何も変わらない日々(5)

文字数 300文字

 正美の家を出た後、駅まで来て他のバイトの子達と別れた。武田くんは今まで通り私の家まで送ってきた。

 悟との事はタブーのように口にしなかった。それ以外はいつもと変わらない様子でいた。

「ありがとう」

 玄関ドアに手をかけようとして言った。

「俺、バカみたいだな」

「どうして?」

「鈴木さんのこと気にしてたけど。違ったよ」

 何も言えなかった。

「まぁ結局・・・俺には関係ないのは同じか」

 武田くんは私の肩を引いてドアの方に向けていた私の体を自分の方に向かせた。

 ビクッとした。

 一瞬、武田くんの顔が私の顔に近づいて止まった。

「ごめん。帰る」

 言葉が出なかった。

 自転車で去っていく武田くんに小さくおやすみと言った。
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