2節「ずっと君の力になりたい 3」

文字数 1,215文字

!!
あまりの勢いに少しびっくりしてしまいました……。

けど、それはそれだけ彼が真剣である証拠でもあります……。


悪夢を治療するだけでなく、私の力になりたい。

彼は本気でそう言ってくれました。

もちろん、君が良いならだけど……。
ごめん、勝手に熱くなっちゃって。

…………。

ううん、ありがとう。
……実は、俺ちょっと好きだったんだ。

お店でそらさんの笑顔を見るのがさ。

私の……?
なんか見ていて元気になれるっていうか、こんな人が近くにいたらきっと楽しいんだろうなって思っちゃう笑顔で……。
だけど、それも君が自分を殺して作っていたものだったんだと思うと胸が、苦しくなる。
…………。
……分かりません。


私は本当に笑っていたのか、作り笑いをしていたのかさえ、自分でもよく分からないんです。


それくらい私は、周りに合わせるのに

必死で生きてきました。


でもその笑顔を……

夢月くんは好きだったと言ってくれました。

けど、そういう時は甘えて良い。

もっと頑張らなきゃって思わなくても良いんだぜ。

…………。
初めてでした。


"頑張っていること"を、

誰かに認めてもらえたのは……。

そこにいて、誰かのために自分を殺して、

それ以上何かすることなんてない。

辛いのは……

それだけ今、君が頑張ってる証だよ。

…………。
…………。
気付くと……

私の目から涙が流れ、頬を伝っていました。


私は、誰かにずっと……こういう言葉をかけてもらいたかったのかもしれません。

君は、あんな素敵な顔ができる人だから。今みたいな顔させたくない。もちろん、無理して笑ってほしくもない。
俺は君の本当の笑顔が見たいんだ。


今の君には、難しいことかもしれない。

けど大丈夫、俺が必ずできるようにしてあげるから。

……ありがとう、夢月くん。

君だけが抱えている不安を、

今日からは俺も一緒に担っていくよ。

うん……うん。
さぁ横になろう。

それからゆっくり話して。


君のこと。君の抱えてる不安。

どんなことでも良い。

俺が全部隣りで受け止めるからさ。


安心して、夢の世界へお行き。

それから夢月くんは、

私の話をたくさん聞いてくれたと思います。


私が不安だったこと。

私が抱えていたこと。

私が自分で気付いていなかった、内に秘めていたこと。


彼が自分から話すことはなく、ただ促すようにその全てを私の中から吐き出させてくれたんです。


すごくすごく、心が温まる時間でした。

大丈夫、俺がついてる!
最後に何を話していたのかは、

残念ながらよく覚えていないのですが……。


夢月くんのその言葉を耳にしたのを最後に私の意識は途切れ、安らかな眠りへと落ちました。

ーーーーーーーー
…………。


あれ、ここは……?

目が覚めると、そこは大きく拡がった真っ平らな景色。


濃く灰色がかったどんよりとした空だけが特徴的に見える、酷く無機質な空間でした。

……目が覚めたか?

乙女向けドラマCD『Nightmare Kiss...』
通販&DL販売実施中!!


https://viewsquad.booth.pm/

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色