何もないまま。#3 Side Yellow
文字数 855文字
「うわー……盛り上がってるね」
楽屋からフロアの歓声が聴こえてきて、あたしは胸の高鳴りを抑えながらつぶやいた。なおっちゃんもちなっちゃんも、ちょっと緊張した面持ち。てんちゃんはいつもの仏頂面で、手首の柔軟をして本番に備えてる。
あれから数回のスタジオ練習をして、今日は対バンイベント当日。午前中に簡単なリハーサルと、会場の案内をしてもらって、あっという間に本番の時間になった。
あたしたちの出番は三番目だから、ステージの様子を直接は見ずに楽屋に入った。前のバンドの盛り上がりが、ちょっとプレッシャー。
「制服見る限り、他の学校ばっかりっぽかったね。あたしの友達で、そういう外のイベント出るってのも聞かないし……」
なおっちゃんが首を傾げる。たしかに制服で出演するバンドが多いなか、あたしたちと同じ制服も、知った顔も見かけない。
「まあ、相手がどこの誰でも、初参加で話題かっさらったらよくない?」
「相変わらず強気ね。自信があるのはいいことだけど……」
あたしのカラ元気に、ちなっちゃんが呆れたようにため息をつく。その後ろで、てんちゃんが大きく伸びをして言った。
「ま、いつもの練習どおりにやれば、大きな失敗はないだろ」
出場登録から、というか、てんちゃんが(サポートではあるけど)ドラムメンバーに決まってから一週間。たった数回しか合わせていないけど、その声にある程度の自信が滲むほど、曲の仕上がりは上々だった。
と、ステージ裏のスタッフさんたちがざわざわと動き出す。前のバンドの演奏が終わったみたい。なおっちゃんが、あたしたちの顔をぐるりと見渡して、小さく頷いた。
「それじゃ、いつもどおり、今までどおりで」
それぞれ頷き返す。円陣とか掛け声とか、そういうことをする心の余裕はなかった。でもそれでいい。特別なことをすると、余計に緊張しちゃいそうだから。
そうしてあたしたちは、初めてのステージへ向かった。いつもどおり、あたしのスマホに録音したような演奏をする。それだけだ。
楽屋からフロアの歓声が聴こえてきて、あたしは胸の高鳴りを抑えながらつぶやいた。なおっちゃんもちなっちゃんも、ちょっと緊張した面持ち。てんちゃんはいつもの仏頂面で、手首の柔軟をして本番に備えてる。
あれから数回のスタジオ練習をして、今日は対バンイベント当日。午前中に簡単なリハーサルと、会場の案内をしてもらって、あっという間に本番の時間になった。
あたしたちの出番は三番目だから、ステージの様子を直接は見ずに楽屋に入った。前のバンドの盛り上がりが、ちょっとプレッシャー。
「制服見る限り、他の学校ばっかりっぽかったね。あたしの友達で、そういう外のイベント出るってのも聞かないし……」
なおっちゃんが首を傾げる。たしかに制服で出演するバンドが多いなか、あたしたちと同じ制服も、知った顔も見かけない。
「まあ、相手がどこの誰でも、初参加で話題かっさらったらよくない?」
「相変わらず強気ね。自信があるのはいいことだけど……」
あたしのカラ元気に、ちなっちゃんが呆れたようにため息をつく。その後ろで、てんちゃんが大きく伸びをして言った。
「ま、いつもの練習どおりにやれば、大きな失敗はないだろ」
出場登録から、というか、てんちゃんが(サポートではあるけど)ドラムメンバーに決まってから一週間。たった数回しか合わせていないけど、その声にある程度の自信が滲むほど、曲の仕上がりは上々だった。
と、ステージ裏のスタッフさんたちがざわざわと動き出す。前のバンドの演奏が終わったみたい。なおっちゃんが、あたしたちの顔をぐるりと見渡して、小さく頷いた。
「それじゃ、いつもどおり、今までどおりで」
それぞれ頷き返す。円陣とか掛け声とか、そういうことをする心の余裕はなかった。でもそれでいい。特別なことをすると、余計に緊張しちゃいそうだから。
そうしてあたしたちは、初めてのステージへ向かった。いつもどおり、あたしのスマホに録音したような演奏をする。それだけだ。