12節「閉じられた夢 3」

文字数 1,213文字

突然空間を割って照射された

極太のレーザーめいた何か……。


ギリギリ目視できた範囲だけでも

俺の全身を優に覆えるほどの直径はあるようだった。

(……長距離からの波動攻撃?

そんなこと夢魔に可能なはずが――)

感じたことのない風圧と熱量の塊。


一瞬気付くのが遅れていたら

今の一撃で終わっていたかもしれない……。

――奥の方から2発目の兆候が見える。

悠長に構えてはいられない……!

クッ……!


だが!

確かに未曽有の攻撃ではあったが……

知ってさえしまえば、軸を合わせなければ良いだけのこと!

ハァ!!
2発目を回避し、

そのままの勢いで俺は空間を駆け抜けた。


同時に目線で、射出された波動の先端を辿る。

その先にこそ果たすべき目的がある!

(今ので位置関係は把握できた……!

近付きさえすれば、対象を知覚して捕縛できる……!)

全体への知覚が機能しないこの空間で

直線的な攻撃をぶつけてくるとは寧ろ好都合……!


探す手間が省けたぞ――!

よし……!!
捕縛成功……!

発射された波動の太さに違わない超巨大型……。


途轍もなく厄介なヤツに早乙女も憑かれたものだ……!

さぁ姿を現せ……!


一体、何の動物を模している……!

――――!?

な――

わ、私は……!?

目覚めるとそこは真っ暗な空間でした。


私は……夢月くんと同化して

吏星さんと夢の世界に……。

…………?

――先ほどまでと違い、

今は五感で状況を判断できているようです。


肉体の感覚もある、ということは……

ここは確かに夢空間の中……のはず……。


でも何だか様子が……?

ふと空間が明るくなった時に、

その先に吏星さんの姿が見えました。


けれど画面越しに彼を見ているような状態で……

どうやら私と吏星さんは別の場所にいる……ということ……?

り、吏星さん!?

どうして……!?

気が付いた?

む、夢月くん……!  良かった!

声を聞いて後ろを振り向くと

そこには夢月くんが立っていました。


夢月くんは……画面越しではありません。

私と同じ場所にいてくれているようです。


完全に現状を飲み込めているわけではないですが、

夢月くんに会えたという事実だけで、ひとまず心をなで下ろすことができました。

…………。
えっと、これはどういう……?
……心の外側、かな。

俺とそらの心が完全に同化できていないから、2人とも実体を持って夢の世界に立てていないんだと、思う。

……俺もよくは分からないけどね。

そう、なんだ。

じゃあ私がもう少し頑張れば、同化は上手く行く……。夢月くんも吏星さんも助けられる……。
そういうこと、だね?
吏星さんが夢空間を現出していて

私たちがそこに立てていない。


なら、これはきっと私の問題。

私が夢月くんの気持ちにもっと寄り添えればきっと――

…………違う。

え……?

……そら。

今すぐ同化を解除して、俺の夢から出て行って。

む、夢月くん……!?

『ナイキスTAS』の最新情報はTwitterをチェック!

@viewsquad_tw

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色