闘えわたし! 平和のために! ・6
文字数 1,585文字
「五カ所のポイント場所は……ここからじゃ見えないところにあるんだよね」
確認するように、わたしは声をだす。
それから両側にある壁をきょろきょろと見上げた。
すると右手側に、迷路の半分を占める立体の建物がかすかにみえる。
それをみながら、わたしは言葉を続けた。
「迷路の半分は屋内だから、まず屋外にありそうなポイントを探しにいくのなら、先に左側かな? 建物の中を一度通って、また外へでなければポイント場所にいけない可能性もあるだろうけれど」
わたしの提案に、すぐに男子ふたりはうなずいて同意する。
「それじゃあ、しらみつぶしってほどでもないけれど、左側へ曲がって探せるだけ、まず屋外のポイントを探すか」
彼らは笑顔で続けて、また、前方を向いて歩きだした。
そうだよね。いまはクラス会。
ちゃんと一員として参加しなくちゃ。
そう考えたそのとき、前方の曲がり角から突然姿を現したふたり組に、一番前を歩いていた藤井くんがぶつかりかけた。
「あっ! っと。ごめんごめん」
そう口にしながら、軽やかに身をかわしたのは、なんと紘一先輩だった。
笑顔の紘一先輩の背後に視線を向けると、当然ながら仏頂面の留城也先輩の姿がみえる。
先輩たち!
たしかに、わたしがみえるところにいるっていっていたけれど。
迷路の中までついて回るなんて聞いてない!
これはいったいどういうことですかと、口をつぐんだまま、わたしは目に力をこめて紘一先輩を睨む。
すると、わたしの考えを読んだ紘一先輩は、言い訳するように白々しく口にした。
「あ、桂ちゃん。こんなところで出会うなんて奇遇だね。ほら、なんていうか、高いところで景色を眺めていようかなぁと思ったんだけれど。いざというとき、すぐにたどり着けないと困るじゃない? で、結局オレも、留城也とふたりで迷路デート中」
紘一先輩の言葉は、わかるようで意味不明に聞こえたらしく、同じ班である男子ふたりは首をかしげながら、わたしと晴香のほうへと振り向いた。
「いま、木下さんの名前を呼んだよな。知り合い?」
とたんに、わたしが返事をする間を与えず、晴香が嬉しそうに声をあげた。
「先輩! こんなところで会えるなんて奇遇ですね! あ、昨日わたしたちが迷路にいくって話をしましたものね。先輩も迷路で遊びたくなったのですね?」
さっきまでの話に登場していた留城也先輩と、偶然にも休みの日に出会えた晴香のテンションは、驚くくらいにハイになる。
一方、高校の上級生に出会ってしまったと気づいたらしい男子ふたりは、明らかに困惑した表情となった。
どうしよう。
クラス行事は大事だけれど、晴香は絶対、この出会いの好機を逃したくないはず。
たぶん板挟みの気分になっているのはわたしだけかもと思いながらも、おろおろと、わたしは紘一先輩へと訊いてみた。
「紘一先輩、いま、左側からきましたよね。ポイント場所ってみつかりましたか?」
ここは迷路。
全員共通の話題は迷路だと思って、わたしは話を振る。
すると、紘一先輩は視線を空に向けながら首をひねった。
「あ~。結局オレらって迷子になっちゃって。ひとつもポイント場所にたどりついていないし、どこを通ってきたかもわかんなくて」
ああ、意外と役立たず。
きっと紘一先輩は、ポイント場所や道順を知っている係員などがいたら、情報を読んで迷路を抜けるタイプなんだ。
そう思いながら留城也先輩のほうをみると、こちらは迷路をもとより真剣にやる気がなさそうな不機嫌顔。
この状況、どうしよう?
場の空気を変えたくてもどうしてよいのかわからないわたしに、突然、それは起こった。
『そこのきみ、楽しんでいるかな? これからもっと面白くなるよ!』
確認するように、わたしは声をだす。
それから両側にある壁をきょろきょろと見上げた。
すると右手側に、迷路の半分を占める立体の建物がかすかにみえる。
それをみながら、わたしは言葉を続けた。
「迷路の半分は屋内だから、まず屋外にありそうなポイントを探しにいくのなら、先に左側かな? 建物の中を一度通って、また外へでなければポイント場所にいけない可能性もあるだろうけれど」
わたしの提案に、すぐに男子ふたりはうなずいて同意する。
「それじゃあ、しらみつぶしってほどでもないけれど、左側へ曲がって探せるだけ、まず屋外のポイントを探すか」
彼らは笑顔で続けて、また、前方を向いて歩きだした。
そうだよね。いまはクラス会。
ちゃんと一員として参加しなくちゃ。
そう考えたそのとき、前方の曲がり角から突然姿を現したふたり組に、一番前を歩いていた藤井くんがぶつかりかけた。
「あっ! っと。ごめんごめん」
そう口にしながら、軽やかに身をかわしたのは、なんと紘一先輩だった。
笑顔の紘一先輩の背後に視線を向けると、当然ながら仏頂面の留城也先輩の姿がみえる。
先輩たち!
たしかに、わたしがみえるところにいるっていっていたけれど。
迷路の中までついて回るなんて聞いてない!
これはいったいどういうことですかと、口をつぐんだまま、わたしは目に力をこめて紘一先輩を睨む。
すると、わたしの考えを読んだ紘一先輩は、言い訳するように白々しく口にした。
「あ、桂ちゃん。こんなところで出会うなんて奇遇だね。ほら、なんていうか、高いところで景色を眺めていようかなぁと思ったんだけれど。いざというとき、すぐにたどり着けないと困るじゃない? で、結局オレも、留城也とふたりで迷路デート中」
紘一先輩の言葉は、わかるようで意味不明に聞こえたらしく、同じ班である男子ふたりは首をかしげながら、わたしと晴香のほうへと振り向いた。
「いま、木下さんの名前を呼んだよな。知り合い?」
とたんに、わたしが返事をする間を与えず、晴香が嬉しそうに声をあげた。
「先輩! こんなところで会えるなんて奇遇ですね! あ、昨日わたしたちが迷路にいくって話をしましたものね。先輩も迷路で遊びたくなったのですね?」
さっきまでの話に登場していた留城也先輩と、偶然にも休みの日に出会えた晴香のテンションは、驚くくらいにハイになる。
一方、高校の上級生に出会ってしまったと気づいたらしい男子ふたりは、明らかに困惑した表情となった。
どうしよう。
クラス行事は大事だけれど、晴香は絶対、この出会いの好機を逃したくないはず。
たぶん板挟みの気分になっているのはわたしだけかもと思いながらも、おろおろと、わたしは紘一先輩へと訊いてみた。
「紘一先輩、いま、左側からきましたよね。ポイント場所ってみつかりましたか?」
ここは迷路。
全員共通の話題は迷路だと思って、わたしは話を振る。
すると、紘一先輩は視線を空に向けながら首をひねった。
「あ~。結局オレらって迷子になっちゃって。ひとつもポイント場所にたどりついていないし、どこを通ってきたかもわかんなくて」
ああ、意外と役立たず。
きっと紘一先輩は、ポイント場所や道順を知っている係員などがいたら、情報を読んで迷路を抜けるタイプなんだ。
そう思いながら留城也先輩のほうをみると、こちらは迷路をもとより真剣にやる気がなさそうな不機嫌顔。
この状況、どうしよう?
場の空気を変えたくてもどうしてよいのかわからないわたしに、突然、それは起こった。
『そこのきみ、楽しんでいるかな? これからもっと面白くなるよ!』