どうやら歓迎されていないようです・10
文字数 1,307文字
「――きみから見て、紘一はどんな人物に映っている?」
そのまま図書室へ残っていても仕方がないため、戸締りをした凪先輩とともに生徒会室へと向かう。
その途中で、凪先輩は前を見据えながら、ささやくように訊いてきた。
「――そうですね。人の心が読める能力だなんて、びっくりです」
正直に、まず最初に思ったことを口にする。
「それから、やることは突拍子もなかったですけど、親切そうで、性格も良さそうですよね。あと女の子に甘い感じがします。話し合いの余地もない留城也先輩よりも、うまくやっていけそうな気がしますけど?」
凪先輩がわたしの言葉をとめる様子もなく黙ったままなので、続けて思いついたことを言葉に出す。
すると、凪先輩が大きくため息をついた。
「紘一は、こちらが思ったことを読める。だから、あまりきみには最初から、彼の情報を教えないほうがいいかもしれない。良い印象も悪い印象も」
含みがある言い方。
いつものような、わたしをからかうための、もったいぶった雰囲気ではない。
「そんな風に言われたら、もっと気になりますけど!」
「ああ、そうだな」
わたしは上目づかいになって不満そうに言うと、凪先輩は、そのまま黙りこんだ。
どう口にするべきか、迷っているというような表情だ。
なにかしら話してくれる気配がするため、わたしは歩きながら、凪先輩のほうから口を開くのを待った。
「――紘一は、サラブレッドなんだよ」
ようやく口にした凪先輩の言葉は、それがどういうことをあらわすのか、わたしには、すぐにはわからなかった。
首をかしげたわたしへ、凪先輩は続けた。
「心が読める能力を一族の長男が先祖代々継いでいて、彼はその直系にあたる。苗字の『左部』は、人の心が読めるという『覚 』という伝説の妖怪からきているそうだ。ぼくも苦労したクチだが、皆の期待を背負うということに対して彼はその比ではない」
そこまで口にした凪先輩は、わたしのほうを向いて、なんとも言えない困ったような表情を見せた。
「きみは素直な性格だ。それ自体は良いことなのだが、あまり他人を信用するな。そういう意味では、好き嫌いがはっきりしていて態度にもでている留城也のほうが、わかりやすく扱いやすいだろうな」
「――それって、結局わたしは、どうすればいいんですか?」
わたしは聞き返す。
凪先輩はようやく、いつもの真面目な表情になって、わたしに言った。
「ここで聞いたことは忘れろ。気にするな。きみの単独行動をとめるために話したが、中途半端に思いだすと、紘一に考えを読まれることになる」
だったら、こんな話で釘を刺さないで欲しい。
遠回しな理由を言わずに、勝手な行動をとるなって言い方だけにしてくれなきゃ!
そうじゃないと、絶対わたしは紘一先輩の前で、この会話を頭の中に思い浮かべちゃう気がするじゃない?
「まったく。このチームは癖のあるメンバーばかり集まる」
そうつぶやきながらこちらを流し見た凪先輩へ向かって、わたしは思いっきり心の中で叫んだ。
それは凪先輩も一緒です!
そのまま図書室へ残っていても仕方がないため、戸締りをした凪先輩とともに生徒会室へと向かう。
その途中で、凪先輩は前を見据えながら、ささやくように訊いてきた。
「――そうですね。人の心が読める能力だなんて、びっくりです」
正直に、まず最初に思ったことを口にする。
「それから、やることは突拍子もなかったですけど、親切そうで、性格も良さそうですよね。あと女の子に甘い感じがします。話し合いの余地もない留城也先輩よりも、うまくやっていけそうな気がしますけど?」
凪先輩がわたしの言葉をとめる様子もなく黙ったままなので、続けて思いついたことを言葉に出す。
すると、凪先輩が大きくため息をついた。
「紘一は、こちらが思ったことを読める。だから、あまりきみには最初から、彼の情報を教えないほうがいいかもしれない。良い印象も悪い印象も」
含みがある言い方。
いつものような、わたしをからかうための、もったいぶった雰囲気ではない。
「そんな風に言われたら、もっと気になりますけど!」
「ああ、そうだな」
わたしは上目づかいになって不満そうに言うと、凪先輩は、そのまま黙りこんだ。
どう口にするべきか、迷っているというような表情だ。
なにかしら話してくれる気配がするため、わたしは歩きながら、凪先輩のほうから口を開くのを待った。
「――紘一は、サラブレッドなんだよ」
ようやく口にした凪先輩の言葉は、それがどういうことをあらわすのか、わたしには、すぐにはわからなかった。
首をかしげたわたしへ、凪先輩は続けた。
「心が読める能力を一族の長男が先祖代々継いでいて、彼はその直系にあたる。苗字の『左部』は、人の心が読めるという『
そこまで口にした凪先輩は、わたしのほうを向いて、なんとも言えない困ったような表情を見せた。
「きみは素直な性格だ。それ自体は良いことなのだが、あまり他人を信用するな。そういう意味では、好き嫌いがはっきりしていて態度にもでている留城也のほうが、わかりやすく扱いやすいだろうな」
「――それって、結局わたしは、どうすればいいんですか?」
わたしは聞き返す。
凪先輩はようやく、いつもの真面目な表情になって、わたしに言った。
「ここで聞いたことは忘れろ。気にするな。きみの単独行動をとめるために話したが、中途半端に思いだすと、紘一に考えを読まれることになる」
だったら、こんな話で釘を刺さないで欲しい。
遠回しな理由を言わずに、勝手な行動をとるなって言い方だけにしてくれなきゃ!
そうじゃないと、絶対わたしは紘一先輩の前で、この会話を頭の中に思い浮かべちゃう気がするじゃない?
「まったく。このチームは癖のあるメンバーばかり集まる」
そうつぶやきながらこちらを流し見た凪先輩へ向かって、わたしは思いっきり心の中で叫んだ。
それは凪先輩も一緒です!