恐怖(11)

文字数 432文字

 悟は台所脇の小窓を開けてから外に出てそこから家の中を覗いた。

「そんなに見えないと思うけど。通りがかりにちょっと見ただけじゃないの?」

 玄関に戻り靴を脱ぎながら悟は言った。

「でも目が合ったの。普通に歩いていてたまたま目が合っちゃったって感じじゃなくてじっと見られていた感じなの。視線を感じて目を上げたら目が合ったの。」

 私は訴えるように言った。

「そうなの?」

 そういう悟の目は私の話をいぶかしんでいるわけではないにしろ、ちょっと大袈裟なんじゃないの?とでもいいたげな口調だ。

 私はあの時感じた恐怖をわかってもらおうと必死になった。

「バタバタとガラスを閉めたけど怖くなっちゃって。悟はいないし。友達に来てもらうには遅過ぎるし。」

 悟は黙って聞いていた。

「近くに住んでるんじゃないかと思うの。こわいよ。悟、しばらく早く帰れない?」

「無理。」

 即答。取り付く島がない。いつもなら引くところだが私も食い下がった。

「でも1人で怖いし・・・」

「早くなんか帰れるわけないじゃん」
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