8節「ヨウタを救い出せ 1」
文字数 2,612文字
夢月くんは積極的に吏星さん蓮夜さんと
コミュニケーションを取るようになりました。
やり取りは相変わらずではありましたが……。
着実に前に進んで、この日を迎えました。
でも、彼の意志に一花添えられていれば嬉しいです。
戻ってきたみたいです。
少しさっきよりも表情が暗いような気が……
私にはその仕組みは全く分からないのですが……
かなり詳細なことまで正確に分かるようです。
夢魔に憑かれた人が、人間関係でのトラブルを
抱えていることは、決して珍しくないからです。
あの親子から感じていた、違和感の正体と同時に……。
それでも……私にはこの事実を簡単に
受け流すことは、できませんでした……。
概念や価値観その物が阻害になる。
これが治療の"拒絶"というものの正体……。
治療に当たれるかもしれない。
そんな淡い期待も打ち砕かれ……
いよいよ頼みの綱は彼独り……。
気負いすぎないようにと、蓮夜さんも気遣って……
"分かりやすい言葉"で伝え直しました。
たまーに蓮夜さんも、夢月くんについては
"見誤り"があるような気がしますね……。
もちろん、今日もお母さんが一緒に来ています。
夢月くんの質問に答えました。
前に会った時より反応が鈍い気がします。
夢魔の影響が進行しているのかも……。
夢月くんの返答に食いかかりました。
さすがの夢月くんも、これにはタジタジと言ったところです……。
治療について考えっ放しでした。
家でも他事を考える余裕がなかったのでしょう。
そのことを私も、今初めてちゃんと認識しました。
ヨウタくんと話せるのも夢月くんだけ。
ワガママに独りで対応し続け、集中力を保つのはかなり難しいはず……。何か助けになれれば……。
取り出し、夢月くんに投げて渡しました。
このやりすぎ感……さ、さすが吏星さん……。
好かれるのは夢月くんで吏星さんじゃない。
むしろ吏星さんは見てさえもらえていない。
子供の残酷なところだと、思います……。
お母さんも善意で話しかけていますし、
それを汲んでくれる優しい方です。
それでも……
こう、何とも言えませんね……。
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