闘えわたし! 平和のために! ・2
文字数 1,329文字
わたしが呆気にとられているあいだに、相好を崩した紘一先輩は言葉を続けた。
「いまの彼って、桂ちゃんと同じ中学出身じゃないよね?」
「――はい、違いますけれど……」
「私服の桂ちゃんのことを可愛いって思っていたみたいだね。あと、向こうも遊びにいく途中だったんだな。頭の中はイベントが楽しくなればいいなぁって言葉で埋まってた」
「紘一先輩! また他人の心を勝手に読むなんて」
あの彼が、わたしのことを可愛いって?
そのとびきり嬉しい言葉を噛みしめる暇もなく食ってかかりかけたわたしを、両手をあげて制しながら、素早く紘一先輩が言葉をはさんできた。
「桂ちゃん。昨日、きみにいわれてからオレは反省したんだよ。この場で桂ちゃんと話し合うために、留城也にも納得してもらって、この場を離れてもらったんだ」
ふたたび神妙な顔つきになりながら口にした紘一先輩の態度に、勢いをそがれたわたしは黙りこむ。
「いままでの女の子たちって、オレの母親も含めて、オレの能力自体を気味悪がっていたんだよね。桂ちゃんもそれまでの女の子たちと同じだと思って、メンバー選出の邪魔をしていたんだけれど。きみは違った。桂ちゃんは能力を否定するんじゃなくて、その使い方に文句をいってきたんだよね。だからオレは反省したんだ」
紘一先輩の言葉を聞きながら、わたしはだんだんと嬉しくなった。
昨日わたしがいいたかったこと、うまく紘一先輩に伝わったってこと?
だったら喜ばしいことだ。
なんて考えるわたしは、単純だろうか。
「物心ついたときから中途半端に他人の心を読めるばかりに、誰も自分の苦しみは理解できないと意地になって、表面的な感情に振りまわされていたのかもしれない。桂ちゃんみたいに理解してくれようとする人が、もっといたのかもしれないのにね。――オレの母親も口にだして伝えてくれたら、その人のさらに奥にある心の言葉に耳をかたむけようと思ったかもしれないな」
静かな口調で、そう続けた紘一先輩。
そうか。
お母さんのことも絡むから、わたしに伝える言葉を留城也先輩に聞かれたくなかったのだろうか。
やっと紘一先輩と意見が一致して、これからうまく仲間としてやっていける。
そんな気がして、笑顔で大きくうなずこうとしたわたしへ、紘一先輩はにっこりと微笑みながら告げた。
「だから桂ちゃん、やっぱりオレと付き合ってよ。桂ちゃんがメンバーに選ばれたら、ずっとオレと一緒に行動もできる。オレが正しい方向へ進めるように、桂ちゃんがそばで見守っていて欲しいなぁって思うんだ」
「それとこれとは、話が別だと思うんですが!」
電車の中だってわかっているけれど、思わずわたしは叫んだ。
離れたところにいた留城也先輩が警戒するようにこちらを向いて、そのままゆっくり近寄ってくる。
本当に紘一先輩、反省しているの?
睨みつけたわたしに対して、紘一先輩はヘロリと笑顔を浮かべた。
「電車の中で大声をだしたらダメだよ。桂ちゃん」
ああ、その笑み。
やっぱり紘一先輩は根本的なところが変わっていない。
すぐに変われといっても無理なことなのかもしれないけれど。
「いまの彼って、桂ちゃんと同じ中学出身じゃないよね?」
「――はい、違いますけれど……」
「私服の桂ちゃんのことを可愛いって思っていたみたいだね。あと、向こうも遊びにいく途中だったんだな。頭の中はイベントが楽しくなればいいなぁって言葉で埋まってた」
「紘一先輩! また他人の心を勝手に読むなんて」
あの彼が、わたしのことを可愛いって?
そのとびきり嬉しい言葉を噛みしめる暇もなく食ってかかりかけたわたしを、両手をあげて制しながら、素早く紘一先輩が言葉をはさんできた。
「桂ちゃん。昨日、きみにいわれてからオレは反省したんだよ。この場で桂ちゃんと話し合うために、留城也にも納得してもらって、この場を離れてもらったんだ」
ふたたび神妙な顔つきになりながら口にした紘一先輩の態度に、勢いをそがれたわたしは黙りこむ。
「いままでの女の子たちって、オレの母親も含めて、オレの能力自体を気味悪がっていたんだよね。桂ちゃんもそれまでの女の子たちと同じだと思って、メンバー選出の邪魔をしていたんだけれど。きみは違った。桂ちゃんは能力を否定するんじゃなくて、その使い方に文句をいってきたんだよね。だからオレは反省したんだ」
紘一先輩の言葉を聞きながら、わたしはだんだんと嬉しくなった。
昨日わたしがいいたかったこと、うまく紘一先輩に伝わったってこと?
だったら喜ばしいことだ。
なんて考えるわたしは、単純だろうか。
「物心ついたときから中途半端に他人の心を読めるばかりに、誰も自分の苦しみは理解できないと意地になって、表面的な感情に振りまわされていたのかもしれない。桂ちゃんみたいに理解してくれようとする人が、もっといたのかもしれないのにね。――オレの母親も口にだして伝えてくれたら、その人のさらに奥にある心の言葉に耳をかたむけようと思ったかもしれないな」
静かな口調で、そう続けた紘一先輩。
そうか。
お母さんのことも絡むから、わたしに伝える言葉を留城也先輩に聞かれたくなかったのだろうか。
やっと紘一先輩と意見が一致して、これからうまく仲間としてやっていける。
そんな気がして、笑顔で大きくうなずこうとしたわたしへ、紘一先輩はにっこりと微笑みながら告げた。
「だから桂ちゃん、やっぱりオレと付き合ってよ。桂ちゃんがメンバーに選ばれたら、ずっとオレと一緒に行動もできる。オレが正しい方向へ進めるように、桂ちゃんがそばで見守っていて欲しいなぁって思うんだ」
「それとこれとは、話が別だと思うんですが!」
電車の中だってわかっているけれど、思わずわたしは叫んだ。
離れたところにいた留城也先輩が警戒するようにこちらを向いて、そのままゆっくり近寄ってくる。
本当に紘一先輩、反省しているの?
睨みつけたわたしに対して、紘一先輩はヘロリと笑顔を浮かべた。
「電車の中で大声をだしたらダメだよ。桂ちゃん」
ああ、その笑み。
やっぱり紘一先輩は根本的なところが変わっていない。
すぐに変われといっても無理なことなのかもしれないけれど。