15節「明日を照らす光 6」
文字数 1,975文字
恐る恐る目を開けると、輝きは終息し元の夢空間に戻っていました。
安堵すると同時に慌てて夢月くんの方を見ると、
そこに大きな夢魔の姿はもうありません。
驚いた顔で見下ろしている夢月くんの姿。
そして、夢月くんが見下ろしているその……
確かに……犬、です。
紛れもなく犬、のはずです。
軽快に走り出し夢月くんの横を通り過ぎます。
お座りをして彼の顔を見上げました。
普通に……喜んでいるのだと……思います……。
先程まで対峙していた夢魔の変化した姿なのでしょう。
どうしてこうなったのかは私には分かりません。
でも……夢月くんが何かをしたおかげということは、分かります。
今はヨウタくんに受け入れられる姿で、彼のそばに座っている……。
これは……つまり……
彼を支えることを選んだ、ということ。
そして夢月くんが夢魔との対話を試みたことで、
私達が全く想像もしていなかった未来を実現したということ……!
「心配するな」と宣言するように、
元夢魔は彼の隣りで、その澄んだ鳴き声を響かせました。
家にいられないことを理解しています。
だからこそ、彼の心が最も恐れているのは……
"ひとりの時間"です。
その時間を埋めてくれる存在を、
今までずっと求め続けてきた。
それを私が伝えるまでもなく夢月くんは、
1つの解決を導いてしまったのです……!
夢魔を……浄化した……?
早乙女……お前は一体……?
その反応から察するに夢月くんの力は、
夢想師としても一般的なものではないようです。
ただ私は今……
正直な気持ちを伝えてあげたい。
私とヨウタくんのそばで、
誰よりも頑張ってくれた――彼に!
今の私の気持ちを精一杯、全身で彼に伝えました。
きっとそれが、彼のさらなる自信に繋がると思うから!
隣りには、すっかり仲良くなったワンちゃんも一緒です!
もしやこれも……同化の影響……?
……でも、それも今はすごく嬉しく微笑ましい。
"心"からそう思います。
今度は少しだけ顔を曇らせ、恥ずかしそうにボソッとした声で喋り始めました。
ヨウタくんは今まで幼いながらずっと
この孤独と戦ってきたのでしょう。
"孤独"という概念すら理解できぬまま、
独りの時間を耐え抜いてきたに違いありません。
でも今はもう、その必要がないという
ことが分かったと思います。
自分を助けてくれる沢山の優しさに囲まれたことで。
お母さんに報告しに夢うさぎに戻ります!
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