闘えわたし! 平和のために! ・1
文字数 1,224文字
土曜日の昼過ぎに、いつも通学で使っている路線の電車に乗る。
普段見慣れている通勤サラリーマンや学生の姿はなく、私服の乗客が多い車両の中へと足を踏みいれたとき。
なんと、毎朝同じ車両になる顔見知りの彼が反対側のドアのそばに立っていた。
思わぬ偶然に驚いて、ついつい姿を横目でみつめる。
いつもの学生服じゃない。
ネイビーのすらっとした細身のジーンズに、カジュアルなブルーチェックのシャツ。
電車が動きだすころ、窓の外を眺めていた彼は、おもむろに車内へと視線を向けた。
すると、すぐに彼もわたしが乗ってきたことに気がついたようで、小さな笑みを浮かべて頭を下げる。
そして、いままでは言葉を交わしたことがなかったのに、彼のほうから声をかけてきた。
「偶然だね。きみもいまから遊びにでかけるの?」
初めて聞いた彼の声は、涼しくて耳に心地良い素敵な声だった。
漆黒でサラサラの前髪のあいだからのぞく瞳が、またなんとも麗しい。
「――そう。クラスの友だちと遊びに……」
じっと見つめられる恥ずかしさでいっぱいになりながら、うつむき加減でしどろもどろ返事をしたその瞬間。
わたしは、隣の車両から紘一先輩と留城也先輩が移ってくる姿が見えて絶句した。
ベージュのチノパンツに、グリーンとグレーのボーダーカーディガンをはおった紘一先輩と、目深に黒い帽子をかぶり、紺のシャツにダークグリーンのカーゴパンツという留城也先輩が、わたしを見つけてうなずき合い、まっすぐこちらへ向かってくる。
声がでないわたしをどう思ったのだろうか。
わたしの視線の先を確認した彼は、それ以上追及することなく、それじゃあと手をあげて車両の端へと移動していく。
ああ、待って。
わたしはもう少し、あなたと話がしたいのよ!
なんていう想いとは裏腹に、それまで彼が立っていた場所へと先輩方がやってきた。
「こんにちは、桂ちゃん。いまからクラス会だよね」
悪びれもせずに笑顔で声をかけてくる紘一先輩を、わたしはキッと睨みつける。
そんなわたしの恨みがましい視線をものともせず、紘一先輩は留城也先輩へ指示をだした。
「留城也、オレは桂ちゃんとふたりで話したいから離れていろよ」
「え? そんな」
憮然とした表情ながらも、なぜかあっさりと紘一先輩の命令を聞いて離れた留城也先輩を目で追いつつ、わたしはこの状況に恐れおののいた。
なんで?
いつも文句をいうであろう留城也先輩も、どうしてこんなときに限って、素直に紘一先輩のいいなりで離れちゃうの?
そんなわたしの心の中を読んだ紘一先輩は、ちょっと真面目な表情で告げた。
「ふたり組で動くときは、ひとりが行動しているあいだ、もうひとりは周囲の警戒。これ基本ね。桂ちゃんも覚えてよ。それに、透流さんから渡された発信器をつけていないね。ダメじゃない桂ちゃん。緊張感が足りないなぁ」
普段見慣れている通勤サラリーマンや学生の姿はなく、私服の乗客が多い車両の中へと足を踏みいれたとき。
なんと、毎朝同じ車両になる顔見知りの彼が反対側のドアのそばに立っていた。
思わぬ偶然に驚いて、ついつい姿を横目でみつめる。
いつもの学生服じゃない。
ネイビーのすらっとした細身のジーンズに、カジュアルなブルーチェックのシャツ。
電車が動きだすころ、窓の外を眺めていた彼は、おもむろに車内へと視線を向けた。
すると、すぐに彼もわたしが乗ってきたことに気がついたようで、小さな笑みを浮かべて頭を下げる。
そして、いままでは言葉を交わしたことがなかったのに、彼のほうから声をかけてきた。
「偶然だね。きみもいまから遊びにでかけるの?」
初めて聞いた彼の声は、涼しくて耳に心地良い素敵な声だった。
漆黒でサラサラの前髪のあいだからのぞく瞳が、またなんとも麗しい。
「――そう。クラスの友だちと遊びに……」
じっと見つめられる恥ずかしさでいっぱいになりながら、うつむき加減でしどろもどろ返事をしたその瞬間。
わたしは、隣の車両から紘一先輩と留城也先輩が移ってくる姿が見えて絶句した。
ベージュのチノパンツに、グリーンとグレーのボーダーカーディガンをはおった紘一先輩と、目深に黒い帽子をかぶり、紺のシャツにダークグリーンのカーゴパンツという留城也先輩が、わたしを見つけてうなずき合い、まっすぐこちらへ向かってくる。
声がでないわたしをどう思ったのだろうか。
わたしの視線の先を確認した彼は、それ以上追及することなく、それじゃあと手をあげて車両の端へと移動していく。
ああ、待って。
わたしはもう少し、あなたと話がしたいのよ!
なんていう想いとは裏腹に、それまで彼が立っていた場所へと先輩方がやってきた。
「こんにちは、桂ちゃん。いまからクラス会だよね」
悪びれもせずに笑顔で声をかけてくる紘一先輩を、わたしはキッと睨みつける。
そんなわたしの恨みがましい視線をものともせず、紘一先輩は留城也先輩へ指示をだした。
「留城也、オレは桂ちゃんとふたりで話したいから離れていろよ」
「え? そんな」
憮然とした表情ながらも、なぜかあっさりと紘一先輩の命令を聞いて離れた留城也先輩を目で追いつつ、わたしはこの状況に恐れおののいた。
なんで?
いつも文句をいうであろう留城也先輩も、どうしてこんなときに限って、素直に紘一先輩のいいなりで離れちゃうの?
そんなわたしの心の中を読んだ紘一先輩は、ちょっと真面目な表情で告げた。
「ふたり組で動くときは、ひとりが行動しているあいだ、もうひとりは周囲の警戒。これ基本ね。桂ちゃんも覚えてよ。それに、透流さんから渡された発信器をつけていないね。ダメじゃない桂ちゃん。緊張感が足りないなぁ」