情緒不安定(1)

文字数 445文字

 風呂上がりに冷えた緑茶を飲んでいると悟の車が入ってくる音がした。バスタオルを洗面所に持って行きながら玄関で出迎えた。

「おかえり。」

「まだ起きてたの?寝てればよかったのに。」

「飲みに行ってたから。」

「ふぅん。」

 悟は疲れた様子でそう言った。

 誰と、とか何処へとか、そういった質問はない。私の方も特に聞いて欲しかった訳でもない。

 悟にしてみればそんなことはどうだっていいことなのだ。

 そんなことはずっと前からわかりきっていたけれどこの時はそれがなんだか妙に悲しかった。

「悟?」

「何?」

「私が誰と一緒にいたかとか気にならないの?」

「何それ?急になんだよ。いつものことじゃん。また店のやつらと飲んでたんだろ?めんどくさい話は勘弁してくれよ。疲れてんだからさ。」

 悟は本当に心底面倒くさそうに言った。

「もういい?俺風呂入って寝る。」

「うん。ごめんね。」

 それで会話は終わりだった。私は悟が出てくるのを待たずにベッドに入った。悟を待っていたところで彼はきっと私と話すのも億劫なんだろうと思ったからだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み