いきなり試験に突入です?!・4
文字数 1,804文字
いままでからは考えられないさっぱりとした口調で、宮城先生は、わたしに言った。
「ふぅん。試験に対して消極的だと聞いていたわりには頑張るじゃない。負けん気があって、時間が経つほどに粘り強さが出そうなタイプ」
そこまで口にした先生は、妖艶に微笑んだ。
「まあ、ぎりぎり合格点ってところかしら。以上で、私からの試験終了を宣言します」
どういうことでそうなったのか、理解できないわたしが呆然と先生を見上げていると、後ろから拍手が聞こえた。
振り向くと、凪先輩が立ちあがりながら、笑顔で言った。
「桂。精神圧迫試験のクリア、おめでとう」
精神圧迫試験?
なに、それ?
怪訝な顔で振り返ったわたしへ、凪先輩が言葉を続けた。
「最初にこの試験を必ず受けさせられるんだ。精神的に弱い者は、まずここで落とされる。ここをクリアした者が、二次試験に進めるんだ。でも、そんなに厳しいものでもなかっただろう?」
にやりとした笑みを浮かべながら、凪先輩がさらりと告げる。
でも。
それって、なんだかひどい試験じゃない?
けれど、宮城先生がわたしへ向かって口を開いた。
「こういうメンバーには、強い精神を持つ者じゃなければ、あとが大変だから。次の試験も頑張りなさいね」
サバサバとした口調の宮城先生は、普段とは打って変わった人柄のようだった。
優しい声音でわたしにそうささやくと、後ろの席にいる凪先輩のほうへと視線を向ける。
「今日は本当に放課後、デートなのよ。試験時間延長で、デートをキャンセルするわけにはいかないものねぇ」
言葉の最後に甘ったるいハートマークをつけて、凪先輩へと投げキッスを飛ばす。
宮城先生は、ちょっと困ったような表情の凪先輩と笑顔で見送る紘一先輩へ、ひらひらと手を振って教室を出ていった。
ああ。
先生は本当にデートを潰したくなかったんだぁ。
そう思ったとき、休み時間を告げるチャイムが鳴った。
教室から宮城先生の姿が見えなくなったあと、わたしは力が抜けたように、椅子へと座りこんだ。
そのまま机の上に両手を伸ばしてつっ伏す。
「終わったぁ。どうにか終わった。でも、これがあと何回かあるんだ……」
わたしの言葉の最後が、消え入るように小さくなる。
脱力しているわたしのそばへ、スキップするように紘一先輩が駆け寄ってきた。
「やったね! 桂ちゃん。この調子で、どんどんクリアしていこう!」
楽しげな紘一先輩の後ろから、さすがに口もとへ笑みを浮かべた凪先輩がやってきて、言葉を続けた。
「頑張ったな」
凪先輩にそう言われて、わたしは改めて、自分の能力を活かせるように頑張ってみようかなと心に決める。
ならば、やっぱり試験に受かりたい。
そう考えたとき、ドアが開いていた教室の入り口から、留城也先輩がふらりと姿をみせた。
目ざとく見つけた紘一先輩が声をかける。
「遅いって、留城也。もう終わっちゃったよ。なんですぐに来なかったのさ。桂ちゃん、無事クリアだよ」
紘一先輩の言葉を聞きながら、留城也先輩は、ちらりとわたしを見る。
そして、ぼそりと口にした。
「精神圧迫試験だろう? わざわざギャラリーを増やして、受験者へプレッシャーの追い打ちをかけることもねぇだろ」
「留城也には、応援してやろうって気持ちがないの?」
「落ちるときは落ちるんだよ。一回目の試験で落ちるような奴を見に来てどうする? 時間の無駄」
そう言うと、さっさと留城也先輩は教室から出ていった。
最後にやってきて一番に帰ってしまった留城也先輩を、呆気にとられて見送るわたしへ、紘一先輩が、顔をのぞきこむように声をかけてくる。
「留城也の言うことは気にしない! あ、良ければオレ、桂ちゃんがなにか練習したいことがあったらつきあうよ。次の試験も、桂ちゃんに受かってもらいたいもんなぁ」
紘一先輩がどんどん話しかけてくるから、わたしの思考はすぐに違うことへ移ってしまったけれど。
凪先輩も紘一先輩も、わたしの試験に対して応援してくれている。
そして、あとでゆっくり考えてみたら、留城也先輩もわたしの邪魔にならないように、あの場は遠慮をしたのではないかと気がついた。
もしかして留城也先輩は、意外と悪い人ではないのかもしれない。
「ふぅん。試験に対して消極的だと聞いていたわりには頑張るじゃない。負けん気があって、時間が経つほどに粘り強さが出そうなタイプ」
そこまで口にした先生は、妖艶に微笑んだ。
「まあ、ぎりぎり合格点ってところかしら。以上で、私からの試験終了を宣言します」
どういうことでそうなったのか、理解できないわたしが呆然と先生を見上げていると、後ろから拍手が聞こえた。
振り向くと、凪先輩が立ちあがりながら、笑顔で言った。
「桂。精神圧迫試験のクリア、おめでとう」
精神圧迫試験?
なに、それ?
怪訝な顔で振り返ったわたしへ、凪先輩が言葉を続けた。
「最初にこの試験を必ず受けさせられるんだ。精神的に弱い者は、まずここで落とされる。ここをクリアした者が、二次試験に進めるんだ。でも、そんなに厳しいものでもなかっただろう?」
にやりとした笑みを浮かべながら、凪先輩がさらりと告げる。
でも。
それって、なんだかひどい試験じゃない?
けれど、宮城先生がわたしへ向かって口を開いた。
「こういうメンバーには、強い精神を持つ者じゃなければ、あとが大変だから。次の試験も頑張りなさいね」
サバサバとした口調の宮城先生は、普段とは打って変わった人柄のようだった。
優しい声音でわたしにそうささやくと、後ろの席にいる凪先輩のほうへと視線を向ける。
「今日は本当に放課後、デートなのよ。試験時間延長で、デートをキャンセルするわけにはいかないものねぇ」
言葉の最後に甘ったるいハートマークをつけて、凪先輩へと投げキッスを飛ばす。
宮城先生は、ちょっと困ったような表情の凪先輩と笑顔で見送る紘一先輩へ、ひらひらと手を振って教室を出ていった。
ああ。
先生は本当にデートを潰したくなかったんだぁ。
そう思ったとき、休み時間を告げるチャイムが鳴った。
教室から宮城先生の姿が見えなくなったあと、わたしは力が抜けたように、椅子へと座りこんだ。
そのまま机の上に両手を伸ばしてつっ伏す。
「終わったぁ。どうにか終わった。でも、これがあと何回かあるんだ……」
わたしの言葉の最後が、消え入るように小さくなる。
脱力しているわたしのそばへ、スキップするように紘一先輩が駆け寄ってきた。
「やったね! 桂ちゃん。この調子で、どんどんクリアしていこう!」
楽しげな紘一先輩の後ろから、さすがに口もとへ笑みを浮かべた凪先輩がやってきて、言葉を続けた。
「頑張ったな」
凪先輩にそう言われて、わたしは改めて、自分の能力を活かせるように頑張ってみようかなと心に決める。
ならば、やっぱり試験に受かりたい。
そう考えたとき、ドアが開いていた教室の入り口から、留城也先輩がふらりと姿をみせた。
目ざとく見つけた紘一先輩が声をかける。
「遅いって、留城也。もう終わっちゃったよ。なんですぐに来なかったのさ。桂ちゃん、無事クリアだよ」
紘一先輩の言葉を聞きながら、留城也先輩は、ちらりとわたしを見る。
そして、ぼそりと口にした。
「精神圧迫試験だろう? わざわざギャラリーを増やして、受験者へプレッシャーの追い打ちをかけることもねぇだろ」
「留城也には、応援してやろうって気持ちがないの?」
「落ちるときは落ちるんだよ。一回目の試験で落ちるような奴を見に来てどうする? 時間の無駄」
そう言うと、さっさと留城也先輩は教室から出ていった。
最後にやってきて一番に帰ってしまった留城也先輩を、呆気にとられて見送るわたしへ、紘一先輩が、顔をのぞきこむように声をかけてくる。
「留城也の言うことは気にしない! あ、良ければオレ、桂ちゃんがなにか練習したいことがあったらつきあうよ。次の試験も、桂ちゃんに受かってもらいたいもんなぁ」
紘一先輩がどんどん話しかけてくるから、わたしの思考はすぐに違うことへ移ってしまったけれど。
凪先輩も紘一先輩も、わたしの試験に対して応援してくれている。
そして、あとでゆっくり考えてみたら、留城也先輩もわたしの邪魔にならないように、あの場は遠慮をしたのではないかと気がついた。
もしかして留城也先輩は、意外と悪い人ではないのかもしれない。