2節「夢魔と夢想師 2」
文字数 1,852文字
少しだけ口角を上げて笑顔を作ろうとしてくれました。
私は努めて優しく声をかけました。
佐藤さんを招き連れて行きます。
夢想師の施術は、患者が最もリラックスできる環境で行われるべきとされ、治療室が別途用意されているんです。
本心から言葉を返します。
だってこんなことくらいしか、私にはできないので。
他人の"夢の世界"に入り、夢魔を直接討つ。
言葉ではとても信じてもらえない、おとぎ話の世界のような治療。
夢想師たる彼らは、それをまず患者さんに
受け入れてもらうまでが大変だと言っていました。
だから私は、自分のできることを真っ当させてもらっているだけ。
けれどそれは……仕事だからという理由で
引き受けているわけではありません。
救ってくれたのは他でもない、彼らだった。
その事実をより多くの人に知ってもらいたい。
それ以上の気持ちは、今の私にはありません。
……そう。
半年前の私は正に、毎日見る悪夢に
悩まされる患者の1人でした。
夢想師の治療を受けられたからこそ、
私は今こうしてここに立てています。
私も不安だらけだったけど……
この3人だったから任せることができたと思います。
静かに扉を開けて帰ってきました。
患者さんを安心させて安らかな眠りに導き、
夢の世界への道筋を作るまでが彼の仕事です。
良い夢を見せられる。
"患者を絶対に安心させられる"というのは、
夢想師としてすごい才能なんだそうです。
吏星さんが治療室へと歩みを進めます。
吏星さんが直接治療をする。
これが夢うさぎの王道パターン。
自分が治療を受けた、あの日の衝撃を思い出します。
本人曰く「人付き合いが苦手だから、物理的に安堵してもらうしかない」そうなのですが……。
本当はとっても相手のことをよく考えている人だと知った私は、もっと彼の本心が色んな人に伝わってほしい……と思っています。
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