闘えわたし! 平和のために! ・12

文字数 1,101文字

「従順な後輩を、変な言葉で勧誘するのはやめていただきたい」

 そのとき。
 うっかり、彼の言葉に一気に言いくるめられそうになっていたわたしへ背をみせるように、凪先輩があいだへ立ちはだかった。

「凪先輩!」

 来てくれた嬉しさで思わず叫んだわたしを振り返り、凪先輩は睨みつけてきた。

「発信器をつけずに出歩くな!」

 ああ、紘一先輩に注意されたことを、ここでも言われちゃったよ。
 しゅんとうなだれたわたしから、凪先輩は目の前の彼へと視線を移す。
 すると、彼はひるむことなく凪先輩をみつめて口を開いた。

「変な言葉? 嘘じゃないだろう? 組織って、あっちこっちに散らばっている能力者を一カ所に集めて、その力を利用しようとしているだけじゃないのか。それとも、世間を騒がせないように隔離して監視をするためかなぁ」

 凪先輩は、一瞬黙りこむ。
 彼は口もとへ笑みを刻みこんで続けた。

「ほらみろ。言い返せないじゃないか」

 わたしは凪先輩の背中へ、おそるおそる声をかけた。

「その、凪先輩。詳しい説明がされないのは、やっぱり、あの彼の言う通り非公式の組織だからなんですか?」

 そう口にしながら問いかけの目を向けたわたしに、凪先輩は困ったような口調で告げた。

「世間では、まだ認められていない組織であることは確かだ。このような力を持つ者がいることが公になれば、混乱を招くことが明らかだからな。それに、各自持っている能力が違うために、組織の中でも完全な体制やカリキュラムが整っているわけではない。まだ、模索しながら始動をはじめて数年の組織といわれれば、そうだと答えるしかないだろう」

 そして、凪先輩は真面目な表情をわたしに向ける。

「だが、だからこそ、その組織を担っていく強力なメンバーが必要だと思っている。桂、きみも先陣を切るひとりになる気はないだろうか」

 とたんに、目の前の彼がはじけるように声をあげて笑った。

「きみこそ、先輩の言葉だからといって丸めこまれないようにしなきゃ。これからの高校生活、楽しいのはどっちだと思う? ぼくのほうへおいでよ。可愛いきみなら、ぼくは大歓迎だよ」

 笑顔を向けて可愛いだなんて。
 なんて嬉しいことを言ってくれるんだろう。

 思わず乙女心を刺激された瞬間。

「桂ちゃん! いつもオレが可愛いって伝えているのに、まだ物足りないわけ?」

 紘一先輩が頬を膨らませながら、留城也先輩とともに駆けてきた。

「おまたせ、桂ちゃん。――彼が今回の首謀者なの?」

 そう言うと、先輩たちはわたしと並んで、目の前の彼へと視線を向けた。

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