13節「本心 3」
文字数 1,694文字
無数の光線を降らせてきた。
大した威力ではないが、そのあまりのスピードに
俺は防御行動も取れずに吹き飛ばされた。
野放しにしてはまずい。
体勢を立て直すよりも早く再度の拘束を試みる。
夢魔の咆哮に弾き飛ばされてしまった。
無理もない……。
万全かつ不意をついてギリギリだった。
この状態で、同じ拘束が通用するわけがない。
先ほどとは違う脅威的な圧力。
紛れもなく、俺に止めを刺すための一撃だ。
夢空間を離脱して、この状況をリセットする。
紫吹に情報を伝達、駆除を委託すれば
より確実にこいつを仕留められるはずだ。
いつも通り……
いつも通りにすれば……
それは、できない。
あいつが今もどこかで戦っているのなら……
ヨウタ少年の治療を諦めていないのなら……
それは……今まで現出したことがないほど
強力で光り輝く"檻"だった。
夢空間にいる俺の力はイコール心の強さ。
俺の"気持ち"が、この技を実現する源となったのかもしれない。
声となり口から漏れ出していた。
早乙女に届くかもしれないし、
届かないかもしれない。
ただ、そのどちらであったとしても俺は
もう言わずにはいられなかった。
俺はあの日、確かにそう思った。
もうお前は夢うさぎには来ない。
ヨウタ少年も助けられない。
その原因を作ったのは俺だと、
心から自分を責めた。
誰に言われるでもなく、自分から。
こんなに傷付きボロボロになって、
自分のことで手一杯のはずなのに
お前は、最後には決して逃げ出さなかった。
俺はそんなお前に――
1つでも何かしてやれただろうか。
力になって、やれただろうか。
お前の"気持ち"に……
寄り添えてやれただろうか。
こんな大技を、加減なく撃ち込んだのだから当然だ。
天空から風が吹き抜けるのを感じた。
それは力強いのに、決して荒々しくない。
包み込まれるような温かさが心地良い……
そんな一陣の嵐。
煌めく光が一直線に駆け抜け、夢魔の懐に飛び込んだ。
これは……一体……?
無色の体液のようなものが吹き出し、一瞬で空中に溶けていく。
赤い光の行き着いた先を見ると、
煌びやかに彩られた長物が刺さっているのが分かった。
清々しい笑顔を浮かべている。
そしてあの早乙女が、夢魔と対峙している。
全ての結果は、火を見るより明らかだった。
それは全くわからない。
後悔と反省は、終わってからすれば良い。
その事実を、高らかに。
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