3節「お前はもう、独りじゃない 1」
文字数 1,687文字
ようこそ天崎 そら。
ここからは俺、宝生 吏星が担当だ。
そっか……。
ここが"夢の世界"みたいです。
夢月くんはまだ、夢の世界に入れないと言っていました。だからこうして、宝生さんが私の夢に出てきている……ということ……だと思います。
現実ではないとは言え……
上手くやれるかな……この人と……。
どうだ夢の世界は?
まるで現実かのように鮮明だろう?
夢空間の現出は
俺が最も得意とする分野だ。
む、何故自分の夢の世界に、俺が先にいるのかという顔だな。
全うな疑問だが、簡単な話だ。
夢とは必ずしも寝てすぐに見るわけではない。お前が眠りに就いている間に、俺が先にお前の夢の世界にアクセスしただけのことだ。
精神、肉体共に最も安定した状態で睡眠を維持できる環境になっているはずだ。そうでないと、夢の世界が揺らぐリスクが高まってしまう。
もっと寡黙な人だと思っていましたが……
こっちのお仕事では違うみたいです……。
少し話が難しくて大変ですが……
私が不安がらないように説明してくれているのだということは、何となく伝わってきます。
夢想師が他人の夢にアクセスするには、患者との間に強い共感触を生む必要がある。
早乙女はそれを心で結び付けるタイプ、俺は環境を利用して行うタイプだ。
早乙女がお前の気持ちを解きほぐしてくれたおかげで、随分と楽をさせてもらった。
やはりあいつは優秀だ。
真顔で見詰められると目つきが……。
まだまっすぐお話するのには勇気がいりそうです……。
……あぁ。
早乙女がお前に何か言ったのか?
まったくあいつは。
ついでだから覚えておけ。
夢想師にとって一番難しいのは、患者の心を開いて夢を見てもらうことだ。
それに比べれば夢魔の駆除など大した問題じゃない。才覚さえあれば、いつかは必ずできるようになる。
あいつはそれをどうも勘違いしている節がある。
私に話してくれる時も、夢月くんの話をする時も……。私たちのことを真剣に考えてくれていることが話しぶりから分かるんです。本当に、分かりすぎるくらいに。
夢月くんが言っていた「優しい人」というのは
本当みたい。
その喋り方と中身とのギャップに、
思わず吹き出してしまいました。
俺は俺でそれなりに気を遣っているつもりなんだが、駄目だろうか?
そうか……。
……まぁ、よく言われる。
固いとか、恐いとか、笑顔が少ないとか、話が長いとか。
その反応1つ1つがおかしくて、
ついつい笑いそうになってしまうのですが……。
実はこの人も少し、かわいそうな人なのかも……
と思えてしまう面もあります。
お前も何か不安なことがあったら言ってくれ。極力直せるように努力はする。
人には、直そうと思っても直らないところがある。
自分で嫌いだと思っていても、そのままにしてしまうところがあります。
そんな"なりたい自分"とのギャップに、
宝生さんも苦しんでいるのかもしれません。
……しかし、お前の夢の世界は本当に何もないな。見渡す限りの平面で驚いた。
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