いきなり試験に突入です?!・8
文字数 1,483文字
「あなたもあなた。メンバーに選ばれたら、そのまま肩書きは公務員。仕事のできる女性だけが恰好良いと思っているの? 家の中のことを手際良く片付けて気分良く暮らせることを維持することが、どれだけ大変なことかわかっているわけ? 満足に簡単なケーキも焼けない小娘のくせに、専業主婦を馬鹿にするんじゃないわよ」
――先生、もしかして試験にかこつけて、わたしに向かって生徒への不満をぶつけようとしているの?
それって、逆恨み?
これじゃあまるっきり、午前中に終わった精神圧迫試験みたいじゃない!
「あれぇ? この型、古かったのかなぁ。先生! ケーキの型が壊れているので、新しい型を出しますねぇ」
迂闊にも先生の言葉に乗せられたわたしは、見事に型を握り潰したために、晴香は首をひねりながら、新しい型を用意してくれた。
やわらかくしたバターに玉子を加え、ガツガツと音を立てながら泡立て器をぐるぐる回すわたしのそばで、はらはらした表情の晴香。
もしかしてわたし、自分が持っている能力がどうこうという以前に、単なる不器用な女の子じゃない?
ふと、そんなことを考えたわたしは、そっと様子をうかがうように先輩たちのほうを盗み見る。
すると。
わたしのほうを、目を見張ったような表情でじっと見つめてくる紘一先輩の視線とぶつかった。
そう。
まるで、わたしの心の中をのぞくように。
そこで、わたしは我に返る。
そして、一気に頬が上気した。
紘一先輩の能力は『サトリ』だ。
いままで頭に思い浮かべていた、不器用な女の子だってくだり、まるまるバレてるじゃない!
そう思った瞬間、わたしの手からボールが離れ、泡立て中の生地をテーブルの上へとぶちまけた。
たちまち晴香が、この短時間でわたしの度重なる失敗に慣れたかのように、手際良く後片付けをはじめる。
「ほら、こっちはわたしが片付けるから、桂ちゃんはすぐに次の生地を作るのよ!」
「ご、ごめん、晴香……」
謝罪を口にしながら、わたしは晴香へと視線を向ける。
そのとき。
わたしは、その晴香の背後で、なぜか気をひくように泡立て器をくるくると振りまわす先生の姿を見た。
――先生、なにをしているんだろう?
訝しげな表情になったわたしを確認した先生は、そのまま笑顔を浮かべると、なんとおもむろに晴香へ向かって泡立て器を放り投げた。
そのまま飛んでいけば、晴香の頭に当たっちゃう!
「!」
思わずわたしは、晴香に当たる直前の泡立て器に飛びついた。
そのまま勢い余って晴香にぶつかり、ふたりそろって床へと転がる。
悲鳴をあげた晴香が、さすがに文句を口にした。
「なにしてるの! 桂ちゃん!」
「え? だって……」
「床まで生地をこぼしちゃったじゃない! もっと周りに気をつけなきゃ!」
ぷんぷん怒りながら起きあがり、腰に手をあてた晴香は、床にこぼれた生地を見渡した。
「もう! わたしが床を掃除するから、桂ちゃんはもう一度、バターをやわらかくするところからしっかりやりなさいよ!」
すぐに片付けはじめる晴香にいわれて、慌ててバターを用意しようと動いたわたしに、先生が近寄ってきた。
さすがに身構えたわたしへ耳打ちするように、先生がクスクス笑いながらささやく。
「事の大きさは問題じゃないわよ。あなたのために、彼女がトラブルに巻きこまれているのは確かなんだから。無事にケーキを完成させることができるかしらね」
え~!
こんなことが二次試験なんですかぁ?
――先生、もしかして試験にかこつけて、わたしに向かって生徒への不満をぶつけようとしているの?
それって、逆恨み?
これじゃあまるっきり、午前中に終わった精神圧迫試験みたいじゃない!
「あれぇ? この型、古かったのかなぁ。先生! ケーキの型が壊れているので、新しい型を出しますねぇ」
迂闊にも先生の言葉に乗せられたわたしは、見事に型を握り潰したために、晴香は首をひねりながら、新しい型を用意してくれた。
やわらかくしたバターに玉子を加え、ガツガツと音を立てながら泡立て器をぐるぐる回すわたしのそばで、はらはらした表情の晴香。
もしかしてわたし、自分が持っている能力がどうこうという以前に、単なる不器用な女の子じゃない?
ふと、そんなことを考えたわたしは、そっと様子をうかがうように先輩たちのほうを盗み見る。
すると。
わたしのほうを、目を見張ったような表情でじっと見つめてくる紘一先輩の視線とぶつかった。
そう。
まるで、わたしの心の中をのぞくように。
そこで、わたしは我に返る。
そして、一気に頬が上気した。
紘一先輩の能力は『サトリ』だ。
いままで頭に思い浮かべていた、不器用な女の子だってくだり、まるまるバレてるじゃない!
そう思った瞬間、わたしの手からボールが離れ、泡立て中の生地をテーブルの上へとぶちまけた。
たちまち晴香が、この短時間でわたしの度重なる失敗に慣れたかのように、手際良く後片付けをはじめる。
「ほら、こっちはわたしが片付けるから、桂ちゃんはすぐに次の生地を作るのよ!」
「ご、ごめん、晴香……」
謝罪を口にしながら、わたしは晴香へと視線を向ける。
そのとき。
わたしは、その晴香の背後で、なぜか気をひくように泡立て器をくるくると振りまわす先生の姿を見た。
――先生、なにをしているんだろう?
訝しげな表情になったわたしを確認した先生は、そのまま笑顔を浮かべると、なんとおもむろに晴香へ向かって泡立て器を放り投げた。
そのまま飛んでいけば、晴香の頭に当たっちゃう!
「!」
思わずわたしは、晴香に当たる直前の泡立て器に飛びついた。
そのまま勢い余って晴香にぶつかり、ふたりそろって床へと転がる。
悲鳴をあげた晴香が、さすがに文句を口にした。
「なにしてるの! 桂ちゃん!」
「え? だって……」
「床まで生地をこぼしちゃったじゃない! もっと周りに気をつけなきゃ!」
ぷんぷん怒りながら起きあがり、腰に手をあてた晴香は、床にこぼれた生地を見渡した。
「もう! わたしが床を掃除するから、桂ちゃんはもう一度、バターをやわらかくするところからしっかりやりなさいよ!」
すぐに片付けはじめる晴香にいわれて、慌ててバターを用意しようと動いたわたしに、先生が近寄ってきた。
さすがに身構えたわたしへ耳打ちするように、先生がクスクス笑いながらささやく。
「事の大きさは問題じゃないわよ。あなたのために、彼女がトラブルに巻きこまれているのは確かなんだから。無事にケーキを完成させることができるかしらね」
え~!
こんなことが二次試験なんですかぁ?