闘えわたし! 平和のために! ・5
文字数 1,490文字
そんなに時間も経っていないけれど、もう振り返っても戻る道がわからないくらいに迷路へ入りこんだ頃。
「でもさぁ、桂ちゃん」
わたしの腕に自分の腕を絡めながら、前を歩いている男子ふたりに聞こえないような小さな声で、晴香がささやいてきた。
「いままでクラスで話したことのない男子と、急に迷路に放りこまれても、会話なんてないよね。これで親睦が深まるのかなぁ?」
「う~ん……」
まだ答えようがなかったけれど、もしかしたら、迷路からでたあとに「面白かったね」とかいうような会話がでてきて弾むのかも。
なんてことを前向きにぼんやりと考えていたら、晴香が先に言葉を続けた。
「クジで決まった班分けだし。――ねえ、桂ちゃん。クラスの中で好みの男子はいるの?」
いきなり直球で訊いてきた晴香に、驚いたわたしはあたふたと答える。
「え? いや、まだ。全然どんな人たちがいるかわからない状態だから、今日のクラス会でいろいろ話ができたらいいかなって感じで」
「だよねぇ」
そういいながらも、晴香はさらにわたしを引っ張りよせ、耳もとでささやいた。
「桂ちゃんは、クラスの男子に目を向ける前に、入学早々恰好良い生徒会長に、追試勉強でかかりきりになってもらっちゃったものね。桂ちゃんの中にあるハードルがきっと高くなっているんじゃない?」
そして楽しそうに笑った晴香へ、わたしは困った表情を向けた。
いえいえ、顔は良くても、凪先輩は性格が好みではないのですよ。
でも、最初は、みてわからない性格よりパッとみてわかる容姿に目が向くのは仕方がないかも。
そして、整った顔立ちの凪先輩や紘一先輩と行動をともにした一週間で、目が肥えた可能性があるのも否めない。
わたしは改めて、前を歩く男子ふたりに目を向けた。
バスケ部に入ったと噂できいている柳瀬くんは、ひょろっと身長が高い男子。
反対に藤井くんは背が低めで吹奏楽部所属ときく。
どちらも、とっつきにくそうな雰囲気ではないけれど、共通の話題がないと話しかけるタイミングはつかめなさそう。
なんて考えながら、ふたりの後ろ姿を眺めつつ、わたしは晴香へ返事をした。
「そうでもないよ。たしかに先輩たちは恰好良いと思うけれど、とくにわたしの好みってわけでもないし」
そう口にしたとたん、急に晴香がわたしの顔をのぞきこんで、少し照れたような笑みを口もとへ浮かべた。
「良かったぁ。桂ちゃんと好みがぶつからなくて。――わたしはほら、ねえ。あとから思いだしても、やっぱり恰好良いのよねぇ。好みっていうか。――あの留城也先輩が……」
ああ、晴香の話は、そこへいくわけなのね。
それに、そうなのか。晴香はかなり留城也先輩に本気なんだ。
わたしは、本当に好みがぶつからなくて良かったと胸をなでおろす。
やっぱり、親友同士で好きな相手がぶつかっちゃったら悲惨だものね。
そうなると、親友としてはどうにかして手助けしたいと思っちゃったりするんだけれど。
――はたして晴香は、二年のあいだで噂がある留城也先輩の電波くんを知っているのだろうか?
噂を知らないのであれば、うかつにいわないほうがいい気がするし。
そこまで考えたとき、前を歩いていた男子ふたりが振り返って声をかけてきた。
「なあ、ここで大きく左右に道が分かれてんだけれど、どっちへ行く?」
いわれて慌てて晴香と前を向く。
それまでは考えることなく後ろをついて歩いていたけれど。そろそろ迷路に本気で参加しないと、同じ班として申しわけない。
「でもさぁ、桂ちゃん」
わたしの腕に自分の腕を絡めながら、前を歩いている男子ふたりに聞こえないような小さな声で、晴香がささやいてきた。
「いままでクラスで話したことのない男子と、急に迷路に放りこまれても、会話なんてないよね。これで親睦が深まるのかなぁ?」
「う~ん……」
まだ答えようがなかったけれど、もしかしたら、迷路からでたあとに「面白かったね」とかいうような会話がでてきて弾むのかも。
なんてことを前向きにぼんやりと考えていたら、晴香が先に言葉を続けた。
「クジで決まった班分けだし。――ねえ、桂ちゃん。クラスの中で好みの男子はいるの?」
いきなり直球で訊いてきた晴香に、驚いたわたしはあたふたと答える。
「え? いや、まだ。全然どんな人たちがいるかわからない状態だから、今日のクラス会でいろいろ話ができたらいいかなって感じで」
「だよねぇ」
そういいながらも、晴香はさらにわたしを引っ張りよせ、耳もとでささやいた。
「桂ちゃんは、クラスの男子に目を向ける前に、入学早々恰好良い生徒会長に、追試勉強でかかりきりになってもらっちゃったものね。桂ちゃんの中にあるハードルがきっと高くなっているんじゃない?」
そして楽しそうに笑った晴香へ、わたしは困った表情を向けた。
いえいえ、顔は良くても、凪先輩は性格が好みではないのですよ。
でも、最初は、みてわからない性格よりパッとみてわかる容姿に目が向くのは仕方がないかも。
そして、整った顔立ちの凪先輩や紘一先輩と行動をともにした一週間で、目が肥えた可能性があるのも否めない。
わたしは改めて、前を歩く男子ふたりに目を向けた。
バスケ部に入ったと噂できいている柳瀬くんは、ひょろっと身長が高い男子。
反対に藤井くんは背が低めで吹奏楽部所属ときく。
どちらも、とっつきにくそうな雰囲気ではないけれど、共通の話題がないと話しかけるタイミングはつかめなさそう。
なんて考えながら、ふたりの後ろ姿を眺めつつ、わたしは晴香へ返事をした。
「そうでもないよ。たしかに先輩たちは恰好良いと思うけれど、とくにわたしの好みってわけでもないし」
そう口にしたとたん、急に晴香がわたしの顔をのぞきこんで、少し照れたような笑みを口もとへ浮かべた。
「良かったぁ。桂ちゃんと好みがぶつからなくて。――わたしはほら、ねえ。あとから思いだしても、やっぱり恰好良いのよねぇ。好みっていうか。――あの留城也先輩が……」
ああ、晴香の話は、そこへいくわけなのね。
それに、そうなのか。晴香はかなり留城也先輩に本気なんだ。
わたしは、本当に好みがぶつからなくて良かったと胸をなでおろす。
やっぱり、親友同士で好きな相手がぶつかっちゃったら悲惨だものね。
そうなると、親友としてはどうにかして手助けしたいと思っちゃったりするんだけれど。
――はたして晴香は、二年のあいだで噂がある留城也先輩の電波くんを知っているのだろうか?
噂を知らないのであれば、うかつにいわないほうがいい気がするし。
そこまで考えたとき、前を歩いていた男子ふたりが振り返って声をかけてきた。
「なあ、ここで大きく左右に道が分かれてんだけれど、どっちへ行く?」
いわれて慌てて晴香と前を向く。
それまでは考えることなく後ろをついて歩いていたけれど。そろそろ迷路に本気で参加しないと、同じ班として申しわけない。