15節「明日を照らす光 2」
文字数 1,791文字
これが初めてのこと。
今までの「目覚めたらそこにいた」とは
全然違う、不思議な感覚です。
ワープというものが現実になったら、
こういう感じなんでしょうか……。
突き刺さっています。
これがヨウタくんの欲望を反映した世界。
でもその多くが壊れたり欠けたりしてしまっていて……どこか痛々しい雰囲気です……。
夢月くんが指し示した方へ向かって、
私たちは走り出しました。
患者や夢魔の位置をある程度知覚できる。
そう施術の前に吏星さんが教えてくれました。
そして同化した私がいれば、夢月くんでも
間違いなくそれが可能だろうと。
自分の成果だとは言いません。
いつだって周りを褒めて、他人の
おかげだと言い切ります。
だからこそ……
他人の私が彼の良いところを見てあげたい。
夢月くんが迷いを振り切った今だからこそ、
余計にそう思えるんです。
気負いすぎてしまったかもしれない。
私独りでは、
夢魔の駆除は行えない。
2人だからこそ、
今こうして自信を持って立ち向かえている。
誰も否定しない夢月くんらしい言葉に、
私はつい笑みを零してしまいます。
とびっきりの笑顔で夢月くんに飛びつきました。
夢魔に憑かれる苦痛は私にも理解できますが、
彼は子供独りで私以上のものを味わっているんです。
心細くないわけがありません……。
ヨウタくんとそちらに向かって駆け出しました。
よく見るとそれは、大きなお母さんの写真。
これは目立った欠損もなく、綺麗なまま保たれています。
私の気のせい、でしょうか。
自分の夢の世界では気持ちに正直になれるはず。
隠し事をしているわけはないんですから。
夢月くんは真剣な面持ちで剣を現出し、構えます。
いよいよ夢魔との戦いの幕開けです……。
――俺が、俺達が……
ヨウタを……守る……!
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