15節「明日を照らす光 5」
文字数 1,451文字
何をしている早乙女!?
今のお前はそいつに攻撃できんのだぞ! 一旦戻ってこい!
何の攻撃もできない今の状況では、危険な相手に違いありません……!
遂には顔に触れられる距離まで夢魔に近付きました。
夢魔の息が微かに荒くなったのを感じます。
震える身体で懸命に地面を踏み抜き、
空間に干渉しようと試みています。
何度も、何度も、何度も……。
目の前の仇敵を手にかけることの方が
遥かに簡単なはずなのに……。
夢魔は痛々しいまでに空間への干渉にこだわり続けます……。
夢月くんは夢魔に言葉を投げかけました。
そして……まるで安心したと言わんばかりにその場に身体を崩し、もう、ピクリとも動かなくなりました。
初めて夢うさぎに来た時、私は夢魔について「ウィルスのようなもの」だという説明を受けた覚えがあります。
だから、夢魔を祓うのは病気を治すのと同じこと。
私もそう思っていたし、皆がその認識で治療に当たっていると、当たり前に思ってきました。
夢月くんはそうじゃなかった。
できることなら、夢魔とも対話したい。
それが彼の心の底にある想いで……だからこそ夢魔に止めを刺すのを躊躇っていたのでしょう……。
夢月くんは苦しみ横たわる夢魔の頭に手を這わせて行きます。
彼の目はヒーローを見る時のキラキラした目とは違っていて……
真ん丸な目で、ただ"凄いもの"に釘付けにされている。そんな印象を受けました。
夢魔を取り囲むようにグルグルと回転を始めました……!
最後には……何も見えなくなりました。
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