なんと別口で狙われているようですっ!・10
文字数 1,284文字
そうか。
やっぱり留城也先輩から見てもわかるくらい、いまの紘一先輩はわたしへアピールしてきているんだ。
でも、その気がないわたしに、かなり紘一先輩の目立つアプローチは気が重い。
なんてことを、わたしが頭の中で思っているあいだも、留城也先輩は言葉を続ける。
「奴は、女がどんなものかわかったうえで、それぞれの女に対して付き合い方を変えているところはあるね。でも、俺には奴のその真意なんか知らねぇよ。考えたくもない。そういう相談は、俺じゃなくて透流さんにしろよ」
そう言った留城也先輩に、驚いたわたしの口から、深く考える間もなく言葉が飛びだしていた。
「先輩も、透流さんに相談したほうがいいって思うんですか?」
「そりゃ、まあ。いくつか上ってだけじゃなくて、人をしっかりみて助言してくれそうな感じがするし……って。なに笑って見てんだよ!」
わたしは、なんだか嬉しくなっていて、自然と口もとに笑みが浮かんでいた。
なんだかんだ文句を言っている留城也先輩でも、透流さんの良いところがちゃんと見えているんだ。
透流さんに対しても、留城也先輩に対しても、妙に嬉しいという想いが湧きあがってくる。
「透流さんって、すごいです。モノを通り抜けられるだけじゃなくて、人の心の壁も通り抜けられるんですね」
「はぁ? なに恥ずかしいこと言ってんだか」
わたしの言葉に照れたように頬を赤らめた留城也先輩だったけれど。
なんとなくわかっちゃった。
たぶんだけれど、紘一先輩と逆なんだ。
留城也先輩はあまり女の子との交流がないから、どう対応したり扱ったらいいのかわからなくて、つっけんどんな態度をとっているだけじゃないかって。
だって、最初のころと違って慣れてきたわたしに、こうしてちゃんと答えてくれるもの。
「へへ」
嬉しくなって、思わず声にだして笑ってしまったわたしだけれど。
直後に留城也先輩に頭をはたかれてしまった。
「痛ぁい。脳震盪じゃないけれど、失神したあとなのにぃ」
「変な笑い方をするからだろ!」
おもむろに留城也先輩は椅子から立ちあがると、両手で頭を抱えたわたしへ向かって、荷物を放って寄こしてきた。
わたしは慌てて、飛んできたカバンや制服を入れていた袋を抱えるように受けとめる。
「向こうにいるから、準備ができたら出てこい」
一方的に告げると、カーテンの向こうへ行ってしまう。
その後ろ姿を見ていたら、はっと気がついた。
そういえば、――そばについていてくれたお礼を言っていなかった。
わたしは急いで着替えはじめながら、お礼の言葉を頭の中で考える。
それに、わたしはボールが当たる直前、様子をうかがうようにこちらを見ていた人影を見たじゃない? それも留城也先輩に告げたほうがいいかも。
そのあとで、凪先輩に報告するために生徒会室へ行くほうがいいのではなかろうか。
次々に考えが浮かんできたわたしが、あたふたと着替え終わってカーテンを一気に開いたとき。
わたしの顔へ、生温かい液体が飛んだ。
やっぱり留城也先輩から見てもわかるくらい、いまの紘一先輩はわたしへアピールしてきているんだ。
でも、その気がないわたしに、かなり紘一先輩の目立つアプローチは気が重い。
なんてことを、わたしが頭の中で思っているあいだも、留城也先輩は言葉を続ける。
「奴は、女がどんなものかわかったうえで、それぞれの女に対して付き合い方を変えているところはあるね。でも、俺には奴のその真意なんか知らねぇよ。考えたくもない。そういう相談は、俺じゃなくて透流さんにしろよ」
そう言った留城也先輩に、驚いたわたしの口から、深く考える間もなく言葉が飛びだしていた。
「先輩も、透流さんに相談したほうがいいって思うんですか?」
「そりゃ、まあ。いくつか上ってだけじゃなくて、人をしっかりみて助言してくれそうな感じがするし……って。なに笑って見てんだよ!」
わたしは、なんだか嬉しくなっていて、自然と口もとに笑みが浮かんでいた。
なんだかんだ文句を言っている留城也先輩でも、透流さんの良いところがちゃんと見えているんだ。
透流さんに対しても、留城也先輩に対しても、妙に嬉しいという想いが湧きあがってくる。
「透流さんって、すごいです。モノを通り抜けられるだけじゃなくて、人の心の壁も通り抜けられるんですね」
「はぁ? なに恥ずかしいこと言ってんだか」
わたしの言葉に照れたように頬を赤らめた留城也先輩だったけれど。
なんとなくわかっちゃった。
たぶんだけれど、紘一先輩と逆なんだ。
留城也先輩はあまり女の子との交流がないから、どう対応したり扱ったらいいのかわからなくて、つっけんどんな態度をとっているだけじゃないかって。
だって、最初のころと違って慣れてきたわたしに、こうしてちゃんと答えてくれるもの。
「へへ」
嬉しくなって、思わず声にだして笑ってしまったわたしだけれど。
直後に留城也先輩に頭をはたかれてしまった。
「痛ぁい。脳震盪じゃないけれど、失神したあとなのにぃ」
「変な笑い方をするからだろ!」
おもむろに留城也先輩は椅子から立ちあがると、両手で頭を抱えたわたしへ向かって、荷物を放って寄こしてきた。
わたしは慌てて、飛んできたカバンや制服を入れていた袋を抱えるように受けとめる。
「向こうにいるから、準備ができたら出てこい」
一方的に告げると、カーテンの向こうへ行ってしまう。
その後ろ姿を見ていたら、はっと気がついた。
そういえば、――そばについていてくれたお礼を言っていなかった。
わたしは急いで着替えはじめながら、お礼の言葉を頭の中で考える。
それに、わたしはボールが当たる直前、様子をうかがうようにこちらを見ていた人影を見たじゃない? それも留城也先輩に告げたほうがいいかも。
そのあとで、凪先輩に報告するために生徒会室へ行くほうがいいのではなかろうか。
次々に考えが浮かんできたわたしが、あたふたと着替え終わってカーテンを一気に開いたとき。
わたしの顔へ、生温かい液体が飛んだ。