闘えわたし! 平和のために! ・13
文字数 1,782文字
「なんできみは、桂が今回のメンバー選出受験者だとわかったんだ?」
眉をひそめた凪先輩の言葉を聞いた彼は、あっさりと答える。
「ああ。ぼくは試験の内容まで聞いたうえで断ったんだ。そして、近くの高校で一週間の放課後居残り禁止令がでたという噂を知り、ひとりだけ一年が例外で残されているとわかったら、ピンとこないほうがおかしいでしょう?」
そして彼は、わたしの返事を促すように見つめてきた。
今回のことは、この彼が、わたしが受験者かどうかを確認したうえで、自分の仲間に引っ張りこむために起こした騒動だってことになるのだろうか。
それならば、わたしははっきり応えなければならない。
「――わたしは……」
たった一週間だけれど、いろんなことを考える機会が持てた濃厚な時間。
わたしは顔をあげ、目の前の彼をまっすぐに見つめ返して口を開いた。
「楽しいことばかりを考えて、大事なことを考えるのは先送りすれば楽だけれど。それでも自分の足で乗り越えなきゃいけないときがある。いまがきっと、わたしにとって考えるときなんだ。わたしに与えられた怪力は、きっと踏ん張るための力でもあるはずだ。組織に入るから、命令をされたから、決まりだから。それだけじゃあ、いいなりで流されて利用されちゃうだけだろうけれど、自分の中に強い想いを持てば、きっといろんなことに全力で立ち向かえることができると思う。そしてみんなで協力したら、きっと想いを強くすることができる。だからわたしは自分で決めた。あなたとじゃなく、凪先輩や紘一先輩や留城也先輩と一緒に闘うよ!」
「ああ、自分で怪力って言っちゃってるよ。ますます可愛い普通の女の子から遠ざかるね」
ほっとした表情になりながらも、声に笑いをにじませて、紘一先輩が混ぜ返す。
もう!
せっかく恰好良く決めたつもりなのに、茶々をいれないでよ!
わたしは、ちょっと恨みがましい目で紘一先輩を睨んだ。
すると、口もとへ笑みをたたえた凪先輩が穏やかに口にする。
「桂の考える普通とはなんだ? 特別な力を持っていたら、自信と前向きな意識を伴えばいい。それがおまえの普通となる」
そうだ。
きっと先輩方のそばにいたほうが、わたしは成長できる気がする。
「そうか、きみがこちら側へこないなんて残念だよ」
小さなため息をつきながら彼がそういったとたんに、わたしたちの足もとで爆発音が聞こえた。
皆、飛びのくように数歩後ろへさがる。
! ――なに?
なにが起こったの?
けれど、わかることはひとつ。
この爆発を起こしているのは、笑顔でわたしたちを眺めている目の前の彼だってことだ。
目の前にいるのは、爆発を起こしている敵。
相手の行動を止めようとするこの場合、わたしができることは……。
なにもないんじゃない?
投げつけるモノもなにも、このだだっ広い公園には、わたしが利用できるモノってないじゃない?
「かたまっているより散ったほうがいい」
自己嫌悪を感じながらも、とりあえずわたしは凪先輩に言われた通り、離れるように走って爆発から逃げる。
すると、わたしと同じ方向へ逃げだした留城也先輩や紘一先輩と目が合った。
おもむろに留城也先輩がわたしへささやく。
「リモコン操作ではないな。ってことは俺の出番じゃない。――適材適所だっていっただろ? 攻撃は凪先輩に任せりゃいいんだ」
「うわ、ヤバそう! 意識読んだら、爆発の元は酸素や水素だって。材料あふれてんじゃない? 逃げるが勝ちってことで」
留城也先輩のあとに続いて言った紘一先輩へ向かって、わたしは叫ぶ。
「そうはいっても、先輩方! 逃げ回るだけじゃなくてなにかしら対策を考えましょうよ! たとえば紘一先輩、向こうが考える爆破位置を読むとか!」
「無理!」
「なんで無理なんですか? 先輩にとっては息するくらいに簡単なことなんでしょう?」
わたしがそう口にしたとき、紘一先輩は「あ」と言った。
その瞬間に、足もとが爆ぜる。
大げさなくらいに吹っ飛んで転がったわたしの横へ、こちらも転がってきた紘一先輩が、頭を抱えながらぼそりと告げた。
「無理。だって読んでも、オレが口にだす前に爆発するんだもん」
「先輩の役立たず!」
眉をひそめた凪先輩の言葉を聞いた彼は、あっさりと答える。
「ああ。ぼくは試験の内容まで聞いたうえで断ったんだ。そして、近くの高校で一週間の放課後居残り禁止令がでたという噂を知り、ひとりだけ一年が例外で残されているとわかったら、ピンとこないほうがおかしいでしょう?」
そして彼は、わたしの返事を促すように見つめてきた。
今回のことは、この彼が、わたしが受験者かどうかを確認したうえで、自分の仲間に引っ張りこむために起こした騒動だってことになるのだろうか。
それならば、わたしははっきり応えなければならない。
「――わたしは……」
たった一週間だけれど、いろんなことを考える機会が持てた濃厚な時間。
わたしは顔をあげ、目の前の彼をまっすぐに見つめ返して口を開いた。
「楽しいことばかりを考えて、大事なことを考えるのは先送りすれば楽だけれど。それでも自分の足で乗り越えなきゃいけないときがある。いまがきっと、わたしにとって考えるときなんだ。わたしに与えられた怪力は、きっと踏ん張るための力でもあるはずだ。組織に入るから、命令をされたから、決まりだから。それだけじゃあ、いいなりで流されて利用されちゃうだけだろうけれど、自分の中に強い想いを持てば、きっといろんなことに全力で立ち向かえることができると思う。そしてみんなで協力したら、きっと想いを強くすることができる。だからわたしは自分で決めた。あなたとじゃなく、凪先輩や紘一先輩や留城也先輩と一緒に闘うよ!」
「ああ、自分で怪力って言っちゃってるよ。ますます可愛い普通の女の子から遠ざかるね」
ほっとした表情になりながらも、声に笑いをにじませて、紘一先輩が混ぜ返す。
もう!
せっかく恰好良く決めたつもりなのに、茶々をいれないでよ!
わたしは、ちょっと恨みがましい目で紘一先輩を睨んだ。
すると、口もとへ笑みをたたえた凪先輩が穏やかに口にする。
「桂の考える普通とはなんだ? 特別な力を持っていたら、自信と前向きな意識を伴えばいい。それがおまえの普通となる」
そうだ。
きっと先輩方のそばにいたほうが、わたしは成長できる気がする。
「そうか、きみがこちら側へこないなんて残念だよ」
小さなため息をつきながら彼がそういったとたんに、わたしたちの足もとで爆発音が聞こえた。
皆、飛びのくように数歩後ろへさがる。
! ――なに?
なにが起こったの?
けれど、わかることはひとつ。
この爆発を起こしているのは、笑顔でわたしたちを眺めている目の前の彼だってことだ。
目の前にいるのは、爆発を起こしている敵。
相手の行動を止めようとするこの場合、わたしができることは……。
なにもないんじゃない?
投げつけるモノもなにも、このだだっ広い公園には、わたしが利用できるモノってないじゃない?
「かたまっているより散ったほうがいい」
自己嫌悪を感じながらも、とりあえずわたしは凪先輩に言われた通り、離れるように走って爆発から逃げる。
すると、わたしと同じ方向へ逃げだした留城也先輩や紘一先輩と目が合った。
おもむろに留城也先輩がわたしへささやく。
「リモコン操作ではないな。ってことは俺の出番じゃない。――適材適所だっていっただろ? 攻撃は凪先輩に任せりゃいいんだ」
「うわ、ヤバそう! 意識読んだら、爆発の元は酸素や水素だって。材料あふれてんじゃない? 逃げるが勝ちってことで」
留城也先輩のあとに続いて言った紘一先輩へ向かって、わたしは叫ぶ。
「そうはいっても、先輩方! 逃げ回るだけじゃなくてなにかしら対策を考えましょうよ! たとえば紘一先輩、向こうが考える爆破位置を読むとか!」
「無理!」
「なんで無理なんですか? 先輩にとっては息するくらいに簡単なことなんでしょう?」
わたしがそう口にしたとき、紘一先輩は「あ」と言った。
その瞬間に、足もとが爆ぜる。
大げさなくらいに吹っ飛んで転がったわたしの横へ、こちらも転がってきた紘一先輩が、頭を抱えながらぼそりと告げた。
「無理。だって読んでも、オレが口にだす前に爆発するんだもん」
「先輩の役立たず!」