恐怖(9)

文字数 396文字

「ここを通るってこの辺に住んでるヤツじゃないの?それかつけられてたか。あんまり通らないだろ?ここ。この裏にでも住んでるヤツじゃなきゃ。」

 武田くんの言うとおりだった。このアパートは道路から奥まっている。ここを通るのは住人か大家か、別棟のアパートの抜道を知っている人間だ。

 初めてここに来た時は散々迷ったものだ。
 そもそも家の前の道路だってこの辺りに土地勘がある者でないと通りかかるような場所でもない。

「そいつ、近くに住んでるヤツかもな。気持ち悪いな。」

「1階の角だから狙われやすいみたいだし。1人暮らしじゃないんだけどね。」

「でも彼氏は不在がちじゃん?近くのヤツなら知ってるかもしれない。気をつけなよ。怖がらせるわけじゃないけど。」

「うん。」

 あの気持ちの悪い目が、視線がまとわりついているようで寒気がした。あの不気味な目の男はすぐ近所に住んでいるのかもしれない。そう思うと落ち着かなかった。
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