闘えわたし! 平和のために! ・14
文字数 1,845文字
思わず叫んだわたしだけれど。
でも、役立たずなのは、わたしも同じなんだ。
わたしもどちらかといえば攻撃戦力って、凪先輩が言っていたのに。
全然反撃の方法や余裕がない。
なにか良いアイデアをだしてもらえないかと、わたしはすがる気持ちで凪先輩の姿を目で探した。
ひとり離れて距離をとっていた凪先輩が、真剣な面持ちで右手を宙に舞わせた。
たちまち凪先輩の周囲で目に見える風の渦が起こり、いくつもの細い竜巻となって現れる。
すると、彼は予測していたように、風に飛ばされないように巨大な石のレリーフへ背中をぴったりとつけて口を開いた。
「へぇ。そんなことができるんだ。なんかカッコイイじゃない。でも、いまのぼくに通用するかなぁ」
あんな風にされちゃったら、彼を石の前から動かすことは難しそうだ。
それに、凪先輩は過去に、風の力で傷つけてしまったことがあると聞いている。
きっと人に向かっての殺傷力のある風は、抵抗があって起こせないだろう。
そう考えたわたしの想像通り、凪先輩の竜巻は一気に向かっていったけれど、レリーフに背を張りつけた彼を動かすことはできなかった。
一瞬眉をしかめるようにうつむき風に耐えた彼は、すぐに顔をあげ、口もとへ笑みを浮かべる。
あっという間に、凪先輩の周囲で細かい爆発が起こった。
凪先輩は身をひき、ぎりぎりのところで爆発を避ける。
そして、新たな竜巻を、自分の周りへ発生させていた。
凪先輩も精いっぱいの様子で、とてもわたしにアドバイスできる状態じゃない気がする。
彼は、そんな凪先輩からわたしのほうへ視線を向けると、勝ち誇ったように告げた。
「風使いの彼、なかなか強そうな人だけれど、いまのぼくには対抗できないよ。――ね? ぼくの能力のほうが高いじゃないかなぁ? だから、きみがぼくのほうへくるって言えば、もうやめてあげるよ」
「困った子だなぁ。きみ、坂本直紀 くんだよね。今日、本部にあった書類で確認してきたよ。組織に属さない代わりに力を使った迷惑行為はしないって、断った際に約束させられていたんじゃないの? 証拠がなくても複数の目撃者がいるってことで傷害罪や器物破損で警察を動かしてもいいんだよ」
笑みを浮かべて余裕をみせながら背後の大きな石のレリーフにもたれかかっていた彼は、急に耳もとへささやいてきた透流さんに驚き、その場から飛びのいた。
「誰だ! いったいどうやって……?」
驚愕の表情を浮かべた彼は、いつのまにか真横に立っていた透流さんを見つめる。
そりゃあ、驚いたことだろう。
いままで自分の周りには、誰も近づいてきた気配がなかったのに、いきなり話しかけられたのだから。
でも、わたしは目撃していた。
透流さんが何気に後ろからレリーフを通り抜けて、ゆるりと彼の横へとやってくるところを。
しばらく透流さんをみつめていた彼は、けれどすぐに態勢を整えたらしく、驚いた表情から先ほどまで浮かべていた笑みへと変える。
「ぼくの力は距離なんか関係ない。それに、この空気中に山ほど原料がある。何人やってきても尽きることなく、いくらでも使えるんだよ」
そう告げると同時に、彼は目を細めた。
瞬間、透流さんの周囲で起こるいくつもの爆発。
そして、その爆発の規模がどんどん大きくなる。
そのやりとりを見ていたわたしは、思わず悲鳴をあげそうになって、両手で口を押えたけれど。
避けるそぶりもみせない透流さんは、無数に起こる爆発の中心で、やわらかな笑みを浮かべながら無傷で佇んでいた。
「? なんで効かないんだよ!」
無邪気な笑みをたたえて小首をかしげた透流さんの様子に、どんどん焦ってくる彼――直紀くんは、じりじりと後退をはじめる。
呆気にとられながらも、わたしは頭の中で納得した。
ああ。
透流さんは、爆発物や爆風でさえも、するりと通り抜けられるんだぁ……。
直紀くんに対しては透流さん、ある意味、最強なのではなかろうか。
「本人に効かないのなら!」
急に直紀くんは、透流さんから巨大な石のレリーフへと視線を向けた。
じりじりと後退をしていた直紀くんは、レリーフの前から離れていたけれど、最初の位置で動いていなかった透流さんは、レリーフの真正面に立っている。
そう思った瞬間、レリーフの下部が、地面との境目に沿って一直線に爆発した。
でも、役立たずなのは、わたしも同じなんだ。
わたしもどちらかといえば攻撃戦力って、凪先輩が言っていたのに。
全然反撃の方法や余裕がない。
なにか良いアイデアをだしてもらえないかと、わたしはすがる気持ちで凪先輩の姿を目で探した。
ひとり離れて距離をとっていた凪先輩が、真剣な面持ちで右手を宙に舞わせた。
たちまち凪先輩の周囲で目に見える風の渦が起こり、いくつもの細い竜巻となって現れる。
すると、彼は予測していたように、風に飛ばされないように巨大な石のレリーフへ背中をぴったりとつけて口を開いた。
「へぇ。そんなことができるんだ。なんかカッコイイじゃない。でも、いまのぼくに通用するかなぁ」
あんな風にされちゃったら、彼を石の前から動かすことは難しそうだ。
それに、凪先輩は過去に、風の力で傷つけてしまったことがあると聞いている。
きっと人に向かっての殺傷力のある風は、抵抗があって起こせないだろう。
そう考えたわたしの想像通り、凪先輩の竜巻は一気に向かっていったけれど、レリーフに背を張りつけた彼を動かすことはできなかった。
一瞬眉をしかめるようにうつむき風に耐えた彼は、すぐに顔をあげ、口もとへ笑みを浮かべる。
あっという間に、凪先輩の周囲で細かい爆発が起こった。
凪先輩は身をひき、ぎりぎりのところで爆発を避ける。
そして、新たな竜巻を、自分の周りへ発生させていた。
凪先輩も精いっぱいの様子で、とてもわたしにアドバイスできる状態じゃない気がする。
彼は、そんな凪先輩からわたしのほうへ視線を向けると、勝ち誇ったように告げた。
「風使いの彼、なかなか強そうな人だけれど、いまのぼくには対抗できないよ。――ね? ぼくの能力のほうが高いじゃないかなぁ? だから、きみがぼくのほうへくるって言えば、もうやめてあげるよ」
「困った子だなぁ。きみ、
笑みを浮かべて余裕をみせながら背後の大きな石のレリーフにもたれかかっていた彼は、急に耳もとへささやいてきた透流さんに驚き、その場から飛びのいた。
「誰だ! いったいどうやって……?」
驚愕の表情を浮かべた彼は、いつのまにか真横に立っていた透流さんを見つめる。
そりゃあ、驚いたことだろう。
いままで自分の周りには、誰も近づいてきた気配がなかったのに、いきなり話しかけられたのだから。
でも、わたしは目撃していた。
透流さんが何気に後ろからレリーフを通り抜けて、ゆるりと彼の横へとやってくるところを。
しばらく透流さんをみつめていた彼は、けれどすぐに態勢を整えたらしく、驚いた表情から先ほどまで浮かべていた笑みへと変える。
「ぼくの力は距離なんか関係ない。それに、この空気中に山ほど原料がある。何人やってきても尽きることなく、いくらでも使えるんだよ」
そう告げると同時に、彼は目を細めた。
瞬間、透流さんの周囲で起こるいくつもの爆発。
そして、その爆発の規模がどんどん大きくなる。
そのやりとりを見ていたわたしは、思わず悲鳴をあげそうになって、両手で口を押えたけれど。
避けるそぶりもみせない透流さんは、無数に起こる爆発の中心で、やわらかな笑みを浮かべながら無傷で佇んでいた。
「? なんで効かないんだよ!」
無邪気な笑みをたたえて小首をかしげた透流さんの様子に、どんどん焦ってくる彼――直紀くんは、じりじりと後退をはじめる。
呆気にとられながらも、わたしは頭の中で納得した。
ああ。
透流さんは、爆発物や爆風でさえも、するりと通り抜けられるんだぁ……。
直紀くんに対しては透流さん、ある意味、最強なのではなかろうか。
「本人に効かないのなら!」
急に直紀くんは、透流さんから巨大な石のレリーフへと視線を向けた。
じりじりと後退をしていた直紀くんは、レリーフの前から離れていたけれど、最初の位置で動いていなかった透流さんは、レリーフの真正面に立っている。
そう思った瞬間、レリーフの下部が、地面との境目に沿って一直線に爆発した。