行きつけ(9)

文字数 528文字

 3人のオーダーしたドリンクがきたので乾杯した。相変わらず山本くんは市田さん狙いなのは見え見えだ。

 市田さんはと言えば明らかにターゲットを武田くんにしているのがわかった。さっきから武田くんにばかり話し掛け思わせぶりな視線を送っていた。

 好き嫌いではなく男という男を自分の術中にはめないと気がすまないのだろう。男を自分の虜にするのが楽しいのだ。

 彼女にとっては狩りのようなものなのだろう。武田くんなんか簡単にとらえられそうだ。格好のターゲットにちがいない。

「武田さん最近イメージ変わりましたよね?」

 武田くんが市田さんの方を向いた。その顔には警戒の色がうかんでいる。

 (ほら、始まった。)

 私は思いながら様子を見ていた。武田くんが黙っているので彼女は続けた。

「かっこよくなった。なんかあったんですか?」

 市田さんはかわいらしい目で武田くんをじっと見つめてにっこり笑った。

 こんなかわいい子にこんな風に見つめられたら女の私だってドキドキしてしまいそうだ。案の定武田くんは耳まで真っ赤になった。

「武田さんてかわいい。」

 市田さんは上目遣いに武田くんに笑いかけた。
 全く舌を巻いてしまう。山本くんは面白くなさそうだ。私はお手並み拝見と勝手にやらせておくことにした。
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