どうやら歓迎されていないようです・2
文字数 1,692文字
明るさに慣れてきた視界に飛びこんできたものは、教卓の足もとへこちら向きに置かれていた一台のラジコンカー。
入ったときには気づかなかった。
「――え? なんでこんなものが学校にあるの?」
わたしのつぶやきを合図にしたように、ラジコンカーがピクリと反応した。
そして、一気に走りだし、わたしのほうへ向かってくる。
慌ててわたしは抱えこんでいたカバンを放りだすと横へ転がった。
前後に並んだ机と回転椅子のあいだへ身を滑りこませる。
ラジコンカーは、障害のなくなった通路を勢いよく走り過ぎ、教室の一番後ろの壁にぶつかる直前にピタリと止まった。
ゆっくりとタイヤが方向を変え、ラジコンカーはそろりとバックする。
まるで、本当に人が乗っているかのように繊細な動きで向きを変えると、ラジコンカーはヘッドライトでわたしを照らしだした。
うそ?
こっちを狙ってくる気だ!
突進してくるラジコンカーにぶつかる直前、どうにかわたしは、ぐらぐらと回る椅子の上へとよじ登る。
足を引きあげた瞬間に、ラジコンカーはつま先をかすって通り過ぎた。
通り過ぎたラジコンカーが、また向きを変え、わたしのほうを狙い定める。
けれど、さすがに椅子を登る機能はついていないようだ。
いつでも突っ込めるぞという威圧感をみなぎらせ、ラジコンカーは沈黙している。
そのあいだに、わたしは必死で、この状況から逃れる手を考えた。
なにかない?
なにかないの?
無意識に、どのくらいの時間がたったのだろうと、腕時計に目を走らせる。
けれど、時計の針は、相変わらず止まったままだ。
そのとき、わたしは腕に、もうひとつの腕時計型通信機をはめていることに気がついた。
そうだ、これがあったじゃない!
迷うことなく、透流さんから教えられた通りに横についたボタンを押しながら、わたしは通信機へ向かって叫んだ。
「助けて! 凪先輩ぃ!」
これで、凪先輩の持っている受信機に、わたしの叫び声が届いたはず。
きっと凪先輩は、表示されている場所を確認して、助けに来てくれるに違いない。
そう考えたわたしは、ちょっとパニックから立ち直ったと思った瞬間。
開け放していた教室の入り口から、白っぽい影がひとつ、ふわりと入りこんできた。
凪先輩じゃない。
いくらなんでも、こんなに早く来れるわけがない。
それに、その小ささと空中へ浮かぶ影に、お化けか人魂かと思ったわたしは、心臓がどきりと大きく跳ねる。
けれど、徐々に目が慣れてきて、空中に停止するように浮かんでいるものの輪郭がはっきりしてきた。
それがラジコンのヘリだとわかり、別の震えが全身に起こる。
椅子の上によじ登ったわたしに対してラジコンカーが使えないとわかったとたんに、空中から攻撃するものに変えてきたんだ。
それができるってことは、――これを使っている人は、どこからかわたしを見ているんだ!
気づいた瞬間に、ラジコンヘリがわたしに向かって突っ込んできた。
慌てて頭を抱えこみながら、体勢を低くする。
頭の上を通り過ぎる風を感じて、わたしは、おそるおそる目をあげてヘリを探した。
通り過ぎたヘリは、大きく旋回しながら、わたしのほうへと軌道を修正する。
どうしよう!
椅子から飛びおりて走って逃げたら、ヘリに追いつかれるのだろうか?
廊下へ飛びだしてドアを閉めたら、逃げ切れるだろうか?
わたしは実行するつもりで、椅子の上からそろりと片足を床へとおろす。
そのとたんに、ラジコンカーが動きに合わせてタイヤの向きを変えた。
――? ラジコンを操っているのは、ひとりじゃないの?
ひとりで同時にラジコンカーもヘリも操れないよね?
ラジコンを使って、電気を消して、コンピューターの画面を全部つけて。
わたしひとりを恐がらせながら、きっと集団で攻撃してきているんだ!
そう考えると、なぜか不意に腹が立ってきた。
思いきり暴れてやる。
なにか反撃をするものは……?
入ったときには気づかなかった。
「――え? なんでこんなものが学校にあるの?」
わたしのつぶやきを合図にしたように、ラジコンカーがピクリと反応した。
そして、一気に走りだし、わたしのほうへ向かってくる。
慌ててわたしは抱えこんでいたカバンを放りだすと横へ転がった。
前後に並んだ机と回転椅子のあいだへ身を滑りこませる。
ラジコンカーは、障害のなくなった通路を勢いよく走り過ぎ、教室の一番後ろの壁にぶつかる直前にピタリと止まった。
ゆっくりとタイヤが方向を変え、ラジコンカーはそろりとバックする。
まるで、本当に人が乗っているかのように繊細な動きで向きを変えると、ラジコンカーはヘッドライトでわたしを照らしだした。
うそ?
こっちを狙ってくる気だ!
突進してくるラジコンカーにぶつかる直前、どうにかわたしは、ぐらぐらと回る椅子の上へとよじ登る。
足を引きあげた瞬間に、ラジコンカーはつま先をかすって通り過ぎた。
通り過ぎたラジコンカーが、また向きを変え、わたしのほうを狙い定める。
けれど、さすがに椅子を登る機能はついていないようだ。
いつでも突っ込めるぞという威圧感をみなぎらせ、ラジコンカーは沈黙している。
そのあいだに、わたしは必死で、この状況から逃れる手を考えた。
なにかない?
なにかないの?
無意識に、どのくらいの時間がたったのだろうと、腕時計に目を走らせる。
けれど、時計の針は、相変わらず止まったままだ。
そのとき、わたしは腕に、もうひとつの腕時計型通信機をはめていることに気がついた。
そうだ、これがあったじゃない!
迷うことなく、透流さんから教えられた通りに横についたボタンを押しながら、わたしは通信機へ向かって叫んだ。
「助けて! 凪先輩ぃ!」
これで、凪先輩の持っている受信機に、わたしの叫び声が届いたはず。
きっと凪先輩は、表示されている場所を確認して、助けに来てくれるに違いない。
そう考えたわたしは、ちょっとパニックから立ち直ったと思った瞬間。
開け放していた教室の入り口から、白っぽい影がひとつ、ふわりと入りこんできた。
凪先輩じゃない。
いくらなんでも、こんなに早く来れるわけがない。
それに、その小ささと空中へ浮かぶ影に、お化けか人魂かと思ったわたしは、心臓がどきりと大きく跳ねる。
けれど、徐々に目が慣れてきて、空中に停止するように浮かんでいるものの輪郭がはっきりしてきた。
それがラジコンのヘリだとわかり、別の震えが全身に起こる。
椅子の上によじ登ったわたしに対してラジコンカーが使えないとわかったとたんに、空中から攻撃するものに変えてきたんだ。
それができるってことは、――これを使っている人は、どこからかわたしを見ているんだ!
気づいた瞬間に、ラジコンヘリがわたしに向かって突っ込んできた。
慌てて頭を抱えこみながら、体勢を低くする。
頭の上を通り過ぎる風を感じて、わたしは、おそるおそる目をあげてヘリを探した。
通り過ぎたヘリは、大きく旋回しながら、わたしのほうへと軌道を修正する。
どうしよう!
椅子から飛びおりて走って逃げたら、ヘリに追いつかれるのだろうか?
廊下へ飛びだしてドアを閉めたら、逃げ切れるだろうか?
わたしは実行するつもりで、椅子の上からそろりと片足を床へとおろす。
そのとたんに、ラジコンカーが動きに合わせてタイヤの向きを変えた。
――? ラジコンを操っているのは、ひとりじゃないの?
ひとりで同時にラジコンカーもヘリも操れないよね?
ラジコンを使って、電気を消して、コンピューターの画面を全部つけて。
わたしひとりを恐がらせながら、きっと集団で攻撃してきているんだ!
そう考えると、なぜか不意に腹が立ってきた。
思いきり暴れてやる。
なにか反撃をするものは……?