部外者(7)

文字数 533文字

 悟は一瞬言葉に詰まった様子を見せた。

「どうして自分の妻より彼女を優先させるの?どうして私が気分悪いから帰りたいって言ってもあの人送ることの方が大事なの?」

「お前おかしい」

「おかしいのは悟の方だよ。もういいよ。電車で帰る」

「お前さぁ。ちっとは俺の立場も考えてくれよ、頼むから。少しは空気読めよ。そんなことしたらシラケるだろ?皆に気を遣わせて変な空気になるとか、そういうこと考えられないの?もうちょっと大人らしく考えて行動してくれない?いい加減にしろよ。どこにいるんだよ。迎えに行くから」

 電話が切れた。
 情けなくてまた涙が出てきた。ベンチに座ったまま泣いていた。

 こちらに向かってくる悟が見えた。

「何やってんだよ」

 明らかに怒って不機嫌だ。

「お前、楽しい気分を台無しにして不愉快にさせたらナンバーワンだな」

「何が気に入らなくてこんなとこで不貞腐れてるんだよ。わがまま過ぎないか?」

「なんでこんなところに連れてきたの?」

「は?強制したつもりはないけどな」

「なんで誘ったの?」

「いや。お前が行くって決めたよな?なのにこれはなんだよ」

「あの人、雨宮さんてどういう関係?」

「アシスタント。勝手に勘ぐって挙句これかよ?いい加減にしろよ!いいから戻るぞ。これ以上許さないからな」
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