3節「お前はもう、独りじゃない 2」
文字数 1,320文字
誰かと足並みを合わせるためではなく、
私自身がしたいこと……。
考えたこともありませんでした……。
そもそも夢とは、古代より、肉体から飛び出した魂の経験であり、神や悪魔からの接触であるとされていた。現代では科学が発展し、霊的なものであるという認識は薄まったが、夢占いといったスピリチュアルな価値観は残っている。これはバビロニアの治世より引き継がれてきた解釈技法が変化したもので――
面白いし少し和んでしまうんですが、本人はきっとそういう目的で喋っているわけではないのが分かるだけに、複雑な気持ちです。
それが当たり前だと言わんばかりに、宝生さんは自然な口調で冷たい内容を話していました。普通の人なら、そのまま流していたかもしれません。
けれど彼は……
そう答えることに慣れている。
私にはそう見えてしまいました。
本心ではきっと、この人はそう思っていない。
何となくそう思ったんです。
――少し、地面が揺れたような気がしました。私の心が震えたからかもしれません。
この人もこの顔をするんだ。
この空虚な笑顔を、他人に向ける人なんだ。
そのショックが私の心を苛みました。
彼の笑顔は夢月くんほど分かりやすくはない"それ"だったからこそ、底の知れない闇を抱えているように感じてしまったのです。
けれど威圧的ではなく、どこか温かさを内に秘めた瞳で、宝生さんは私を見詰めてきました。
驚きはしたけれど、
最初感じていたような恐怖は感じませんでした。