1節「”夢うさぎ”の人々 3」
文字数 1,560文字
ご老人のオーダーを取りに行っています。
話の内容は私にも漏れ聞こえてきました。
孫が私のためにってわざわざ遠くから
送ってくれてねぇ。
孫は昔から手先が器用でねぇ…。
こんなこともできるようになったんだねぇ。
来店される方も少なくありません。
そして何でも一生懸命聞く夢月くんは、
そんな方々からすごく人気があります。
寂しさを抱えた人たちの心を打つようです。
そのおかげで、このお店は常連のお客さんが
非常に多いお店に成長しました。
そうだとしたら嬉しくて……
……泣けてきちゃうねぇ。
なろうとしてしまいます……。
スマホを取りに走り去ってしまいました……。
夢月くんがすれ違い……。
吏星さんは「またか」という顔をしています……。
私にいつも通りの指示を飛ばします。
私もそれを慣れた流れでこなすのですが……
今日はふとその"いつも通り"に1つの疑問が湧いてきました。
その裏で、どんなに困ったお客さんが来ても
邪険にしたことはありません。
そのことについて、聞いてみたくなったのです。
その問い掛けに対して吏星さんは、
想像通りの答えを私にくれました。
逆に吏星さんの、最も素晴らしいところの1つでもあると断言できます。
カフェ夢うさぎは閉店します。
夜営業の要望もあるのだけれど、
それは理由があってできません。
書類を数枚手に取り、バインダーに挟みます。
ほんの少しだけ顔を顰めたのが分かりました。
"夢うさぎ亭"の夜が始まります。
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