1節「”夢うさぎ”の人々 1」

文字数 1,101文字

5月初旬。暖かい日を超え、

少し暑く感じる日が多くなってきた今日この頃。
ここは香澄市滝明町にある"カフェ夢うさぎ"

私、天崎 そら(あまさき そら)

ここで働くようになって半年。


今日も朝から開店準備作業に

忙しく動き回っています。

ふう……

これはここに置いておけば良しと。

このお店には私の他に

3人のウェイターさんが働いています。


それぞれが料理の準備やお店の

セッティングを進めてくれているんですよ。

えっと、次は……

だから朝の雑用は私の仕事。

……いつもは、ですけど。

天崎、悪いが店内の掃除を優先して

くれないか。人手が足りてない。

あっ、はい!
振り回してすまんな。

早乙女には後できつく言っておく。

アハハ……

そういう日もありますよ……。

最初はちょっと恐い感じがして苦手だったけど、

それは見た目だけ。


本当はすごく優しい人だと知りました。

今ではとても信頼しています。

夢月ちゃん、そらちゃんが来てから

ちょっと気が抜けてる気がするなぁ。

やっぱり後輩ができると

雑用なんてやりたくなくなるのかな?

おい、そういうお前はいつまで

鏡を見ている気だ紫吹。

手伝え。今すぐ準備を手伝え。
たまに……と言うか

いつも何を考えているのかよく分からない、

不思議な人です。

何言ってんの?

ファンを悲しませないようにするのが

僕の一番の仕事じゃない。

やかましい。

彼女達はお前を見れれば何でも満足だろうに。

吏星さんは表情を崩さず、蓮夜さんと

鏡の間に割って入って彼を睨みつけました。

無駄なことに時間をかける必要はない。

手伝え。

分かってないなぁ吏星は。

ああいう子達ほど細かい変化も

見過ごさないものなんだよ。

蓮夜さんも決してそれに動揺せず、

さも当然とばかりに身支度を続けます……。

たまには、常に完璧でいなきゃ

いけない僕のことも考えてよ。

そらちゃんもそう思うよね?
えっ、そ、そうですね?
蓮夜さんは、こう困ったタイミングで

私に話を振ってくることがたまにあり……


最近だいぶ慣れてきましたが、

対応にはまだ悪戦苦闘中です……。

(吏星さん、

いつになく良い切り返し……!)

論理的な吏星さんも、いつも蓮夜さんの

物言いには匙を投げがちなのですが……


今日はちょっと良い感じかもしれません!

フフッ、その着眼点は悪くないかも。

成長したねぇ吏星。

僕もこうやって頑張ってきた

甲斐があったってもんだよ。

そうかそれは良かった。

手伝え。即手伝え。今すぐ手伝え。

結局全く動じなかった蓮夜さんに

表情を崩さず立ち向かった吏星さん……。

ま、まぁまぁ2人とも……
この2人は仲が良いんだか悪いんだか、

時々分からない時があります……。

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登場人物紹介

天崎 そら(あまさき そら)(20)※一章時

主人公。人々を悪夢から救う"夢うさぎ亭"で働く一般女性。

自分よりも相手のことを優先する心優しい性格で、大抵のことは受け止めてしまう。

一章では夢うさぎでの経験から、自分の意見を言う勇気を持てるようになった。

(※本作では主人公の個人設定はフリーなため、定まった容姿は存在しません)

早乙女 夢月(さおとめ むつき)(19)※一章時

まだ夢の世界で夢魔を祓ったことがない半人前の夢想師。

前向きで明るく裏表がない天真爛漫な性格で、深く強く他人の気持ちに寄り添える豊かな人間性を持つ。

そのおかげで、夢の世界を現出するために必要な「心のパイプ」を繋ぐところまでは誰よりも完璧にこなすことができ、秘めたるポテンシャルは天才的。

しかし、その事実を本人はまだ自覚できないでいる。

宝生 吏星(ほうしょう りせい)(24)※一章時

夢の空間の現出を得意とする夢想師。

他人のことを真剣に考えすぎてしまう性分で根が優しい。

反面、冷静で効率主義かつ真顔で言葉遣いがきつい。そのため人に避けられやすく、本人も少し気にしている。

実直で真面目すぎる苦労人気質。不測の事態に陥ると熱くなりやすい一面も。

夢うさぎの実質的なリーダーとして振る舞っている。後輩である夢月の指導について、自分とあまりにタイプが違うことにかなり悩んでいるらしい。

紫吹 蓮夜(しぶき れんや)(不明)※一章時

夢魔の駆除を得意とする夢想師。

天性のルックスと王子様気質により何もしなくてもモテる美男子。

いつもニヤニヤとしていて、何を考えているのかよく分からない。

自分の身内をからかって遊ぶのが趣味で周りも手を焼いているが、他人が本心から嫌がることは絶対しないバランス感覚を持っているため、何故か憎まれない。

吏星とは付き合いが長く、お互いがお互いの"扱い方"を熟知している節がある。

ヨウタ(5)

一章の核となる少年。来年度から小学生。

ある理由で夢魔に憑かれてしまい、夢うさぎを訪れる。

幼稚園などに通えておらず、家に1人でいる時間が長い。

テレビやおもちゃを心の拠り所にしており、最近は特撮作品ブレイブテイカーがお気に入り。家で何度も繰り返し見ては元気を貰っている。

ヨウタの母(33)

一章に登場。

息子 ヨウタの悪夢を治すため、夢うさぎを訪れる女性。

夢想師の治療には原則本人しか招待されないが、ある理由から付き添いが認められている(ただし、治療の実態を知ることはできない)

佐藤 アキラ(さとう あきら)(30)

一章に登場。

悪夢の治療を受けに夢うさぎ亭を訪れる研究者。

仕事の重圧に負けまいと日々頑張っているが、家族の理解を得られないことに頭を悩ませている。

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