13節「本心 1」

文字数 930文字

同化を止めて出て行け……?

な、なに言ってるの……!?

そんなことできるわけ――

そら、やっぱりなれたんだ……共心者に。

え?

前に吏星と蓮夜が話してるのを聞いたことがあるんだ。そらはそうなれるかもしれない逸材だって。
…………。

俺なんてちっとも一人前になれないのに、そらは教えてもらったらすぐ同化までできちゃったんだから。

本当は、この同化自体拒否したかったんだけど……

俺じゃ、それすらもできなかった。

む、夢月くん……私は……

確かに……

何年も夢空間に入れなかった夢月くんと……

たった1日で同化を成功させた私……。


事実と状況だけ見れば……夢月くんが私を受け容れたくないと思うのは当たり前かもしれません……。


けれど……それじゃあ私は何のために……

見えるだろ?  俺に憑いた夢魔。

気持ち悪い形でさ、力も半端じゃなく強いんだ。参っちゃうよな。
夢想師なんて到底務まらない、駄目な奴だったんだ。
…………。

もう、夢うさぎに俺なんか必要ないよ。

今のそらがいれば、吏星と蓮夜だけで十分やって行ける。

ヨウタだって、きっと助けられる。

だから2人が危険な目に遭ってまで、俺を助ける必要なんかない。

皆のことも、自分のことも……

何が正しくて、間違いなのか……。

お願いだよそら……

…………。

――ここまで来たのに……

いえ……ここまで来てしまったから……


私の言葉はもう……

夢月くんに届かないのかもしれない……。


でも……それでも私は……

(見たことも聞いたこともない異形……!

こんな夢魔が存在していたとは……!)

(なんという力だ……!

この空間では押さえつけるのでやっと――)

ぐぅ!!

(それも……

長くは持たんか……)

夢魔の強烈な咆哮と共に

俺のかけた拘束が如実に緩まったのが分かる。


気を引き締め直してこちらも力を強めるも、

先ほどまでの力は取り戻せなかった。


このままではいずれ破られる……。

――ふと、

あいつの顔が夢魔の姿にダブった。


お前ならこんな時……どんな選択をする?

このままこいつと対峙し続けたところで

どう考えても勝算は薄い。


俺があいつのために

取らなければならない行動は――

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登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

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