15節「明日を照らす光 1」
文字数 1,748文字
夢月くんが夢入りをする。
夢月くんは自信を取り戻したとは言え、
まだトラウマを完全に払拭できたわけではないはず。
そんな彼をそばで支えることができる。
その喜びを、私は改めて噛み締めました。
けれど、そのお母さんの言葉にも夢月くんは怯ことなく、自信と決意に満ち満ちた表情だけで答えます。
この場にいる皆が、これで同じ想いを共有できたと思います。
ですが、だからこそもう失敗は許されません。
私たちは、前向きな気持ちをより引き締めて、治療室に向かいます……!
前に見た時より顔が青冷めていて、息も絶え絶えです。
身体にも不調や痛みが出ているかもしれません。
物凄く寂しそうで怯えた顔をしています。
本当は今すぐにでも会わせてあげたいけれど……
私たちは、今は彼の治療について最善を選ばなければなりません。
今のヨウタくんがお母さんに会ってしまうことで壊れかけた彼の心がどうなってしまうか分からない。
現状維持で治療に臨むことが、私たちの下した決定でした。
ヨウタくんは黙ってしまいます。
まるで「もう自分は元気になれない」と、
悟ってしまっているかのようでした。
でも、それは違います。
その内容を、子供である彼に伝えることは
きっとできないけれど……
"気持ち"はきっと、彼の心にも届くはず。
夢月くんがすごく驚いた顔で、
ヨウタくんの方を見ました。
前の夢入りの時の記憶が残っているみたいです。
ですが夢月くんにはそれが何か引っかかるようで……?
記憶と実際起きたことに食い違いがあるのでしょうか?
けれど夢月くんの表情を見れば、
それも良い方向に解決したことは伝わってきます。
これで全てが良い方向に進むはず!
そしてこれがヨウタくんへの最後の施術。
1つになった私たちの挑戦が始まります……!
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