嗚咽(3)

文字数 510文字

 頭に血がのぼった。瞼の裏が真っ赤になっているような気がした。

 きっと雨宮に違いない。こんな時間に他の人に電話するなんて考えられない。このタイミングで雨宮と電話するなんて。

 私が家を出ても探すどころか心配もせず、ほかの女と電話するなんて。あまりに馬鹿にしてる。

 もしかしたら私にかけてるのかと思ってみた。でも私の携帯には何の反応もない。

 会社の他の人にかけているのかもしれないとも思って時間をおいてかけてみた。ずっと話し中だった。

 ありえない。

 私は一体悟にとって何なのか。
 もう何もわからない。

 帰りたいのか、どこへ行こうとしているのか、どこへ行きたいのか。何もかもわからなかった。

 知っている道をあちこち歩き回った。無意識に歩いていたが気づけば武田くんの寮の近くに来ていた。

 電話しようかと迷った。でもこんな時間に電話をして何を話すと言うのだろう・・・

「川島さん?」

 後ろから声をかけられた。

「え?どうしたの?なんでここにいるの?こんな時間に」

 武田くんだった。顔を見た途端にまた涙がわいてきた。

「どうしたんだよ」

 武田くんは私の両肩をつかみ顔を覗き込んだ。

「ごめんね」

 そう言っている傍からまた涙が溢れてこぼれた。


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