なんと別口で狙われているようですっ!・9
文字数 1,587文字
はっと、わたしは目を覚ます。
とたんに額の表面にヒリヒリとした痛みがした。
仰向けに寝転んだまま、思わず両手で額を覆ったわたし。
そこへ声が降ってきた。
「ここから見ていた。見事なヘディングだったな。うまく相手のコートへボールが返って、あんたのチームに点が入っていたぞ」
この声は。
「留城也先輩?」
慌てて手をのけて身体を起こし、周囲に視線を向ける。
どうやらここはカーテンが引かれた保健室の一角のようで、わたしは真っ白いシーツのかかったベッドに体操服のままで寝かされていた。
そして、ベッドの足もとに近いところに置いてある椅子にまたいで逆向きに座り、背もたれの上へ両腕を置いてこちらを見ている留城也先輩。
その足もとに、わたしのカバンや制服が入っている袋などが置かれていた。
「え? なんで? どうしてここに」
「とっくに授業は終わって、もう放課後になってる。教室からあんたの荷物を友だちが持ってきていたが、放課後は下校命令がでているから俺が帰らせた」
その言葉を聞いて、カーテンの上の隙間から見える、壁にかかった時計へ目を向けた。
四時ってことは、かなりのあいだ、わたしは意識が飛んでいたらしい。
「――頭痛や吐き気、ある?」
「え?」
留城也先輩に言われてみて気がついたけれど、特に頭痛も吐き気も感じられない。
ボールが当たった表面的な額の痛さだけだ。
ふるふると横に頭を振ったわたしの様子を見て、留城也先輩は淡々と口にした。
「脳震盪 って軽度の場合、意識はあっても身体がうまく動かせない状態になる。意識が飛んでも二分以内で戻ってきたら中度、二分以上意識が戻らなかった場合は重度。軽度でも一週間は安静にしないと、二度目の脳震盪をうっかり起こせば、セカンド・インパクト・シンドローム――脳に異常を残すかもしれない」
え? それってどういうこと?
すでに五時間目が終わって放課後になってしまうまで意識のなかったわたしって、まずい状態ってことになるの?
蒼ざめるわたしへ向かって、表情を変えずに留城也先輩は続けた。
「でも、頭痛のないあんたは脳震盪じゃなくて、ただのショックからくる失神だそうだ。保健医の判断で救急車を呼ばなかった。その保健医は職員室での会議に参加中。だから俺がついていた」
うわぁ。
それって恥ずかしくない?
たちまち顔を赤らめたわたしだけれど。
浮かない表情でわたしをじろりと見やる留城也先輩に気がついて、慌ててわたしは表情を引き締めた。
「あの。それじゃあ今日の試験のほうは……?」
「さあ? それは知らない」
ふいと横を向いた留城也先輩はそっけなくて、取りつく島もない。
でも、いまの話では脳震盪ではないと判断されたわたしに、試験が行われる可能性がありってことだろう。
放課後の時間いっぱいまで、校内で待機ってことだ。
わたしは伸びをしながら、ぼんやりと考えた。
こうして留城也先輩とふたりだけで話をする機会ができたのに、思いつく話題がない。
しんと静まり返った保健室。
これって、ちょっと居心地が悪くない?
そういえば。
今日は留城也先輩、朝から保健室にいたって、紘一先輩が言っていたっけ?
その理由を訊ねたらまずいのかな?
そんなことを考えていたけれど。
なんだか直接本人に訊き辛くて、結局わたしは違う話を口にだしていた。
「紘一先輩って、女の子に優しいのか冷たいのか、よくわかりませんよね。誰にでも優しいのかと思ったけれど、そうでもないみたいだし」
「紘一? ああ、奴は最初、どんな女相手でも甘い顔をするね。あんたからみて奴がほかの女に冷たいのは、いまはターゲットのあんた以外、目に入っていないからなんじゃない?」
とたんに額の表面にヒリヒリとした痛みがした。
仰向けに寝転んだまま、思わず両手で額を覆ったわたし。
そこへ声が降ってきた。
「ここから見ていた。見事なヘディングだったな。うまく相手のコートへボールが返って、あんたのチームに点が入っていたぞ」
この声は。
「留城也先輩?」
慌てて手をのけて身体を起こし、周囲に視線を向ける。
どうやらここはカーテンが引かれた保健室の一角のようで、わたしは真っ白いシーツのかかったベッドに体操服のままで寝かされていた。
そして、ベッドの足もとに近いところに置いてある椅子にまたいで逆向きに座り、背もたれの上へ両腕を置いてこちらを見ている留城也先輩。
その足もとに、わたしのカバンや制服が入っている袋などが置かれていた。
「え? なんで? どうしてここに」
「とっくに授業は終わって、もう放課後になってる。教室からあんたの荷物を友だちが持ってきていたが、放課後は下校命令がでているから俺が帰らせた」
その言葉を聞いて、カーテンの上の隙間から見える、壁にかかった時計へ目を向けた。
四時ってことは、かなりのあいだ、わたしは意識が飛んでいたらしい。
「――頭痛や吐き気、ある?」
「え?」
留城也先輩に言われてみて気がついたけれど、特に頭痛も吐き気も感じられない。
ボールが当たった表面的な額の痛さだけだ。
ふるふると横に頭を振ったわたしの様子を見て、留城也先輩は淡々と口にした。
「
え? それってどういうこと?
すでに五時間目が終わって放課後になってしまうまで意識のなかったわたしって、まずい状態ってことになるの?
蒼ざめるわたしへ向かって、表情を変えずに留城也先輩は続けた。
「でも、頭痛のないあんたは脳震盪じゃなくて、ただのショックからくる失神だそうだ。保健医の判断で救急車を呼ばなかった。その保健医は職員室での会議に参加中。だから俺がついていた」
うわぁ。
それって恥ずかしくない?
たちまち顔を赤らめたわたしだけれど。
浮かない表情でわたしをじろりと見やる留城也先輩に気がついて、慌ててわたしは表情を引き締めた。
「あの。それじゃあ今日の試験のほうは……?」
「さあ? それは知らない」
ふいと横を向いた留城也先輩はそっけなくて、取りつく島もない。
でも、いまの話では脳震盪ではないと判断されたわたしに、試験が行われる可能性がありってことだろう。
放課後の時間いっぱいまで、校内で待機ってことだ。
わたしは伸びをしながら、ぼんやりと考えた。
こうして留城也先輩とふたりだけで話をする機会ができたのに、思いつく話題がない。
しんと静まり返った保健室。
これって、ちょっと居心地が悪くない?
そういえば。
今日は留城也先輩、朝から保健室にいたって、紘一先輩が言っていたっけ?
その理由を訊ねたらまずいのかな?
そんなことを考えていたけれど。
なんだか直接本人に訊き辛くて、結局わたしは違う話を口にだしていた。
「紘一先輩って、女の子に優しいのか冷たいのか、よくわかりませんよね。誰にでも優しいのかと思ったけれど、そうでもないみたいだし」
「紘一? ああ、奴は最初、どんな女相手でも甘い顔をするね。あんたからみて奴がほかの女に冷たいのは、いまはターゲットのあんた以外、目に入っていないからなんじゃない?」