どうやら歓迎されていないようです・1
文字数 1,491文字
一時間目がはじまるまで、あまり時間はなかった。
けれど、凪先輩の説明では実技試験が行われるこの一週間のあいだ、たしか遅刻早退が免除だったはず。
だったら、朝一番の呼び出しもあり得るってことになる。
それに、実技検査のときは凪先輩のほうへ連絡が入ると言っていたから、わたしから凪先輩へ知らせる必要はないはずだ。
きっと向こうで待ち合わせになる。
そう考えたわたしは、教室とは別の棟になるコンピューター室へとひとりで向かった。
コンピューター室は、情報処理科が使用している教室だ。
わたしは、情報処理の授業を受けていないために、場所は知っていたけれど、利用をしたことがない。
教室の前につくと、ドアには鍵がかかっていなかった。
耳を澄まして中から物音がしないことを確認してから、わたしはおそるおそるドアを開き、中をのぞきこむ。
コンピューター室には、一クラス四十人に充分行き渡る数の、どっしりとしたデスクトップコンピューターが整然と並んでいた。
一時間目の授業が入っていないらしく、誰の姿もない。
授業がないのにドアが開いているってことは、わたしを呼びだした人が鍵を外したのだろうか。
とすると、入って待つべきなのだろうか。
もしかしたら、これから本当に実技試験がはじまるのかもしれない。
わたしは胸の前にカバンを抱えこむと、どきどきというよりもビクビクとしながら、足を踏みいれた。
教室へと入ったわたしは、自然と手をのばして入り口の壁にある電気のスイッチを探して押した。
明るくなったことで、わたしは無意識にためていた息をホッとつき、ドアを開け放したまま教室の真ん中へと向かって歩きだす。
けれど、――なぜだか妙な感覚に襲われ、ざわりと鳥肌がたった。
いまは朝の八時半ごろだ。
日が暮れているわけでもないのに、教室の四隅からじわりと闇が迫ってくる気がして、思わず両手で二の腕をさすりながら辺りを見回す。
そのわたしの目が、教室の一番後ろの壁にかかっていた時計へ向いたときに、ぎくりととまった。
慌てて視線を自分の腕時計に移して、心臓が凍りつくような恐怖が電流のように身体の芯を貫く。
――教室の時計も自分の腕時計も、両方の秒針がとまっている。
わたしは、動くものがなにもない教室の中を見渡した。
どういうこと?
まさか、この世界の時間が止まっているのだろうか?
あるいは、時計だけ?
でも、教室の中の時計と自分が身につけている時計、そのふたつが同時に止まるなんてことがあるのだろうか。
自分の呼吸の音もたてることがためらわれるほど、静かだった。
そして、その瞬間。
教室の電気が、突然消えた。
暗闇の恐怖で、声にならない悲鳴をあげたわたしはパニックになったまま、教室から飛びだそうとドアのほうへ顔を向けたとき。
ブンという音が教室内で響き渡り、一斉にすべてのコンピューターの画面が光を放った。
腰が抜けたように、その場でわたしは、へなへなと床の上に座りこむ。
まるでホラー映画のシーンのようだ。
このあとは、主人公が何者かに襲われるんだ!
パソコンのデスクトップが意味不明な画面を表示しながら点滅をする中、腰が抜けたままのわたしは、それでも出口を目指して、這ってでも移動しようとすると。
教室の前方から眩しい光を浴びせられて、頭がくらくらした。
たたみかけられる恐怖に、そろそろ神経が限界になってくる。
それでも、光のもとがなんなのかを確認しようと、薄目を開けて前を向いた。
けれど、凪先輩の説明では実技試験が行われるこの一週間のあいだ、たしか遅刻早退が免除だったはず。
だったら、朝一番の呼び出しもあり得るってことになる。
それに、実技検査のときは凪先輩のほうへ連絡が入ると言っていたから、わたしから凪先輩へ知らせる必要はないはずだ。
きっと向こうで待ち合わせになる。
そう考えたわたしは、教室とは別の棟になるコンピューター室へとひとりで向かった。
コンピューター室は、情報処理科が使用している教室だ。
わたしは、情報処理の授業を受けていないために、場所は知っていたけれど、利用をしたことがない。
教室の前につくと、ドアには鍵がかかっていなかった。
耳を澄まして中から物音がしないことを確認してから、わたしはおそるおそるドアを開き、中をのぞきこむ。
コンピューター室には、一クラス四十人に充分行き渡る数の、どっしりとしたデスクトップコンピューターが整然と並んでいた。
一時間目の授業が入っていないらしく、誰の姿もない。
授業がないのにドアが開いているってことは、わたしを呼びだした人が鍵を外したのだろうか。
とすると、入って待つべきなのだろうか。
もしかしたら、これから本当に実技試験がはじまるのかもしれない。
わたしは胸の前にカバンを抱えこむと、どきどきというよりもビクビクとしながら、足を踏みいれた。
教室へと入ったわたしは、自然と手をのばして入り口の壁にある電気のスイッチを探して押した。
明るくなったことで、わたしは無意識にためていた息をホッとつき、ドアを開け放したまま教室の真ん中へと向かって歩きだす。
けれど、――なぜだか妙な感覚に襲われ、ざわりと鳥肌がたった。
いまは朝の八時半ごろだ。
日が暮れているわけでもないのに、教室の四隅からじわりと闇が迫ってくる気がして、思わず両手で二の腕をさすりながら辺りを見回す。
そのわたしの目が、教室の一番後ろの壁にかかっていた時計へ向いたときに、ぎくりととまった。
慌てて視線を自分の腕時計に移して、心臓が凍りつくような恐怖が電流のように身体の芯を貫く。
――教室の時計も自分の腕時計も、両方の秒針がとまっている。
わたしは、動くものがなにもない教室の中を見渡した。
どういうこと?
まさか、この世界の時間が止まっているのだろうか?
あるいは、時計だけ?
でも、教室の中の時計と自分が身につけている時計、そのふたつが同時に止まるなんてことがあるのだろうか。
自分の呼吸の音もたてることがためらわれるほど、静かだった。
そして、その瞬間。
教室の電気が、突然消えた。
暗闇の恐怖で、声にならない悲鳴をあげたわたしはパニックになったまま、教室から飛びだそうとドアのほうへ顔を向けたとき。
ブンという音が教室内で響き渡り、一斉にすべてのコンピューターの画面が光を放った。
腰が抜けたように、その場でわたしは、へなへなと床の上に座りこむ。
まるでホラー映画のシーンのようだ。
このあとは、主人公が何者かに襲われるんだ!
パソコンのデスクトップが意味不明な画面を表示しながら点滅をする中、腰が抜けたままのわたしは、それでも出口を目指して、這ってでも移動しようとすると。
教室の前方から眩しい光を浴びせられて、頭がくらくらした。
たたみかけられる恐怖に、そろそろ神経が限界になってくる。
それでも、光のもとがなんなのかを確認しようと、薄目を開けて前を向いた。