2節「夢魔と夢想師 1」
文字数 1,345文字
私がこの世界に悪夢を見せるもの――
"夢魔"が存在していると知って半年が経ちました。
それは人の身体ではなく
"心に巣食うウィルス"のようなものなんだそうです。
夢魔による悪夢は病院で治療することはできず、
自然に治ることもありません。
毎日、何かに追いかけられたり、追い詰められたり……同じような悪夢を見続けるんです。
夢うさぎは、夜間"夢うさぎ亭"と改め、
夢魔を祓い人々を悪夢から解放する仕事をしています。
――そして今日も悪夢に苦しむ人が、
夢うさぎ亭の門を叩きます。
解放する方法はたった1つだけ……。
他人の夢の世界に入って直に夢魔を
祓うことができる人達――
夢月くん、吏星さん、蓮夜さん。
"夢想師"と呼ばれる彼らの治療を受けることです。
動揺した態度で口を開きました。
無理もありません。
こんな非現実的な話をいきなり受け入れられる人など、いるはずがないのですから。
疑心暗鬼な人には早急な治療を。
それが夢うさぎの基本的なスタンスです。
と、思わなくはないんですが……。
そんなことが気にならないくらい、
夢魔に悪夢を見せられる時間というのは途方もなくて……誰かに助けてほしいものなんです。
それが分かっているからこそ、夢うさぎの3人は
"普通とは違う"接客を心掛けているそうです。
私は最近、必要に応じてフォローを入れるようにしています。
それが、今の私にできる数少ない仕事だからです。
「治るなら何でもいい」と言いたげな虚脱感が感じられます。
そしてその感覚を……私も身に染みて
理解できてしまっているのです。
でも彼を不安にさせない精一杯の笑顔で対応します。
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