シラヌイちゃんの決断(3)
文字数 1,637文字
僕たちが雑談で時間を潰していると、姫神様がシラヌイちゃんの判断を全員に伝えると言う。それを聞いた一同は、会話を止めて、ぐっと姫神様に注目した。
「沼藺は……、闘いに敗けた以上、約束ですから、お2人と話をすると言っています」
結局、シラヌイちゃんは、あの闘いを敗けたと判断したんだな……。だが、そんなに力の差が有るのを知っていたんだったら、姫神様も最初からシラヌイちゃんに会うよう命じたら良かったんじゃないか?
「それでは、オシラサマが沼藺の行動を管理してることになるわ。今回のことは、沼藺が自分で納得しなければ行けないことなのよ」
隣に座っていた耀子先輩が、呟く様に僕の心の中の疑問に答える。
「でも、先輩と闘っても、シラヌイちゃんは勝てないって、知っていたんでしょう? 結局、同じじゃないですか……?」
「同じじゃないわ。沼藺は私に殺されることで、実質、拒否することも出来る……」
「そんなことしなくても、闘わなけりゃ良いだけでしょう?」
「沼藺にとって、オシラサマの言葉は絶対なのよ。拒否なんかは出来ないわ。それに、沼藺がお兄さんたちと会わねばならないと納得したとしても、それには踏ん切りをつける何かが必要なの。だって、これまで『誰が何と言っても、もう、お兄さんとは会わない』ってずっと言っていたのよ。それを何も無しに宗旨替えなんて出来ないわ……」
確かに……、シラヌイちゃんにして見れば、これまで貫いてきた決意が、簡単に変えられる程度の浅い気持ちや、嘘だと思われたくはないだろうな……。
それで、格ゲーで耀子先輩と闘わせて、敗けた時の約束だからって言う理由付けをさせたって訳か……。
無意味っちゃ、無意味だけど……、そう言うのって、確かに必要だよなぁ……。
ただ、姫神様は、この会談に新たな条件を付けてきた。
「但し、沼藺が会うのは兄君お2人と、耀子さんと橿原先生の4人だけだそうです」
どう云うことなんだ? まだ、お兄さんたち兄弟とだけで会うって云うなら分かるが、僕たちを同席させるってのは……?
「それも仕方ないかな……。問題ないとは思うけど、私たちは保険なのよ……」
「保険?!」
「ええ。沼藺が実の家族と会わない理由は、恨んで顔も見たくないってこともあるだろうけど、お兄さんたちを心配してのことでもあるのよ……」
「ええっ?!」
「沼藺はね、この独裁狐国家の姫君なのよ。だから、彼女の気分次第で、相手を殺すことも自由なの……。あの娘、興奮すると我を忘れるタイプじゃない? それが恨んでいる家族に会ったら、下手すると相手を殺しちゃうかも知れないでしょう……? そんなこともあるから、『もう2度と会わない』って、お兄さんたちに宣言したのよ……」
成程……。
でも……、だったら、なんで、宥め役が僕たちなんだ?
「大刀自様はそんな会合には出ないし、もし沼藺が妖狐の1人や2人殺すと言っても、止めずに黙って殺 らせるでしょうね……。(沼藺の義兄の)大全さんは、そうなったら慌てて何も出来ないでしょうし、紺野(狐正信)さんや他の政木の妖狐じゃ、姫様には逆らえないわ」
「白瀬夫妻は?」
「これは妖狐族の家族問題だし、養父母には、実の家族に怒り狂う姿を見せたくなかったんじゃないかしら?」
何だか良く分からないが、僕らしかいないってことなのか……?
「そう云うこと! あと、実力的に沼藺を止められるのは、私しかいないでしょう?」
まぁ確かに……、旧い友人の言葉なら、血の繋がりが無い分、逆に冷静になって聞けるのかも知れないな……。
「本当は兄が一番なんだけど、さっき使っちゃったんだもん……」
ま、鉄男さんも、一度去ったと云うのに、そう都合良く戻って来たりはしないよなぁ。
耀子先輩は、姫神様に同席を承諾する旨の返事をした。勿論、僕も同席する。今回、シラヌイちゃんの説得に来たのは、僕を含めた3人なのだ。僕だって、態々遠野までこの為に来たのだ。この結末を最後まで見届ける権利、そして義務ってもんがある!!
「沼藺は……、闘いに敗けた以上、約束ですから、お2人と話をすると言っています」
結局、シラヌイちゃんは、あの闘いを敗けたと判断したんだな……。だが、そんなに力の差が有るのを知っていたんだったら、姫神様も最初からシラヌイちゃんに会うよう命じたら良かったんじゃないか?
「それでは、オシラサマが沼藺の行動を管理してることになるわ。今回のことは、沼藺が自分で納得しなければ行けないことなのよ」
隣に座っていた耀子先輩が、呟く様に僕の心の中の疑問に答える。
「でも、先輩と闘っても、シラヌイちゃんは勝てないって、知っていたんでしょう? 結局、同じじゃないですか……?」
「同じじゃないわ。沼藺は私に殺されることで、実質、拒否することも出来る……」
「そんなことしなくても、闘わなけりゃ良いだけでしょう?」
「沼藺にとって、オシラサマの言葉は絶対なのよ。拒否なんかは出来ないわ。それに、沼藺がお兄さんたちと会わねばならないと納得したとしても、それには踏ん切りをつける何かが必要なの。だって、これまで『誰が何と言っても、もう、お兄さんとは会わない』ってずっと言っていたのよ。それを何も無しに宗旨替えなんて出来ないわ……」
確かに……、シラヌイちゃんにして見れば、これまで貫いてきた決意が、簡単に変えられる程度の浅い気持ちや、嘘だと思われたくはないだろうな……。
それで、格ゲーで耀子先輩と闘わせて、敗けた時の約束だからって言う理由付けをさせたって訳か……。
無意味っちゃ、無意味だけど……、そう言うのって、確かに必要だよなぁ……。
ただ、姫神様は、この会談に新たな条件を付けてきた。
「但し、沼藺が会うのは兄君お2人と、耀子さんと橿原先生の4人だけだそうです」
どう云うことなんだ? まだ、お兄さんたち兄弟とだけで会うって云うなら分かるが、僕たちを同席させるってのは……?
「それも仕方ないかな……。問題ないとは思うけど、私たちは保険なのよ……」
「保険?!」
「ええ。沼藺が実の家族と会わない理由は、恨んで顔も見たくないってこともあるだろうけど、お兄さんたちを心配してのことでもあるのよ……」
「ええっ?!」
「沼藺はね、この独裁狐国家の姫君なのよ。だから、彼女の気分次第で、相手を殺すことも自由なの……。あの娘、興奮すると我を忘れるタイプじゃない? それが恨んでいる家族に会ったら、下手すると相手を殺しちゃうかも知れないでしょう……? そんなこともあるから、『もう2度と会わない』って、お兄さんたちに宣言したのよ……」
成程……。
でも……、だったら、なんで、宥め役が僕たちなんだ?
「大刀自様はそんな会合には出ないし、もし沼藺が妖狐の1人や2人殺すと言っても、止めずに黙って
「白瀬夫妻は?」
「これは妖狐族の家族問題だし、養父母には、実の家族に怒り狂う姿を見せたくなかったんじゃないかしら?」
何だか良く分からないが、僕らしかいないってことなのか……?
「そう云うこと! あと、実力的に沼藺を止められるのは、私しかいないでしょう?」
まぁ確かに……、旧い友人の言葉なら、血の繋がりが無い分、逆に冷静になって聞けるのかも知れないな……。
「本当は兄が一番なんだけど、さっき使っちゃったんだもん……」
ま、鉄男さんも、一度去ったと云うのに、そう都合良く戻って来たりはしないよなぁ。
耀子先輩は、姫神様に同席を承諾する旨の返事をした。勿論、僕も同席する。今回、シラヌイちゃんの説得に来たのは、僕を含めた3人なのだ。僕だって、態々遠野までこの為に来たのだ。この結末を最後まで見届ける権利、そして義務ってもんがある!!