彼の気持ち(2)

文字数 557文字

「昨日のことだけど。」

 私は話しはじめた。午後の休憩時、まだ食堂はまばらだった。その中でも人のいない場所を選んで座った。

「『俺には関係ないってこと?』って聞いたでしょ?あれはどういう意味?」

 私は思い切って核心を突いてみた。武田くんは黙っていた。私もじっと武田くんが話し出すのを待っていた。

「わからない。」

 やっと口を開いた武田くんはそう言った。

「ただ・・・」

「ただ?何?」

「ただ、嫌なんだ。」

 私は「何が?」とは聞かなかった。

「嫌なんだ。誰かと一緒にいるのは見たくない。鈴木さんと一緒にいるのは見たくない。」

 苦しそうに武田くんは言った。私は何も言えなかった。

「ごめん・・・」

「謝るなよ。」

 武田くんは立ち上がりながら言った。

「好きなんだろ?鈴木さんのこと。だから俺が嫌だろうが何だろうが関係ないだろ?」

 そう言って頑なな表情で私を一瞬凝視した。

「もう行くから。」

 武田くんはそういうとさっさと先に出口に向かった。

「待って。」

 私は急いで追いかけた。

「待って。」

 食堂を出たところで武田くんの腕を掴んで追いついた。階段の下から正美と市田さんが上がって来た。2人の視線が私と武田くんを見ていた。

 私も2人を見た。一瞬思考が停止した。

 武田くんは私の手を振りほどくと2人の脇をすり抜け階段をかけ下りていってしまった。
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