何も考えたくない

文字数 272文字

 悟が帰宅したのは0時をとうに過ぎて私はもう寝ようという頃だった。

「おかえり」

「ただいま」

 私が次の口を開く前に悟が言った。

「昨日は悪かったけど話は今日は勘弁な。疲れて眠い。風呂入って寝る」

「わかった」

 何も聞けなかった。何も言えなかった。爆発寸前まで膨張した胸の中の大きな塊をぐっと抑えて飲み込む。

 リビングに出しっぱなしになっていた客用の布団を干すことも出来ずにそのまま押し入れにしまって襖を閉めた。

 (もういいや)

 その瞬間、何もかもどうでもよくなってしまった。疲れていた。疲れきっていた。悟を待たずにそのまま布団をかぶって寝てしまった。





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