とは云え、さっきまでの本人そっくりの容姿からは、ちょっと想像も付かない変わりようじゃないか……。
でも、そうなると……、耀子先輩は一体どこに行ったんだ?
「上でござんすよ……」
あ、耀子先輩は黒い翼を生やして、不気味に赤黒く輝く空に舞っている。シラヌイちゃんが狐キャラなら、耀子先輩は悪魔キャラってことらしいな……。顔なんか3つもあるし、腕だって6本もある。もう、完全に化け物の姿じゃないか……。
取り敢えず、耀子先輩は空で一休みと云った処か……。ここなら、シラヌイちゃんも攻撃が出来な……。
僕がそんなことを思っていると、なんとシラヌイちゃんは、耀子さんの舞う空へと駆け上がって行くではないか! もう、何でもアリだな。
「沼藺自身は飛べやしません。足を見て下さいましな。紫色の雲が巻き付いてるでござんしょう? あれ、瑞雲ってんですけどね、それを操って足場にしてるんですよ……」
それにしても、この闘い、決着付くのか?
「ちょっと、力の差が在り過ぎるみたいですねぇ……。これは流石に、勝ち目が無いかも知れませんねぇ……」
話をするのは、僕とテレビ電話で観戦する大刀自と云う和装の品の良い老女だけ。シラヌイちゃんの2人の兄は、自分たちの願いが掛かっているので必死に応援しているし、白瀬夫妻は自分たちの愛娘が闘っているのを親として無言で見守っている。
それは風花ちゃんも同じで、尊敬する
耀子先輩は、剣での闘いの劣勢を跳ね返そうと、再び突進して肉弾戦に持ち込もうと画策する。それに対し、今回、シラヌイちゃんは妖刀を呼び出そうとはしなかった。気温が相当に上昇しているからだろう。
あと少しで耀子先輩がシラヌイちゃんと殴り合うと思われた瞬間、シラヌイちゃんのそっと前に出した腕の先が、突然、投網の様に変化して、耀子先輩を球体の様に包み込む。
「やった! これで、
これまで黙っていた風花ちゃんが、姉の勝利を確信して、声を上げ、立ち上がった。
それにしても、何がどうなったのだ?!
何が起こったのか分からない僕に、再びテレビ電話の老女が説明してくれる。
「沼藺は、手の先をどんな電気製品にでも
そ、それって、まるで、電子レンジじゃないか!!
「はい、幾度も往復するマイクロ
な、なんて恐ろしい技なんだ……。
「他にも、先生もお使いなさるレーザーってんですか、そんなのも出すことが出来るらしいですよ」
無茶苦茶チートだな……。
で、でも、「それを受けちゃぁ、生きちゃいられなかった」って事は、耀子先輩はこの攻撃を避けたってことなのか?
画面の中では、シラヌイちゃんがフリンジを納め、赤い大地に静かに立っている。そして、少し笑みを浮かべて、フッとため息を吐いた。
「やっぱり、一度見せたことのある技じゃ、耀子ちゃんには通用しないわね……」
「ええ。フリンジに捕らえられた時、『瞬間移動』で網が閉じる寸前に脱出したのよ」
良く見ると、シラヌイちゃんの背後に耀子先輩も無傷で立っている。
「さ、耀子ちゃん。身体も暖まったでしょう? そろそろ本気で闘わない?」
「ええ?! 沼藺は本気じゃなかったの? そんな……、私、困るわ……」
耀子先輩は、シラヌイちゃんの言葉に驚いて狼狽える。だが、シラヌイちゃんはそれを全く信じてはいない様子だ。
「ほんと、白々しいわね……。ずっと手を抜いていた癖に……」
そう言うと、シラヌイちゃんは烏帽子を取って足元に置き、緋の袴の紐を解き袴も脱ぎ捨てた。
「あら、公衆の面前でストリップでも始める心算? この闘い、みんな観てるのよ……」
耀子先輩がそう言った瞬間、シラヌイちゃんの姿は消え、パサッと残された束帯だけが地面に落ちた。
そして、よく見ると、耀子先輩の姿も黒い狼に変わっている。
「違いますよ、あれは沼藺の真の姿、黒髪金袖七尾の狐ってんです。獣化して耀子さんを襲ったんですけど、残念ながら、耀子さんに
え、あれがシラヌイちゃん?
格ゲーの世界とは云え、さっきまでの本人そっくりの容姿からは、ちょっと想像も付かない変わりようじゃないか……。
でも、そうなると……、耀子先輩は一体どこに行ったんだ?
「上でござんすよ……」
あ、耀子先輩は黒い翼を生やして、不気味に赤黒く輝く空に舞っている。シラヌイちゃんが狐キャラなら、耀子先輩は悪魔キャラってことらしいな……。顔なんか3つもあるし、腕だって6本もある。もう、完全に化け物の姿じゃないか……。
取り敢えず、耀子先輩は空で一休みと云った処か……。ここなら、シラヌイちゃんも攻撃が出来な……。
僕がそんなことを思っていると、なんとシラヌイちゃんは、耀子さんの舞う空へと駆け上がって行くではないか! もう、何でもアリだな。
「沼藺自身は飛べやしません。足を見て下さいましな。紫色の雲が巻き付いてるでござんしょう? あれ、瑞雲ってんですけどね、それを操って足場にしてるんですよ……」
それにしても、この闘い、決着付くのか?
「ちょっと、力の差が在り過ぎるみたいですねぇ……。これは流石に、勝ち目が無いかも知れませんねぇ……」