5節「君のこと、本気にさせてみたい 1」

文字数 1,595文字

治療室で着替えて(下着に合わせて服の方を替えました……)さっきのことについて考えています。


宝生さんは素でああいう人なんだろうな……とか、誰か指摘してあげる人は周りにいないのかな……とか、多分自分のやっていることの意味にあまり気付いていないんだろうな……とか。


そうこう頭をぐるぐるしている内に扉が開く音がして、私は我に返りました。


入ってきたのは――


紫吹 蓮夜さんです……!

2人きりになれて嬉しいよ、お嬢さん。

カフェ夢うさぎのイケメン名物ウェイター、紫吹 蓮夜がお相手さ。

よ、よろしくお願いします。

( なんか、すごい……)

紫吹 蓮夜さんと言えば、カフェ夢うさぎで一番人気のイケメンさんで……半ばアイドルのような人で……。私の周りにもファンが多いんです……。


私は遠くから見ているだけでちゃんと喋ったことはないので、逆にこういう状況にあることに心臓が高鳴ってしまいます……。

なーんて。

いつからこんな風になっちゃったんだか。裏稼業がある身だからね、目立つようなことは避けるようにとは言われてるんだ。

けどまぁ仕方ないよね。

持って生まれたものだもの。

た、確かに……?
こうして話す紫吹さんは、お昼に見ていた紫吹さんとあまり印象は変わらないように感じます……。


けれど……いえ、だからこそ彼と夜に2人きりという状況を……意識しないわけではない……です……。

え?
見ていたと言っても……。

遠くから、眺めるように、少しだけ、のはずでした。


「皆に囲まれるほど魅力がある人ってどういう"存在"なんだろう」ということが気になってしまって……。

あの……知ってたんですか……?
……もちろん知ってるよ。

僕一度お店に来た人のこと、だいたい覚えてるから。

特に可愛い女の子ことなんか

絶対忘れないよ。

か……?

そんな、私なんて……

こういうことを平気で言う人だと分かっているはずなのに……それでも彼に面と向かって言われると避けようがなく……。

体温が上がってしまうのを感じています……。

フフッ、良いね、可愛い反応。

もっと色々お話したいところだけど、それはまた後でにしようか。

あんまりゆっくりしてると吏星に怒られちゃうからね。ほら、あいつ、ちょっと頭固いでしょ?

ま、まぁそうですね……アハハ……
その割にはデリカシーないからね~。

あんなだから実は女の子にはモテないよ。残念なイケメンって感じ。

あ、さっきはごめんね。

僕から謝らせて頂きます。

いえ、大丈夫です。
何となくですが……紫吹さんは宝生さんのことが好きなんだなと、思えるような話しぶりでした。


そう言えば夢うさぎには最初、夢月くんはいなかったと聞いたことがあります。紫吹さんと宝生さんは、付き合いが長いのかもしれません。

……フフッ、でも話せば話すほどただの真面目な奴ってのが分かるから、全然憎めないんだけどね。
夢月ちゃんもそう。

いつもまっすぐで一生懸命。一緒にいるとついついからかいたくなっちゃう。

それはちょっと……おかしいような気が……。
……え?  おかしい?
フフッ、そうかなぁ?
(そうじゃないかなぁ……)
紫吹さんは常にニコニコしていて、何を考えているのかよく分からない印象でしたが……実際に話してみると、もっと何を考えているのか分からない、という印象になりました……。


何が本心で、何が冗談なのか……

全然分かりません……。

あの二人は良いコンビだよ。

夢月ちゃんが心を開いて、吏星が心を落ち着ける。

普段はそれで終わっちゃうことも多いけど、幸運なことに君には僕も必要だ。


君に憑いている夢魔は、

ちょっと特殊なやつみたいだから。

やっぱりそうなんですね……。
……だけど、僕の施術には、1つ大きな問題があってね。吏星はそれで僕を出したがらないんだ。
問題? って何なんですか?

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登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

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