嗚咽(1)

文字数 514文字

 家に着いても悟は私と口もきかなかった。車のドアを乱暴に開閉して荷物をおろした。

「いいから早く玄関開けて」

 荷物を持とうとした私を明らかに邪魔だと言う目で見て言った。

 玄関を開けて洗面所に行きお風呂をつけた。

 一通り落ち着くと悟はテレビをつけてソファーに座って煙草に火をつけた。

「あー疲れた」

 独り言のようだ。

「お疲れさま」

 私が言うと悟は半笑いでこちらを見た。

「ああ、お前のせいで余計疲れたよ」

「私のせいって言うけど・・・」

「お前のせいじゃないか。お前のわがままだろ?」

「わがままって・・・」

「ああ、もういい、もういい、たくさんだよ。疲れてるのに。せっかくの貴重な休日がお前のせいで台無しってこと」

「そんな言い方無いでしょ!」

「だからいいって!お前となんか話したくない。今日のことは絶対許さないからな。恥かかせやがって」

「恥かくってどういうことよ!」

「わかんないのか。よーく考えてみろよ、その頭でっかちな割に足らない頭でよ。ふざけんな。あー、お前と話してるとほんとに不愉快。もう喋んな」

 悟は煙草を灰皿にぎゅうぎゅう押しつけて消し立ち上がった。

「風呂はいって寝る。疲れた」

 涙が次々溢れ嗚咽していた。体の震えが止まらなかった。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み