1節「安らかな夢の世界へ ~悪夢の治療をする人達~ 1」
文字数 1,417文字
……夢を見る。毎日毎日、ずっと同じような夢。
辛く、悲しく、恐ろしい……悪夢を。
私――天崎 そらはその悪夢の原因を探すため、病院で教えられたお店の門を叩きました。
そこは見知ったカフェ 夢うさぎ。
私もお昼によく訪れる、この地域の人気店です。
夜間の今は閉店中のはず……。
一体、私の悪夢とこのお店に何の関係があるんでしょうか……。
……閉店時間はもう過ぎてるよ。また明日来てくれないか?
いつもいるウェイターさんの顔が目に入りました。
病院で貰った書類を渡さなきゃ……。
……確かに、招待を確認。
うん、君を”裏”のお客と認めるよ。
赤い髪の男の子(早乙女さんだったかな……?)が声をかけると、2人の男性が奥から出てきました。
この2人もいつもカフェでウェイターをやっている人達です。
へぇ、飛び込みなんて珍しい。残念、今日のこっちは、このままオフかと思ってたのに。
早乙女、俺たちの仕事があるということは、それだけ苦しむ者が多いことの裏返し。良いことではないぞ。
あーはいはい分かりましたよーだ。吏星はいちいちうるさいなぁ。
まぁそう言うなよ、吏星。
そんなこと夢月ちゃんだって分かってるって。
それより今は、これからどんな子の相手ができるのかの方が大事でしょ。
銀髪の好青年――紫吹さんは、軽快な動きで座っていた椅子から立ち上がりました。
すごい服装をしているのに、慣れた素振りで美しく動きます。私だったら絶対に踏んだり巻き付けたりしてしまいそう……。
覚えられている……。
その事実が、ほんの少しだけばつの悪さを私の胸に覚えさせました。ひっそりと通っているつもりだったんですが……。
フルネームは早乙女 夢月っていうんだ。
よろしくな。
俺は宝生。宝生 吏星だ。
同じく表でウェイターをやっている。客の顔を覚えるのは苦手だが、お前のことは知っているぞ。いつも来てくれて感謝している。
ごめんね。……そうだな、ちゃんと話すのは初めてだし、やっぱり初めまして、と言っておこうかな。
僕は紫吹 蓮夜。
知っての通り、この店一番の人気ウェイターさ。今日は君のような可愛い子が相手で、嬉しいよ。
お店で見知った3人ではあるけれど……
何故だかいつもと全然違う雰囲気です……。
どういうことなんでしょうか……。
夢うさぎ亭?
カフェ夢うさぎではなくて……?
夕方にはCLOSEDするこのお店で、
夜に行われている"何か"……。
私は、大変なところに来てしまったのかもしれません……。
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