8節「ヨウタを救い出せ 3」

文字数 1,157文字

ハァハァ……!

良かった近くにいてくれて……!

どうしてお兄ちゃんが……?

ここにいる時はいつも1人って決まってるのに……。

駆け寄る俺の姿を見て、ヨウタは目を真ん丸に。

他に何もなく、本当にただ驚いたみたいだった。

ヨウタを、助けに来たんだよ!
ここにいる悪いヤツをやっつければ、もう毎日悪い夢を見なくて済むんだ!

子供のヨウタにも分かるように、

最低限のことだけ伝えておく。


俺が来たからには、もう安心だって!

……そうなんだ。
そうすればママ……喜んでくれるかな?
もちろん

俺に任せとけって!

……分かった!

頑張ってねお兄ちゃん!

あぁ!
夢の中ではあるけど、ここは現実と同じ。

心配りが重要になるって教わった。


ヨウタとしっかり気持ちは共有できたし、

あとは肝心の……夢魔の駆除……。

…………!
(夢想師が夢入りすると、夢魔は危険を感じて様子を見に出てくる……)

――分かる。

さっきまでとは違って。


夢魔の気配が近付いたからか……。

なら……あとは教わった通りに――!

(そこを暴き出して……)
よし!
手から何か出た!?

お兄ちゃん……魔法使いだったの!?

ここにいる間だけな!
――こいつが……夢魔か……。

結構デカいな……。

形は馬に似ているけど……。

サイズは象……いやもっと大きい……!


吏星や蓮夜はいつもこんなのと戦ってきてたのか……!?

何これ……こわい……。
後ろに隠れてて。

俺が何とかするから。

…………。
…………。
駆け寄ってきたヨウタは、

俺の服の裾をギュッと掴んで震えていた。


……本当はそうさせてあげたいけど、

それじゃ俺が戦えないから……。

……大丈夫!

その手を優しく解いて、

そのままヨウタの頭を撫でてあげた。

……うん。
…………。
(とりあえず手から何か出たな……)
(よく分かんないけど、

こんな感じで合ってるのかな……?)

少し冷静になったら、

何だか胸の辺りがゾワゾワしてきた。


この状況……改めて見てみると異常すぎて、

わけが分からなくなりそうだ……。

…………。
でも、今はヨウタが見ている。

情けないところを見せるわけには……いかない!

(確か……できるだけ使う攻撃を絞った方が良いんだったな……! とりあえずこれでやってみよう!)

……ハァ!!
よし! 行けそうだ!
くらえ!!
良いぞお兄ちゃん!

そのままやっつけちゃえ!

ハァァァ!!
一心不乱に放った攻撃が次々と命中していく。

1発当たるたびに夢魔が少しよろけているのが分かる。


……効いてはいるみたいだ。



このまま攻撃を当て続ければそのうち、

決定打を与えるチャンスが来るはずだけど――

――――――――
……?
(攻撃を受け続けるだけで、反撃の素振りが全くない……。こういうもんなのか……?)
……………!!!!
――――――――!!
うわあ!!
な、なんだ!?

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登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

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