2節「ずっと君の力になりたい 1」

文字数 1,231文字

……うん。

よろしく、早乙女さん。

夢月で良いよ。

裏のお客さんには、下の名前で呼んでほしいんだ。

だから俺も、そらさんって呼ぶな!
……分かった。

よろしくね、夢月くん。

ああ!
それで、ここが今からそらさんに眠ってもらう部屋。

どう? ちょっと落ち着かないか?

さっき聞いた話を踏まえて、吏星が君のために環境を整えてくれてるんだ。

治療の前に、少しだけヒアリングの時間がありました。どうやら、この治療室の空間を私の好みに合うようにセッティングしてくれているみたいです。


けれど……

宝生さんが……?
手を加えてくれていたのが、

あの宝生さんだったというのには、思わず驚いてしまいました。

俺にはよく分からないんだけど、君の心が一番落ち着くような工夫をしてくれてるんだってさ。

詳しいことはあとで本人に聞いてみて。
いや……それはちょっと……
ん? どうしたの?
恐い……かな……
え?
悪い人ではないんだろうけど、宝生さんは何だかいつもピリピリしているイメージがあって……。


私は少し苦手なタイプです……。

ハハ、平気平気!

ああ見えて、吏星は優しい奴だから。話せばきっと君にも分かると思うよ。

う、うん……。
夢月くんが言うようには今は思えないけれど……想像していたより繊細な人なのは確かみたいです。


私の中の宝生さんのイメージと、宝生さん自身は結構違う人なのかも……。

じゃあ早速、ベッドに横になってもらおうかな!
…………。

思わず、身体が震えてしまいます。


ベッドに入る……。

それは眠るということ……。


当たり前のことが、今の私にとっては最も恐怖を覚える瞬間になってしまっていました。

――大丈夫、君がどういう状態なのかはよく分かってる。眠れって言われて、簡単に眠れるわけじゃないこともな。
どういうこと?
夢魔を退治するには、まず正しい夢を君に見てもらう必要があるんだ。
ほら、夢って、本来は幸せな気持ちから始まるものだろ?


苦痛を求める夢魔にとって、夢こそ一番忌み嫌うものらしいんだ。

夢を消そうと現れたところを叩くってわけ。自分も夢を見せる存在のくせに、ちょっとおかしいだろ? 
確かにそう……なのかも(笑)
正直、言っていることは半分くらいよく分からないんですが……。


私に話しかけてくれる夢月くんの姿に、思わず顔がほころんでしまうんです。そんな、人にはない魅力がある人なんだなと思います。

ハハハ!
……でもなんか変な感じだなー。

表のお客さんがこうやって夢想師の施術を受けに来たことって、今までなかったから。


顔を知ってる人とこうして二人きりでこの部屋に入るのって……実は初めてかも。

そう、なんだ。
表はああいうアットホームなお店だからさ、常連さんのことは結構覚えてるんだけど――
今までと違い、少し言い辛そうにしながら、夢月くんは口を開きました。
――ここに君が来たのは、ちょっと意外だった。
……え?

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登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

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